鴨志田康人氏が語る、『ポール・スチュアート』と『ヴィターレ・バルベリス・カノニコ』、両者の魅力と展開

Paul Stuart DIRECTOR IN JAPAN
鴨志田 康人

NYトラッドスタイルの代名詞的存在である『ポール・スチュアート』と、イタリアの老舗ファブリックメーカー『ヴィターレ・バルベリス・カノニコ』。長年にわたる両者のコラボレーションの魅力を伝えるイベントが開催された。

FASHION Sep 29,2023
鴨志田康人氏が語る、『ポール・スチュアート』と『ヴィターレ・バルベリス・カノニコ』、両者の魅力と展開

「現代は、かつてに比べて個が尊重されている社会なので、いわゆるパワースーツ的なダークスーツとは別に、もう少しパーソナリティを感じさせる、例えば週末の郊外で着ていたようなものを都会でも装うことができる時代といえます」

トークショーでこのように語っていた、『ポール・スチュアート』の日本におけるディレクターを務める鴨志田康人氏。長年メンズファッションに関わり、発信を続けてきた人ならではの、社会状況と装いの相関を見抜いたコメントといえるだろう。

鴨志田康人氏、長谷川喜美氏、佐藤浩之氏の画像
右は『ポール・スチュアート』の日本におけるディレクター、鴨志田康人氏。中央は『ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)』PRマーケティング/カントリーアドバイザーの長谷川喜美氏、左は『ポール・スチュアート』メンズチーフデザイナー佐藤浩之氏。

去る9月15日に、「ポール・スチュアート青山本店」にて開催されたイベント「PAUL STUART MEETS VBC Made To Measure―The style that both companies aim for―」。『ポール・スチュアート』が、イタリアの老舗ファブリックメーカー『ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(以下VBC)』とコラボレーションして、メイド・トゥ・メジャー(MTM)のスーツやジャケットなどを展開する「VBC STORE PROMOTION 2023」期間の幕開けとして、『ポール・スチュアート』メンズディレクターの鴨志田氏、VBCのPRマーケティング/カントリーアドバイザーの長谷川喜美氏、『ポール・スチュアート』メンズチーフデザイナー佐藤浩之氏によるトークショーが行われた。

シャンパンの画像
今回のイベントで振る舞われた、フランス『ボランジェ』のスペシャル・キュヴェ。ピノ・ノワールの聖地ともいわれるアイ村を本拠とする老舗シャンパーニュ・メゾンで、ピノ・ノワールを60%使った味わいは、力強さを感じさせる。

シャンパーニュ『ボランジェ』のスペシャル・キュヴェが振る舞われ、トークショーに続いてはジャズカルテットによる演奏などもあり、冒頭のような示唆に富んだ金言が飛び交いつつも、リラックス感あるラグジュアリーな夜となった。

演奏している画像
トークショーの後はジャズカルテットによる演奏に移り、よりリラックスしたムードで、装いに関する談義に花が咲いた。

「名門のファブリックメーカーは、スタイルを持っています。そしてそうしたスタイルのある生地に触れると、スタイリングが立体的に視えることがあるのです。VBCにもそれがあります。特に、エグゼクティブのためのスーツ素材は他に敵うところがありません」

鴨志田康人氏の画像
この日はVBCの生地を使い仕立てたスーツを着用していた鴨志田氏。ビジネスエグゼクティブの着用に向いたしっかりとした風合いながら、こうした鮮やかなカラーも含め、多彩なバリエーションを展開しているという。

このように語る鴨志田氏。この日も、縦横双糸のしっかりとした質感が特徴のVBCらしい生地を使ったスーツを着用していた。その一方で氏は、VBCは時代の潮流を捉える能力が高いとも語る。その端的な例が、サステナビリティに重きを置いた生地シリーズ「H.O.P.E.」であるという。

「H.O.P.E.とは、How to Optimize People and Environmentの略称で、人と環境に対して最適な状態で製造すること、が目的になっています。VBCは創業地で360年生地づくりをしていることもあり、その地の土壌や環境を損ねないことに以前から注力していて、使用した水の100%浄水化や、完全再生可能エネルギーの導入、または勤務するワーカーの聴覚保護の徹底などを行なってきました。ただその取り組みはなかなか伝わりにくく、もっと多くの人に届く形にしたいと思っていたのです。鴨志田さんがVBCのメンバーたちに長年おっしゃっていた、サステナブルでありつつ、クオリティも従来通り追求する、そのチャレンジがH.O.P.E.なんです」

「H.O.P.E.」ラインの生地の画像
今回の「VBC STORE PROMOTION」のために、イタリアより特別に仕入れた「H.O.P.E.」ラインの生地。ポール・スチュアート青山本店で限定展開されている。無染色の素材をつかったナチュラルな色あいと質感が魅力だ。

そして挑戦の成果が、天然の原材料の色を活かした無染色の生地や、発蛾した後の繭からつくられたシルクなどになったと長谷川氏。それは『ポール・スチュアート』の目指す方向性とも合致するものだった。「風合いや色合いが自然な感じで、長く付き合えそうだなと思える生地です」と、その魅力を語る佐藤氏。さらに話題は会場にディスプレイされていた、この秋冬に展開する、「H.O.P.E.」の無染色アルパカ素材を使った生地のコートとそのコーディネートへと移っていった。

鴨志田康人氏の画像
「H.O.P.E.」の無染色アルパカ素材の生地を使ったコートのコーディネートを解説する鴨志田氏。ジョッパーパンツやインナーのジップアップニットなど、トーンは異なりながらもベージュから茶系の色調で組み合わせている。

「独特なぬめり感があるH.O.P.E.の生地を使った、一見ピーコートを連想させるデザインのショート丈コートに、ボトムスはスポーティにジョッパーパンツを合わせていて、全体的に茶味のあるベージュカラーでまとめています。これは自分にとってポール・スチュアートらしいコーディネートです。私が今注目している1970年代~80年代のニューヨーク・トラッドはこんなトーンの色合わせを得意としていて、ソフトカラー、ソフトトラッドとも呼ばれました。それを現代のイタリアの生地で表現しているところがポイントです。こうした柔らかで薄い色、甘いトーンは難しいと思う方が多いかもしれませんが、もっと自由に社会生活を送る上でも、こういう色は今あっていいと思います」

鴨志田康人氏の画像
鴨志田氏が最近注目している1970年代~80年代のニューヨーク・トラッドを感じられる資料として挙げた『DRESSING RIGHT : A Guide for Men』(チャールズ・ヒックス著)。表紙はまさにソフトカラーの重ね着。

こう語る鴨志田氏は、さらに今回イタリアより特別に取り寄せた、MTMでオーダーが可能なVBCの「H.O.P.E.」の生地と、シャツやタイなどとのコーディネート提案を即席で行なっていた。

「H.O.P.E.」の生地を使ったコーディネーの様子の画像
鴨志田氏による、「H.O.P.E.」の生地を使ったコーディネートの様子。無染色の素材を使った大柄のハウンズトゥース(千鳥格子)の生地には、ブラウン系のオルタネイトストライプのシャツ、グレーのネクタイという組み合わせ。生地の色合いや質感となじませるようなシャツやタイの選択がお薦めとのこと。

「ネイビーやグレーのスーツやジャケットは、皆さん数多くお持ちだと思いますが、今回ご用意したナチュラルな色や質感の生地の場合は、装い全体のトーンとして、アーシーで、パステル調の色合いをイメージしてもらえると、今までにはない新しいスタイルが実現します」
こうした鴨志田氏の言葉を契機に、今季新たな装いにチャレンジするのはいかがだろうか。

「VBC STORE PROMOTION 2023」は、『ポール・スチュアート』各店舗にて、10月17日まで開催中。VBCが得意とする、軽快ながらも独特の風合いが特徴のフランネルを筆頭に、幅広いバリエーションから生地を選び、オーダーすることができる。

お問い合わせ先
ポール・スチュアート 青山本店
03-6384-5763
https://store.sanyo-shokai.co.jp/pages/paul_stuart

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