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ダイヤルには前号の「サーモンピンク」カラーのようなクラシックテイストもあれば、最新の技術を用いたモダンなデザインもある。技術が発達し、表現方法も進化したモダンなダイヤルデザインが今年は豊作だ。
最近は時刻やその他の機能を読み取るだけではないダイヤルデザインが増えている。
ダイヤルを絵画のキャンバスに見立て、自由な表現を競う時計のダイヤルはクリエイティビティの見せ所になっているのだ。今年のウォッチズ&ワンダーズでいえば、カラフルなドットが散りばめられたロレックスの「オイスター パーペチュアル」が好例だろう。
技術の進化もあって表現の自由度が増しているのが大きな理由。新作においてもアート性の高いデザインからスケルトンダイヤルまで多彩なダイヤルが発表されている。高い視認性を追求したダイヤルがクラシックとするなら、繊細な作業で意匠を凝らして美しく仕上げたのがモダンなダイヤルといえる。もっと分かりやすくいえば、モダンさとはほどほどの視認性と意匠の美しさだ。
では、さっそく気になったモダンダイヤルの新作を見ていこう。
カルティエの「サントス デュモン スケルトン」からだ。
サントス デュモン
スケルトンウォッチには、ダイヤルを肉抜きしたオープンワークと、ムーブメントまで極限に肉抜きした本来の意味でのスケルトンウォッチがあるが、カルティエが得意としているのは後者。ムーブメントが露出しているので、ゼンマイの動きやパーツの丁寧な仕上げ・装飾が見ることができて機械式時計の醍醐味を堪能できるのが特徴だ。
バーインデックスはすべてムーブメントと一体化していて、今作は特別に開発された自動巻きムーブメントーのパーツが視覚的にバランスよく配置される。中でも目を引くのが6時から9時位置に配置された自動巻きマイクロローターだ。そのマイクロローターには、モデル名の由来となった飛行家のアルベルト・サントス=デュモンが1907年に考案した航空機「ラ ドゥモワゼル」が象られ、ローターが回転するたびに飛行機が優雅に飛ぶようなイメージで視覚的に楽しめるようになっている。カルティエらしいエスプリを効かせた遊び心を刺激する時計だ。
文字盤に施す装飾も近年のトレンドだ。これまで文字盤の多層構造が多く見られたが、最近では型打ちなどで立体感を演出するダイヤルも増えてきた。古典的な旋盤機によるギヨシェ装飾とはまた味わいの異なる新しい風合いを生み出している。そのひとつがモンブランの氷河を模したダイヤルだ。
モンブラン 1858 アイスシーオートマティックグレーダイヤル
ダイヤルに立体感を出すのは実は難しい。ダイヤルに凹凸を出すと針にあたってしまうからだ。ダイヤルから針までの距離が短いほどドレッシーでスタイリッシュに見えるから、ダイヤルの立体的なテクスチャーを出すのには高い技術と経験が必要というわけだ。
モンブランは昨年、初のダイバーズウォッチをローンチした際に、氷河を模したグレイシャーパターンのダイヤルを採用。今年はカラーバリエーションで、モンブラン山脈最大の氷河のひとつであるメール・ド・グラースの氷に着想を得ていて、何千年もの間に堆積された鉱物でグレーに見える風合いを表現した。その質感は“木の枝でこする”という意味のグラッテ・ポワゼと呼ばれる技法をベースに、氷のテクスチャーを再現して立体的に仕上げている。ケースバックには氷山とダイバーの3Dエングレービングが施される。ISO6425規格に準拠したダイバーズウォッチで30気圧防水。
ダイヤルのインデックスを廃し、ミニマムなデザインのダイヤルを打ち出したのが、ジュネーブ市街から少し離れたジャントゥで独自開催したフランク ミュラーだ。
グランド カーベックス ピアノ
フランク ミュラーといえば、湾曲したトノウ カーベックスケースにビザン数字の組み合わせがアイコンになっている。本作では、その特徴的なビザン数字を廃し、ダイヤルには20層もブラックのラッカーを塗り重ねることで艶やかな表情を獲得した。
ケースはフォルムを一新した「グランド カーベックス」という新しいケースデザインを採用。インナーベゼルタイプでラグとストラップがシームレスに繋がっているため独創的な3次元曲線フォルムがより際立つようになっている。そのため、ダイヤルにビザン数字がなくても、このケースシルエットをみればひと目でフランク ミュラーであることがわかる。
ダイヤルの要素を省くことで、強調したいケースデザインを際立たせた。上質な大人のタキシードウォッチだ。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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