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1983年にホテルとオフィス、商業施設を備えた日本初の複合ビルとして開業した「帝国ホテル 東京 タワー館(旧インペリアルタワー)」。その地下1階にオープンしたのが『ラ ブラスリー』。気軽にフランス料理を楽しむそのスタイルは、当時の東京で、先駆けだった。そんな同店の軌跡と真価を、現場の声を交え紹介する。
本年6月末で閉館する帝国ホテル 東京 タワー館。1983年に同館がインペリアルタワーとしてオープンして以来、営業を続けてきたのが地下1階のフランス料理『ラ ブラスリー』である。現在、タワー館を象徴する存在の同店を担うのは、支配人の保楊枝(ほよし)英樹さんとシェフの鎌田英基さん。「私が、『ラ ブラスリー』に配属されたのは1987年、オープンして4年が経った頃です。そのコンセプトは、本場のブラスリーと同じように気軽にお食事とお飲み物を楽しむ場所、と聞いていました。それは今も変わっていません」と保楊枝支配人。以前の席の間隔は現在よりも狭く、よりフランスの同種の店に近い雰囲気だったとも。一方、2022年に着任した鎌田シェフは『ラ ブラスリー』の魅力について次のように話す。「このお店は、当ホテルのレストランの中でも、ファンの数が一番多いかもしれません。小さい頃に連れて来てもらった記憶のあるお客様が、大人になられてお子様ともいらっしゃる。世代を超えて利用されていて、みなさまそれぞれが『ラ ブラスリー』との思い出をお持ちです。そうしたお客様から逆に当店の魅力を教わることも多いです」。この「お客様に愛される『ラ ブラスリー』」を象徴しているのが、昨年より始まった復刻メニュー。メニュー選定のため募集したアンケートの投票数は1万以上だったという。「その反響の大きさに驚きました」と保楊枝支配人。この復刻メニューを味わうことで、『ラ ブラスリー』、そして帝国ホテルの歩みや歴史を、より実感できるだろう。なお、帝国ホテル 東京 本館は2031年まで営業している。
1983年の開店当時とほぼ同様という『ラ ブラスリー』の店内。アルフォンス・ミュシャの原画をもとにしたフランス製の絵タイルなどが配されてアール・ヌーヴォーのテイストが感じられる一方、タイル貼りの床や壁据付のソファーなどはカジュアルな雰囲気。お子様も気兼ねなく一緒に食事を楽しむことができる。
上の写真は4月よりスタートした復刻コース第2弾「Menu du Voyage Historique Ⅱ」。前菜はダブルコンソメのジュレの上にヴィシソワーズをのせた「パリ・ソワール」。魚料理はホタテ貝のジュ(出汁)を使った「ホタテ貝のポワレ」。肉料理はシャスールソースの「仔羊背肉のロースト」。そしてデザートは当時から人気のある「クレープシュゼット」。
右は支配人の保楊枝(ほよし)英樹さん、左はシェフの鎌田英基さん。保楊枝支配人は1987年から『ラ ブラスリー』のサービスを担当し、その歩みを見続けて来た。鎌田シェフは1997年に帝国ホテルに入社し、コーヒーハウスや『レ セゾン』などを経て、2022年から現職。『ラ ブラスリー』のシェフを務めることで、ホテルの料理を見つめ直す機会になったと鎌田シェフは語る。
初出:2024年4月6日発行『AdvancedTime』21号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Photos: Kazuhiro Shiraishi
Editor: Yukihiro Sugawara
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