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東京・南青山に、これまでにはないタイプのヒストリックカーを専門に扱うショールームがオープンした。その名は「ABODA GARAGE」。展示してあるのはメルセデス・ベンツ製の古いオープンカーだが、その仕立ては新車同様の“レストモッド”車だという。これを展開する“ABODA LIFE”とはどのような存在なのか。果たしてレストモッドとはどういったものなのか。ショールームのオープンに立ち会い、話を伺った。
ヒストリックカーを日常で楽しみたい。そう思うクルマ好きは少なくないだろう。現代のモデルでは若干味が薄れてしまった運転という行為そのものや、操ることで五感が直接的に刺激されるという点では、ヒストリックカーを所有し、愛でることほどクルマ趣味やライフスタイルに刺激や豊かさを加えるものはない。
もっとも、ヒストリックカーのある暮らしがそう簡単ではないことも事実。デザイン的にも機械的にも味わい深い1950~60年代のクルマは生まれてからすでに半世紀以上が経ち、現代の交通環境には適さないところも多く、興味を持ちながらも二の足を踏んでいる人も多いだろう。そんな人に向けてヒストリックカーの不安を解消し、新たな趣味生活を提案・サポートしてくれるのが、株式会社ABODA LIFEである(以下、アボダ社)。
アボダ社は、住宅やファニチャー、アートなどから新しいモノやコトを創造し、それらを通して人生を彩り豊かなものに変えていく“スマートラグジュアリー”をコンセプトに立ち上げられた企業であり、そのリーダーには高島郁夫氏が就いている。シンプルでありながらデザイン性が高いインテリア雑貨などを展開するブランド「Francfranc」の創業者といえばピンとくる方も多いのではないだろうか。もともとクルマ好きだった氏が、昔憧れたクルマを日常で不安なく楽しみたいとの思いからスタートしたのが、レストア済みヒストリックカーの販売プロジェクトなのである。
Restore=再び構築する、という意味からもわかるとおり、アボダ社が扱うヒストリックカーは、1950年代から60年代に製造・販売されたメルセデス・ベンツ車を徹底的に修理・再生したもの。アゴダ社と提携するレストア専門工房はメルセデス・ベンツ本社のお膝元、シュトゥットガルトに居を構え、世界中から探し出されたドナーカーがドイツの工房に運ばれて、ボディの塗装などが剥がされてまっさらにするところからレストアがスタートする。工房はすでにこの道の熟練ということもあってレストアに関するノウハウは豊富。パーツの調達も容易で、実際、レストアと言いつつも90%以上は新品パーツが用いられる(残りの10%はドナーカーなどの再生パーツを利用)というからなんとも心強い。
ここまでで言えば以前からある、同様の過程を経たヒストリックカーと何ら変わるところはないが、アボダ社のそれが他よりもひと味異なるのは、これらのクルマが“レストモッド”であるというところだ。これは最近のヒストリックカーの世界で勢いを増しているムーブメントで、古いものを単純にレストアするだけでなく、ユーザーがより扱いやすいように、あるいは好みのモディファイを施したという意味を持つ造語。再生しながら改良を施し、日常で不安なく使ってもらいたいというアボダ社の意向を示してのレストモッド車販売、というわけである。
実際にアボダ社が日本で販売するレストモッド車は、メルセデス・ベンツの歴史において重要な役割を果たしたオープンカー「SLクラス」の2タイプである。一台は1954年に登場したレーシングカーからインスピレーションを得て開発された、公道用のコンパクトオープンスポーツカー「190SL」。もう一台は“パゴダ”の愛称で知られる2代目SLのなかの「280SL」が選ばれた。こちらは特にアメリカで人気を博したアイコン的モデルだ。
ショールームに飾られた展示車は、ボディをいちから再生するとともに、新品パーツを多数使っていることから、新車といっても差し支えない極上の状態に仕上げられていた。実際、日本では初登録となるため、初回車検は一般的な輸入新車と同様に3年に設定されるほか、新車として2年の保証がつくところも嬉しい。
最近のレストモッド車は過激なカスタムが施されたものも散見されるが、アボダ社の扱うクルマはセンスの良さが光る。実際のモディファイはというと、パワーステアリングの追加やディスクブレーキへの変更、あるいはエアコンの追加など、オリジナルの雰囲気をほとんど壊していないところがいい。ボディカラーはもちろん、シートをはじめとする室内のレザー等もオーナーの好みを反映してカスタムすることも可能だ。
古いものを単純に愛でるだけでなく、その再生の過程も重視しつつ、安心・安全・快適な性能を加えたサステナブルなヒストリック・メルセデスは、オーナーとなる人の生活に彩りや豊かさを加えてくれる存在となるはず。そんな憧れのヒストリックカーライフを望む人には、このショールームに足を運んでみることを強くお勧めする。
STAFF
Writer: Tsuneharu Kirihata
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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