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サイモン・アルカンタラのジュエリーを着けるだけで、都会的なセンスのいい女性へと瞬時に変えてしまう。シンプリシティに、絶対的な品格とエレガンスが宿っています。「自らの光を輝かせることができる」ジュエリーとは?
——どのジュエリーもシンプル。そして、ノーブルで美しく、存在感があります。行き過ぎないエレガンス&気品のあるカジュアル。絶妙なバランスで共存を可能にしているのは、デザインの揺れ、動きによるところが大きいと思いますが、エレガンスとカジュアルの差し引きで意識しているところはありますか。
昔、自分はバレエダンサーだった。そして、凄く良い先生に育ててもらったんだ。動きや揺れの美しさについても深く理解することになったんだ。
例えば、スッと立っているだけというような、ひとつ止まっている動き。そこでは自分の体幹にエナジーがグルグルと激しく、テンションを保ち、回っている。バランスがとれていると遠くから見てもとても美しく見える。バランスが悪いと止まっているのが美しく見えないんです。動かないということではなくて、体幹の周りをグルグル回っているエナジーを大切にすることだと言われたんですね。決して、静ではない。
一線の光もシンプルではないですよね。光自体はすごく速い速度で届いている。だから光もムーブメントなんだ。パワーをもち、エナジーをもっている。目の前に止まっているコップだけれど、物理的にいったら、それも凄く早い動きでここに存在している。力強く。物理的にいったらすごく動いているはずなんだ。アインシュタインみたいだ。笑!
男性のジュエリーデザイナーが作る作品は、比較的どしっりとした印象のものが多い。でも、自分はムーブメントをすごく大事にしているので、例えばチョーカーひとつとっても、光が流れていったり、キラって揺れたり。常にムーブメントがあるので、見る人が動いていると感じるようなジュエリーなんです。
そのジュエリーをつけて自分を鏡で見ると、止まっているのではなく、動いていると感じると思うんです。その時、自分に還ったと、自分自身を感じてもらいたいんだ。ジュエリーから勇気をもらったり、自分の力を再認識してもらえればいいと思っているんだ。自分に自信が満ちて、いろんな人と会う。相手が自分を見た時に、彼ら自身も内なるパワーを思い出す。こうして、周りの人達をも勇気づけていく。そういうコレクションになっていると信じているよ。
ジュエリーデザイナーやアーチストだとあまり思わないようにしているんだ。自分は”船”のようなもの。そこに降りてくるエナジーを吸収する。それをクリエイションしている。アーチストだと思ったら、常に、いろんなものがコネクションされ、限定されてしまう。吸収する大きな船だと思っているから、準備ができている。今作らなければいけないと思った時に、トランスレーションされて出てくるんだ。
バレエも同じ。音楽、リズムが与えられて、ステップが与えられた時、そういったエレメンツがあるんだけれども、表現するダンサーによって全然違って出てくる。それと同じ。いろんなエレメントを自分は吸収してもっているけれど、表現として出した時、全然違うものになっている。また、人によって見え方も違うから、ジュエリーを身につけてもらうとみんなそれぞれ印象が違うよね。
——クラシックバレエダンサーからジュエリーデザイナーへ転身するきっかけと、最初のコレクションを開くまでのストーリーを教えてください。
小さい時、学校にダンスカンパニーが来て、ワークショップに参加したんだ。スカラシップを与えるからやってみないかと言われたんだけど、両親が断ったんだ。両親はお医者さんや銀行か、弁護士になってほしいと思っていたよ。高校の時、友達のガールフレンドがダンサーだった。自分がダンスが好きなことを知っていて、ジャズクラスに連れてってくれたんだ。そこでも先生がスカラシップを与えるからやってみないかと言われて、親に内緒で通っていた。約3か月経った頃、クラシックのバレエスクールに連れて行かれたんだけど、またそこでもスカラシップが出るからやりなさいと言われてね。バレエはすごく正確にやらなくてはいけなかったから難しかったけどハマったんだ。その後2年くらいして初めてパフォーマンスをしたんだ。そこに父が見に来てくれて。OKと言って、サポートしてくれたよ。
その間、10代の頃、友達がジュエリーを作っていて、教えてもらったんだ。凄くチャレンジだったけど、夢中になってしまったんた。小さいときからキレイに並んでいるものが大好きだった。14.15.16歳はバレエに没頭していたね。同時にジュエリーも作って売っていたよ。ヘアピンやイヤリングをバレリーナ達やお母さんの友達とかにね。家計簿みたいなのを作ってコスト計算もしてたよ。
その後、10年程バレエに没頭していたんだけど、アクシデントがあって怪我をした。そして、またジュエリーを作り始めたんだ。
ある日、友人がネックレスをつけて、パーティに行ったんだ。そこに(有名スタイリストの)パトリシア・フィールドがいて、気に入ってくれて。ウエストビレッジストリートに彼女のお店があったんだけれど、そこのバイヤーにコレクションを作ってくれと言われて、持っていったんだ。その時、初めてウィービングでクリエイションをしたんだ。3日間でソールドアウトしてしまい、Make more! って言われたよ。
その3年後、アーチスト、『マリー・マクファーレン』のコレクションがあって、その時のスタイリストがパトリシアのお店の僕のショーケースを見て、このコレクションとコラボレーションしたらいいんじゃないかと話をもってきてくれたんだ。こうしてサックスフィフスアヴェニューにあった、マリー・マクファーレンのコーナーにジュエリーが置かれ、評判となり、成功をおさめたんだ。そのコーナーの隣が、『オスカー・デ・ラ・レンタ』だった。その時、サックスフィフスアヴェニューのパーティがあって、オスカー・デ・ラ・レンタ氏に紹介してもらったんだ。ドミニカ共和国出身という共通項もあって、ジュエリーを見てくれて、僕のところへ来ないかと言われたよ。まさかと本当だと思ってなくて。ただのリップサービスだと思って、行かなかったんだ。
6か月程経って、連絡があり、来るべきよ!と言われたよ。コーラルや,マザーオフパールの凄くビックな作品を持っていったんだ。その時、オスカーはヴォーグの編集者アンドレアを呼んでいて、一緒に見てくれたんだよ。そして「オスカー、彼はやったほうがいい」とうなずいてくれたんだ。4日間でコレクションを作らなくてはならなくて、寝ずに作ったよ。オスカーは、『バルマン』オートクチュールもやっていたので、それもやることになったんだ。パリへ行って、ランウェイのために作ったよ。
バレエダンサーからジュエリーデザイナーになったトランスフォーメーション。すべてが運命的だね。
――クラシックバレエダンサーでおられましたが、規律と歴史を重んじるストイックな世界と、ニューヨークの最先端モードの世界で、ジュエリーデザインにそれぞれのエレガンスとモダンさは、どのように生かされているのでしょうか?
ダンサーだったからかもしれないけれど。ミュージカル、ミュージック、ジャズ、ロック…すべての音楽を聴いているんだ。音を聞いていると、シェイプが見える。
ダンサーの時、振り付けを覚えるのが凄く早かったんだ。シェイプが見えるからだと思う。音楽と形が結びついて覚えられるんだ。誰かが怪我して出られなくなったら、代役は「できます!」とすぐ答えていたよ。
バレエダンサーの生活は規律が厳しかったから、その後すべてのことが簡単に感じられるよ。今はルールを厳しくしないように生きているんだ。固く守ると人生自体をコントロールしているみたいに感じるようになるから、ユルくしようと思っている。だって人は20分後には死んでしまうかもしれないんだからね。
だから、五感を研ぎ澄ますために、瞑想したり、自然の中に身を置いたりはするけれども、制限することで自分を追い込む事はしない。オープンにすることで、一旦受け入れて、何故こう感じたのかな、なぜこういうことが自分に起こったのかな、思うようにしているんだ。
そう、僕は船だからね。
何かに感動したり、美しさに心を打たれた時、言葉として受け取っていないよね。フワッとしたエナジーとして吸収して、その吸収したものをクリエーションとして出すときに、そのものではなくて、何かの形に変わって出てくる。ただトランスレーションするんじゃなくて、得たものがなんとなく自分の身体の中で変化していって、手先から出てきたものが、作品につながっていくと思うよ。感じていた何かを”もの”に変えているんだ。
――自然に囲まれて暮らす中で生まれたジュエリーの表情も、どこか都会的な洗練されたニュアンスが漂います。素晴らしいバランスで調和していると感じますが、自然、宇宙からの賜と、大都会ニューヨークのパワーや勢いが、デザインにどう生かされているのでしょうか?
NATURE、NEWYOEK、UNIVERSEは自分に凄くかかわっていると思う。ニューヨークは世界のチャクラの一部と言われているんだ。ニューヨークはメンタルプレイス、つまり、自分が考えていること=MINDだとしたら、地球(地)に足が付くという意味でNATUREは、BODY。UNIVERSEがSPIRITであると思っています。その3つは結びついている。そのバランスが取れた時にクリエイティブが生まれてるんだ。こうやって言葉で話しているけれど、感じていることは言葉では表現できないこと。3つのバランスのことについて話しているけれど、フォルムにするには、形成するのではない。それこそ、フィーリングとしてそれらをクリエイションに入れているんです。
STAFF
Photo:Christopher Miranda (Simon Alcantara)
Interview & Edit: Kyoko Seko
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