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錦繍の秋を目前に控えた京都。京都駅からほど近い東山七条周辺には、三十三間堂や京都国立博物館などがあり、近年ラグジュアリーなホテルが次々開業している。なかでも8年前にオープンしたフォーシーズンズホテル京都は、広大な庭園を擁し、静謐な自然環境のなかでゆったりと過ごせる高級宿だ。ここに新しく鮨店が出店。京都人が注目する、その味とスタイルとは?
京都駅のほぼ真東、七条通と東大路の交差点である東山七条へは、タクシーで8分ほど。長谷川等伯らによる国宝の障壁画を擁する智積院(じつは紅葉の穴場)、青蓮院、三千院とともに天台三門跡と称される妙法院が並び立つ。その先には東山三十六峰のひとつ阿弥陀ヶ峰がそびえ、山頂には豊臣秀吉が祀られている。まさに歴史的な見どころを集約したような場所だが、東山の麓にあたり、静謐な自然環境に恵まれている。
京都女子大学をはじめとした女子校があるため、“女坂”と呼ばれる坂道を少し上がると左側にフォーシーズンズホテル京都のエントランスがある。
フロントのあるロビーを抜けると、眼下に庭園が見えてくる。階段を下りて、テラスへ。そこに広がるのは、約800年もの歴史を持つ名庭「積翠園」。約1万平方メートルの敷地に3,000平方メートルの池を持つ池泉回遊式庭園で、貴重な文化遺産でもある。秋にはイロハモミジが赤く染まり、目を和ませてくれる。
豊かな自然に囲まれているので、部屋からの眺めもいい。緑や隣の寺が見える部屋、西側の京都の街並みが見える部屋があり、いずれも広々とした空間で寛げる。ちなみに、ミニバー内に用意されているシャンパンは、ビルカール・サルモンのハーフボトルで、ワイン好きは部屋飲みしたくなるだろう。
また、ホテル内にはフィットネスセンターがあり、24時間いつでも運動することができる。長さ20mのインドアプールも完備。積翠園から着想を得たという「THE SPA」もある。
ダイニングは、庭園に面した『エンバ・キョウト・チョップハウス』があるが、本日の目当ては『鮨 銀座おのでら』。「銀座から世界へ」をコンセプトにした評価の高い鮨店の関西初進出となる。店内に足を踏み入れると、長さ8mにおよぶ樹齢400年の檜を使用したカウンターが迎えてくれる。器も備前焼や京焼などが使われている。
料理長おまかせのコースに、ワイン、日本酒、ティーの3種類のペアリングが用意されているが、今回はワインのペアリングをチョイス。さっそく、先付からスタート。最初のワインはシャンパーニュ、ローラン・ペリエのラ・キュヴェ。しかも今回はマグナムボトルでの提供だ。より滑らかな味わいで、これは嬉しい。
この日の料理は、季節の茶碗蒸しから始まり、煎り酒を添えた白身魚の刺身、燻したサンマに行者ニンニクのせなど。ここでワインはコント・ラフォンのサンセールブランに。濃密なソービニヨンブランが燻した香りにも合う。
次のカマスの祐庵焼きは松茸を巻いてあり、香りだけで陶然としてしまう。これにはなんと、サントリー登美の丘ワイナリーの登美シャルドネ2019が!サントリーの日本ワインのトップキュヴェでもあり、5年を経たヴィンテージはレアもの。その香りと味わいは、ほとんどブルゴーニュの銘醸ものに匹敵する。隣のご婦人は何度も「モンラッシェみたい……」と呟いておられた。
そして、いよいよ握りへ。まずは、『鮨 銀座おのでら』の代名詞的ネタでもあるマグロ。ここ数年、年始の初セリで一番のマグロを『鮨 銀座おのでら』の母体である会社が競り落とすことが話題になっていて、期待は高まる。世界統括総料理長の坂上暁史さんがプレゼンテーションしてくれる。この日のマグロは青森県の大畑で揚がったもの。
握りは、小丼ぶりと玉子を含めると全10種。まずは大分県のシマアジから。次に漬けマグロ。イカはスミイカの子どもで、一貫で一尾を使うという。
ここでペアリングのワインは赤ワインに。北海道余市のキャメルファームワイナリーによるピノノワールと、これまた貴重な一本。
先ほど見せてくれたマグロのトロや、定番のコハダも供されたが、エビはかなりの大物が目の前で捌かれる。季節的に子持ちのエビで、上手く卵ものせられる。食すと旨みと甘みで口の中が充満してしまうほど。そして意外と赤ワインが寄り添ってくれた。
そして、この日の圧巻は、ウニとペアリングのワイン。ここで登場したのは、甘口ワインで有名なフランス・ソーテルヌ地区バルサックのシャトー・ドワジィ・デーヌ。そう、しっかり甘口のワインが、ウニの軍艦巻きに合わせて提供されたのだ。果たして、その組み合わせやいかに?
「じつに面白い!」某ミステリーの主人公なら、すぐさま物理学的に調和する理由を解析したであろう。ウニの自然な甘みを、貴腐ワインの酸味もある甘みが上手く包み込み、口中で混然一体となる。ある意味、ウニの握りをまるでシュークリームのようなスイーツに見立てたペアリングともいえる。この稀有な組み合わせのペアリングを体験するだけでも、ここの足を運ぶ価値があるのではないか。じつに面白い。
秋も深まり、日が暮れるのも早くなってきた。フォーシーズンズホテル京都に滞在したら、積翠園の茶室内ラウンジでアペロして、この『鮨 銀座おのでら』でワインペアリングのディナーという流れは、最高の夜を演出してくれそうだ。
STAFF
Writer:Indy Fujita
Photo:Indy Fujita, Atsuyuki Kamiyama
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