「X350」をきっかけに始まる、憧れの「CVO」を目指すハーレー人生

昨年、創業から120年を迎えたハーレーダビッドソン。アメリカを代表すると同時に世界最高峰のオートバイのプレミアムブランドであり、車にしか乗らないという人に尋ねたとしても「もちろん知っている」と言わしめるほどの存在だ。では、そのイメージとは……。多くの場合が「アメリカンスタイルのビッグバイク」と答えるかもしれないが、最新のライアップにはブランドイメージを牽引してきた「CVO」のような大型モデルだけでなく、中型免許で乗れる「X350」と言った軽快なスポーツモデルまで、数多くの個性が揃っている。ビギナーからベテランまでどっぷりと浸かれる「ハーレーワールド」とはいったいどんな幸せを味わえるのだろうか?

LIFESTYLE Nov 12,2024
「X350」をきっかけに始まる、憧れの「CVO」を目指すハーレー人生

輸入車を選ぶとこは、その国のプライドを理解すること

アメリカのオハイオ州にあるメアリーズビル市の郊外を、取材の合間を見てランチに向かうため、車でのんびり走っていた。家の軒先でレモネードを売っている子供たちの微笑ましい姿を見ながら「いかにもアメリカの夏らしい風景だなぁ」などと思いつつ、目的のステーキハウスの広い駐車場に車を滑り込ませた。

そこにはちょっと気になると言うか、あまりお近づきになりたくない先客がいた。ほとんどの人が素肌に真っ黒な革ジャンを羽織っただけの、むくつけき男たちが20人ほどたむろし、その中心に置かれていたのはハーレーダビッドソンのビッグバイク。ノーマルもあればカスタムもあり、中には星条旗や真っ黒なフラッグ(クラブのフラッグか……)を車体サイドに立てた車両なども見受けられる。

コーディネーター氏によれば、休日に限らず、どこでも目にする、あり触れた光景らしい。当然、彼らを怖がる必要もなく、気のいいライダーたちだが、食事を終えて愛車に跨がり、次々と駐車場から出て行く姿を見て、どこかホッとした気持ちで見送っていた。

そんな彼らにとってハーレーダビッドソンは、アメリカ人としてのプライドを支える重要な存在である事は間違いない。そして、その頂点にあり、憧れの対象となっているのは、メーカーが最上級グレードと位置づける「CVO(カスタム・ヴィークル・オペレーション)」。

憧れを醸成してきた「CVO」にはハーレーの世界観がすべて詰まっている

フル装備の堂々たるボディの「CVOロードグライドST」。走り出してしまえば想像以上に軽やかに振る舞ってくれる。

CVOは、こだわり抜いた素材、ペイントや組み立てなど多くの部分で手作業による手間暇かけた製造工程を見ただけでも“高級”であることが分かる。効率化が最優先される時代に、時間をかけることはもっとも贅沢な行為である上に、生産台数を限定するという、まさに珠玉の存在だ。

今回取り上げる「CVOロードグライドST」を見ても、ハーレーダビッドソンの憧れを象徴する1台であることは明確。圧倒的な存在感を誇示するのは彫刻的なシルエットの「シャーク・ノーズフェアリング」。それと完全一体型のLED照明、デザインを一新したフロントガラスと相まって、近未来的な印象を生み出している。当然ながら流体力学を用いた設計によって空力効率を向上させ、最適な空力性能とライダーの快適性を実現している。そのノーズフェアリングの内側には200Wの新型オーディオアンプを始めとした充実のオーディオシステムなど、快適装備がまさに満載と充実している。

完全一体型のLED照明と彫刻的なシルエットを持つシャーク・ノーズフェアリング。流体力学(CFD)を用いた設計によって空力効率を向上させ、最適な空力性能とライダーの快適性を実現。

「ミルウォーキーエイト121」と呼ばれる1,977ccのV型エンジンは、専用チューニングを施されてハーレー史上最高の126馬力と193N・mというパフォーマンスを実現。その強烈な加速感、トルク感はライダーに圧倒的な安心感とゆとりを与えてくれる。

一方で加速やブレーキなどのあらゆる性能を向上させるために軽量化を徹底。さらにフルアジャスタブル(SHOWA製)のフロントサスペンションとリアサスペンションといった高性能サスペンション装備して、ライダーがセットアップを任意で調整して、パフォーマンスと快適性を最適化できるようにした。

左/4ピストンのブレーキキャリパーはブレンボ製。重量級ボディを心地いいレバータッチによって確実に制御できる。 右/リアタイヤの両側にサイドケースを装備。2個合計の容量は69L。

細部を見れば見るほど贅沢な作り込み、そしてその堂々たる佇まいはまさにオートバイのロールス……、いやアメリカ人のプライドを損ねないようにするならば「2輪界のキャデラック」と呼ぶにふさわしい存在だ。

当然ながら車両重量は380kgと、充実装備にふさわしい重さがある。細々とした日本の交通状況で使うには、少々覚悟がいる重さではある。だが、ひとたび走り出せば、その安定感は極上そのもの。とくに高速道路で経験する“路上の王者”ならではの走りを、存分に楽しむことができるパフォーマンスを備えている。

チタン素材&カーボンファイバー素材のマフラー、フロントフェンダー、シートカウル、タンクコンソールなど各部にカーボンを採用し、軽量化を図った車体。
表示する情報をカスタマイズ可能な12.3インチのタッチ式カラーディスプレイ。500Wアンプとロックフォードフォズゲートの6.5インチフェアリングスピーカーなどのプレミアムオーディオシステムを搭載。
たっぷりとしたサイスのシートは腰のサポート性も良くロングツーリングでも疲労感は少ない。720mmと低い位置に設定され、足つき性もいい。


ハーレーダビッドソンCVO ROAD GLIDE ST
価格5,442,800円~(税込み)
ボディサイズ(mm)全長×全幅×全高:2,410×未公表×未公表
シート高720mm
ホイールベース 1,625mm
車重380kg
駆動方式チェーン駆動
トランスミッション6速MT
エンジン水冷V型2気筒OHV 1,977cc
最高出力94kW(126ps)/5,020rpm
最大トルク193Nm(19.7kgf・m)/3,750rpm
燃費6L/100km(約16.7km/L)
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