稀有なブドウ品種「ロモランタン」のワインを求めて、レ・スルス・ド・シュヴェルニーにステイする旅

日本初のVirtuosoメンバーが注目する旅先vol.1

CRIL Privée & Cie.代表取締役
髙野 はるみ

秘宝ともいえるワインはやはりフランスにあった。ルネサンスが花開いた歴史や文化とワインの結び付きの深いロワール地方。稀有なワインが味わえる、世界のサステナビリティに敏感なラグジュアリートラベラーが今、最も熱い視線を注ぐホテルをご紹介します。

LIFESTYLE Dec 11,2024
稀有なブドウ品種「ロモランタン」のワインを求めて、レ・スルス・ド・シュヴェルニーにステイする旅

昔から「食」を目的にした旅を大切にしてきたフランス。中世の時代からレストランが主体の宿「オーベルジュ」があったことがそれを物語る。ミシュランガイドが遠くても食事に行く価値のあるレストランを星の数で評価してきたことも。

旅の目的が細分化した今、「食」という大きな分野からワインに特化した旅が注目されている。フランス観光開発機構(Atout France)は二年に一度、「ワイナリー デスティネーション(Destination Vignobles)」を主催、海外からジャーナリストやツーリズム関連のプロフェッショナルを招聘し、ワインに特化した旅のプロモーションに力を入れている。

ワイン大国フランスで隠された宝石のようなワインを味わう旅に出た。

フランス国王にルーツを持つ稀少ブドウ品種「ロモランタン」

ドメーヌ・デ・ウアーのロモランタンの画像

ドメーヌ・デ・ウアーのロモランタン。 ©︎Domaine des Huards

フランス北西部に広がるロワール渓谷は大西洋から内陸部まで、およそ1,020kmのロワール河に沿って約5万8,000haのぶどう栽培面積があり、赤、白、ロゼ、スパークリングワイン(クレマン・ド・ロワール)と多様なワインが作られている。

フランスの王侯貴族が暮らしたロワール地方のワイン産地(AOC・原産地呼称)には世界に名だたる城がある。例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチが眠るアンボワーズ城(AOCトゥーレーヌ・アンボワーズ)、水面に映る姿が美しいシュノンソー城(AOCトゥーレーヌ シュノンソー)、文豪バルザックが「アンドル川のきらめくダイヤモンド」と称したアゼ・ル・リドー城(AOCトゥーレーヌ ・アゼ・ル・リドー)などで、ワインを通してそれぞれの城に所縁の深い歴史上の人物の奇跡を辿ることができる。

ドメーヌ・デ・ウアーのロモランタンの画像
ドメーヌ・デ・ウアーでは羊を畑に放ち、自然の生態系を尊重した環境に優しいブドウ栽培を実践している。 ©︎Domaine des Huards

フランスルネサンスが花開いた歴史や文化とワインの結び付きの深いロワール地方で栽培面積が60haほどの小さなAOC(原産地呼称)があるのをご存知だろうか。

栽培されているのは白ブドウのロモランタン。1519年、フランス国王フランソワ1世が、このブドウが好きな母親のためにブルゴーニュから80,000株の苗木を持ち込んだことに由来する。

ロモランタン100パーセントのワインが作られているのは、ベルギーの漫画「タンタンの冒険」シリーズの舞台、ムーランサール城のモデルとなったシュヴェルニー城がある小さなコミューン、シュヴェルニー(Cheverny)。AOCシュヴェルニーは赤、白、ロゼ、クレマン・ド・ロワールを作ることができるが、ロモランタンを作ることができるのはシュヴェルニーの一部の地域、クール-シュヴェルニー(Cour-Cheverny)だ。クール・シュヴェルニーでは昔からテロワールを表現する大切なブドウとしてロモランタン単一品種のワインが作られてきた。ソムリエやワイン好きの間でも、決して目立つ存在ではなかったロモランタンが一躍有名になったのは、1993年にAOCクール・シュヴェルニーとして認定されたからだ。

シュヴェルニー城の画像
「タンタンの冒険」の舞台となったシンメトリーの美しさが際立つシュヴェルニー城。 ©︎Léonard de Serres – OT Blois-Chambord

クール・シュヴェルニーを代表するロモランタンの作り手は1846年創業、家族経営のドメーヌ・デ・ウアー(Domaine des Huards)。現在は6代目と7代目のミシェルとアレクサンドル・ジャンドリエ親子が伝統を守りながら自然の生態系を尊重し、1989年から所有する38haのすべての畑で有機栽培とビオディナミ農法を取り入れて環境に優しいブドウ栽培を行っている。

ロモランタン100パーセントで作られたワインの名は、その名も「フランソワ1世(François Ier)」。白い花、レモン、蜂蜜のアロマに石灰質から来るミネラルを感じるテイストだ。

ドメーヌ・デ・ウアールではフランソワ1世より若い樹齢のロモランタンを使った「ROMO」、ドゥミ・セックの「JN Tendress」も作っているので、三種類のロモランタンワインをテイスティングすることができる。

ドメーヌ・デ・ウアーの畑の画像
ドメーヌ・デ・ウアーの畑。 ©︎Domaine des Huards
ドメーヌ・デ・ウアー「フランソワ1世」の画像
平均樹齢75年の古木のロモランタンで作られたドメーヌ・デ・ウアー「フランソワ1世」
Photo by Harumi KONO

サステナブルなラグジュアリーホテル「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」

AOCクール・シュヴェルニーの認定によりシュヴェルニーの名前がワイン通の間で広がった後、シュヴェルニーは世界から注目を浴びることになる。2020年にラグジュアリーホテル「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」が誕生したからだ。

ブルイユ城の画像
18世紀に建てられたブルイユ城の客室は伝統的な佇まいを好むゲストに人気。 ©︎MP Morel
ブルイユ城の画像

窓の形やマントルピースが、城の歴史を物語るブルイユ城のジュニアスイート。 ©︎MP Morel

「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」はボルドーの名門ワイナリー「シャトー・スミス・オー・ラフィット」に併設する「レ・スルス・ド・コーダリー」の姉妹ホテルだ。

「シャトー・スミス・オー・ラフィット」は2023年、チャールズ英国王が公式訪問した由緒あるワイナリーで、「レ・スルス・ド・コーダリー」は、フランス政府から5つ星以上の「パラス」の認定を受けていることからも上質なホスピタリティに定評がある。

オーナーのアリス&ジェローム・トゥルビエ夫妻は、ワインと食、自然を大切にすることをコンセプトに掲げ、「レ・スルス」をプロデュースしている。廃棄物の減少、リサイクル素材の活用などが評価され、ボルドーの「レ・スルス・ド・コーダリー」はパラスホテルとして初めてEUエコラベルの認証を得ていることが夫妻の情熱を物語る。ブドウの種に含まれるポリフェノールなどの有効成分を使用する独自の「ヴィノテラピー®︎」を行うスパ「コーダリー」も「レ・スルス」の大きな特徴だ。

L’Aubergeの画像

カジュアルな「L’Auberge」ではランチ、ディナーの他、宿泊のゲストのために朝食を用意。カウンターには地元特産のシェーヴルチーズが並ぶ。 ©︎MP Morel
スパ施設の画像
「レ・スルス・ド・コーダリー」、「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」独自の「ヴィノテラピー®︎」を目当てに滞在するゲストも多く、スパ施設が充実している。木の温もりがある室内プールもそのひとつ。 ©︎MP Morel
ヴィラタイプのスイートルームの画像
アースカラーを基調にした自然を感じる雰囲気のヴィラタイプのスイートルーム。 ©︎MP Morel

その流れを汲む「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」は環境への配慮を実践するラグジュアリーホテルとしてフランス国内はもとより、世界のサステナビリティに敏感なラグジュアリートラベラーが今、最も熱い視線を注ぐホテルなのだ。

「レ・スルス・ド・シュヴェルニー」は、東京ドーム9個分に相当する45ヘクタールという敷地面積で馬、山羊、鶏を飼育しているほか、小さな畑と養蜂場があり、広大な森の中にあるひとつの村のような雰囲気を醸し出している。18世紀に建てられたブルイユ城(Château du Breuil)を改装した客室と、新たにヴィラタイプの木の温もりに満ちたスイートルームを建設し、スイートルームとゲストルーム合わせて49部屋を擁する。客室に用意されているのはガラスのボトルに入った浄水、インテリアは循環経済をリスペクトしてアンティーク製品で品良くまとめられている。部屋のディスプレイを見ると古いものを大切にしていることが伝わってくる。

乗馬をしている画像

レ・スルス・ド・シュヴェルニーのアクティビティには乗馬がある。国立の乗馬学校があるほどロワール地方は乗馬が盛んだからだ。 ©︎MP Morel
レ・スルス・ド・シュヴェルニーのアクティビティをしている画像
レ・スルス・ド・シュヴェルニーのアクティビティ(要予約)熱気球に乗って空中散歩ができるほか、サイクリング用の自転車も用意している。 ©︎Les Sources de Cheverny

レストランは、パリの3つ星レストラン「ガブリエル」で活躍したフランソワ・カルムルがシェフを務めるミシュラン1つ星の「ル・ファヴォリ(Le Favoli)」をはじめ、カジュアルな「ローベルジュ(L’Auberge)」とバーがある。ふたつのレストランとバーで、ドメーヌ・デ・ウアーのフラソワ1世をグラス一杯から味わうことができるのも、このホテルならではの楽しみだ。言うまでもなくヴーヴレー、シノン、ソーミュールなどのロワール産ワインを豊富に取り揃えているので、食事とのペアリングをソムリエに相談しながらテイスティングするのも楽しい。ワインと食事を通してシュヴェルニーというテロワールを体感できるホテルだ。

「Le Favori」のフランソワ・カルムル シェフの画像

ミシュラン一つ星「Le Favori」のフランソワ・カルムル シェフ。料理と共にロワールのワインを楽しみたい。 ©︎Le Guide SesameTours

トゥルビエ夫妻は現在、同じコンセプトのもとブルゴーニュとアルザスでも「レ・スルス・コレクション」のオープンに向けて準備を進めている。(それぞれ2025年と2026年にオープン予定)

次の旅のテーマは「レ・スルス」を巡るというのはいかがだろうか。

ボルドー、シュヴェルニー(ロワール)、ブルゴーニュ、アルザス。四つのワイン産地でその土地のワインを心ゆくまで味わい、食事をして、ヴィノテラピー®︎でリラックスするサステナブルかつラグジュアリーな滞在を叶えてくれるレ・スルスでの滞在をぜひ。

PROFILE
CRIL Privée & Cie.代表取締役
髙野 はるみ

Harumi Kono
CRIL Privée & Cie.代表取締役。大学卒業後、外資系航空会社に勤務。在職中よりワインを学び、シャンパーニュメゾンを定期的に訪問(訪問数は100メゾンを越える)。フランス本国にてシャンパーニュ騎士団シュヴァリエ叙任。その後、現代アートギャラリー、オークションハウスに勤務。ライフスタイル誌などでシャンパーニュ、ラグジュアリートラベルの執筆活動を開始。代表を務める株式会社クリル・プリヴェは、世界のラグジュアリートラベル・コンソーシアム「Virtuoso (ヴァーチュオソ)」に日本で初めて加盟。プライベートコンシェルジュとして国内外のVIPに旅のキュレーションを行う。
CRIL Privée & Cie.公式サイト

お問い合わせ先
Les Sources de Cheverny
https://www.sources-cheverny.com/
Domaine des Huards
https://www.domainedeshuards.com/en/
サントル・ロワール地方観光局
https://www.loirevalley-france.co.uk/
フランス観光開発機構
https://www.france.fr/ja/

SHARE

AdvancedClub 会員登録ご案内

『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。

 

高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。

何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。

 

「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。

登録は無料です。

 

一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!