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恒例となった、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”と“ポール・スチュアート”のトークショー。今回は少し趣向を変えて、生地と服にあわせてワインを選び、そのワインを味わいつつトークを楽しむという形式で開催された。本紙読者もご招待したイベントの詳細をレポート。
先日、AdvancedTime本紙とオンラインにてご紹介した、イタリアのファブリックメーカー“ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)”とアメリカ発祥のブランド“ポール・スチュアート”とのコラボレーション。“VBC”が展開するさまざま生地と、“ポール・スチュアート”のコートやジャケット、スーツとの組み合わせは、オーセンティックな美しさを堅持しながらも、現代的なライフスタイルや価値観にも配慮したワードローブとなっている。そして、両者の協奏に、さらにワインという華を添えようというイベントが、この11月に開催された。
「今回の趣向としては“ポール・スチュアート”の3つのスタイルと3種のファブリックの組み合わせにあわせて選んだワインを3点ご紹介し、お楽しみいただきながら、ファブリックやスタイルに関してお話しさせていただく、というものです」
“VBC”のPR&マーケティングアドバイザーを務める長谷川喜美氏の言葉でイベントはスタート。続いて、今回ワインのセレクトを担当した、世界のワインを販売する「WINE TO STYLE」にてブランドマネージャーを務める萩原克彦氏が紹介された。萩原氏はワインの輸入販売会社でのキャリアの後にルクセンブルクに渡り、ベルギーの最優秀ソムリエのもと経験を積み、2016年にはフランス政府公認のソムリエ「ソムリエ-コンセイエ, カヴィスト」を取得。その後「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京(日本橋)」でソムリエとして勤務後、2022年3月より現職に就いている。
乾杯も兼ねて、最初に選ばれたのは「ヴァンジーニ ピノ・ネロ スプマンテ エクストラ・ドライ」、北イタリアのスプマンテ。
「ブドウの品種としましては、ピノ・ノワール、フランス・ブルゴーニュでは非常に有名なものです。これはブラン・ド・ノワール、黒いブドウからつくられる白の泡になります。作り方はシャンパーニュとは少し違って、大きいタンクでワインを2次発酵させるようにして、自然な泡が生まれます。少しナッツを感じさせるようなコクが、このワインの特徴です」
萩原氏によるワインの説明に続き、“ポール・スチュアート”メンズチーフデザイナー、佐藤浩之氏が、ワインのセレクトに繋がる、ファブリックとスタイルについて解説する。
「ファブリックは“VBC”でも『ヴィンテージ』というカテゴリーの生地を選んでいます。360年を超える歴史を誇る“VBC”では膨大な生地アーカイヴが存在していて、そこから着想してテキスタイルデザイナーが生地をつくっています。このジャケットで使った生地はウールとシルク、リネンのいわゆる三者混のもので、ツィーディでクラシックな見た目ですが、しなやかさと軽さがあります。『ヴィンテージ』といっても懐古主義的ではなく、あくまで現代のライフスタイルに合わせたものです。そこで選んだスタイルは『ベーカー』というモデルで、柔らかな毛芯と肩パッド、ゆき綿を配して、堅苦しくない着用感を実現しています。クラシカルでありながら、現代的。このスプマンテのイメージに、あわせたものです」
さらにスタイリングに関しては、“ポール・スチュアート”ジャパンディレクター、鴨志田康人氏が言葉を継いだ。
「スプマンテとツィード調の生地、ということで、どんな装いにするか難しかったのですが、まずはすっきりさせようと思いました。ツィードジャケットのコーディネイトというと、割と色がリッチなものが多くなりがちですが、このスプマンテだとそこまで芳醇という感じではなく、重くしたくなかったので、色数をぐっと抑えて組んでみました」
続いては会場に配られたのは、「グラディス・チウッタ フリウラーノ コッリオ」という白ワイン。
「先ほどのスプマンテは北イタリアのロンバルディア州という、スイスに接している地域でしたが、こちらの白はフルウリ=ベネチア・ジュリア州、スロベニアに接する地域のワイナリーのものになります。『骨格のしっかりとした白ワイン』というご希望を受けて、選んでいます。ブドウはフリウラーノというあまり聞きなれない品種ですが、昨今イタリアでは土着品種、『地ブドウ』に特化しているワイナリーが増えてきています。自分たち独自のワインメイキングに回帰するような動きで、独特なボトルシェイプも、このエリアの伝統的なものです。ワインの色は黄色味が強く、太陽を感じる、リッチな、フルボディ的な白ワインになります」
そして、このワインとの組み合わせとして提案されていたのが、“VBC”の「21マイクロンウール」シリーズの「カバート」を使った、“ポール・スチュアート”の「クリフォードコート」。
「この『21マイクロン』の『カバート』は、狩猟用の服にも使われていたカバートクロスがもとになっています。昔のカバートクロスというのは、600~700g/㎡の非常に重い生地でした。先の『ヴィンテージ』と同様に、クラシックな生地をそのまま復活させるのではなくて、カバートクロスの風合いや見た目で、経緯双糸にして強度を保ちつつ440g/㎡の軽快な生地を実現しているのが、非常に現代的だなと感じています。この生地で『クリフォードコート』を仕立てることに意味があります。このモデルは約50年間“ポール・スチュアート”で活躍された元CEOのクリフォード・グロット氏が好まれていた、タイロッケンタイプのコートです。“ポール・スチュアート”においては伝統的なスタイルで、『21マイクロン』の『カバート』の軽快な感じと相まって、美しいコートに仕上がっていると思います。ちなみにこのコートは、手仕事も盛り込んだ美しい仕立てで定評がある、サンヨーソーイング青森ファクトリーでつくられています」
こう語る佐藤氏。また鴨志田氏は、スタイリングとワインの組み合わせについても解説する。
「この『クリフォードコート』は、“ポール・スチュアート”の仕事をする前に古着店で見つけて、いいコートだなと思って個人所有していました。アメリカではもう展開されていなかったのですが復活させて、毎シーズン素材を変えて提案しているぐらい、大好きなコートです。この“VBC”の『カバート』にも相性がいいですね。そして、白ワインのわりと力強い味わいを念頭に、ワントーンで色彩を抑えて、モダンな印象があるスタイリングにしています」
「皆さまお待ちかねの」という長谷川氏の声がけでサーブされたのは、赤ワインの「ピオ・チェーザレ バローロ オルナート」。
「このスーツに使っているのは、スーパー150の糸を使った、“VBC”の最高級レンジ『リヴェンジ Super150’s』です。イタリアの生地としては珍しく縦横双糸なので、スーパー150でありながら丈夫で、服に仕立てた際に美しいフォルムを生み出します。そんな生地に合わせるのは、イタリアワインの王ともいわれるバローロではないかと」
長谷川氏の生地についてのコメントに、萩原氏のワインの解説が続く。
「バローロはイタリアが世界に誇るワインですね。ブドウ品種としてはネッビオーロになります。高貴品種で、栽培が非常に難しい。そのぶん良いものができると、素晴らしい表情を見せてくれるワインです。1881年に設立されたこの歴史あるワイナリーのバローロを取り扱うことを、私たちは大変光栄に思っています。何世代にもわたって受け継がれてきた伝統的な醸造技術によって、今日でもクラシックなワインを生み出し続けています」
さらに佐藤氏による、スーツに関する説明が続く。
「たいていイタリアの生地メーカーの場合、スーパー150程度の生地は、経糸が双糸、緯糸は単糸で織って柔らかで艶がある感じに仕上げるのですが、この『リヴェンジ』は経緯双糸で、しなやかさがありながらも日常的な使いやすさがあると感じています。選んだスーツは、“ポール・スチュアート”でも一番人気の『イーストゲート』というモデルです。胸にバス芯(馬の毛を使った芯材)を使い、肩パッドやゆき綿もしっかりと入れて、王道的なテーラリングにしています。このことにより、胸が張ったシルエットになり、比較的体型を選ばず、威厳のある雰囲気になります。このスタイルに、この『リヴェンジ Super150’s』はよく合うのではと考えています」
そして鴨志田氏がスタイリングについて次のようにコメントした。
「この『リヴェンジ』の美しいウーステッドの佇まいを生かすべく、落ちついた感じのVゾーンを組んでみました。こうした主張しすぎない、コンサバティヴな雰囲気はインターナショナルに通用するスタイルといえます。あと、縦横双糸というのは聞きなれないかもしれませんが、英国の生地やスーツには元来多く見られるものです。“VBC”はどちらかという英国よりの、オーセンティックなものを好んで、ブランディングしています」
こうして、ワインと生地、スタイルのペアリングを語るトークは、3種のワインの心地よい酔いとともにお開きに。ワインと服、双方を結びつけ語るという今回のイベントは、訪れたゲストの方々にはどのように映ったのだろうか。
「イベントとしては、かなり『攻めた』内容ですよね。でもお話しされていた方たちの、生地とワインに関する説明が巧みで、とても楽しめました。そしてワインもおいしかったです」
このように話したのは、ご夫婦で参加されていた江本正幸さん。また、生地とワインという特殊なトーク内容から、友人の西恵津子さんに誘われ参加したという藤田亮一さんは、次のように感想を述べた。
「長谷川さんや佐藤さん、鴨志田さんから、生地の番手とか軽さとか、よりディテールに関わるお話があって、そういうことでワインとはうまくペアリングできているのかもと感じました。例えばワインやブドウの作り手の状況やブドウの品種、さらには日照のことなどと、生地をつくる際の事柄は、いわば共通点として結びつけられるのかもしれませんね。ワインと生地、それぞれをより深掘りすることで、かえって相通じることが見えてくるのかもしれないなと、お話を伺っていて感じました」
意外に感じられる生地や服とワインとの組み合わせ、それはそれぞれにおけるクラフツマンシップと、その内容を理解し発展させる各エキスパートの存在があってこそ成り立ち、さらに新たな価値の地平までもが見えてくる。そんなことを感じさせる、知的刺激に満ちた一夜となった。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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