「豊臣兄弟!」敵か味方か?愛と信頼、駆け引き満載、戦国の人間模様に迫る「江戸東京博物館」特別展

豊臣秀吉と秀長。天下を動かした兄弟を結んだ、強い絆と揺るぎない信頼。二人は何を信じ、誰と手を結んだのか。愛と信頼、敵か、味方かをめぐる駆け引きが交錯した戦国の人間模様を、兄弟ゆかりの書状や貴重な歴史資料からひもとく。江戸東京博物館リニューアル記念・NHK大河ドラマ特別展「豊臣兄弟!」を開催中。

LIFESTYLE Sep 29,2026
「豊臣兄弟!」敵か味方か?愛と信頼、駆け引き満載、戦国の人間模様に迫る「江戸東京博物館」特別展

天下統一目前、終盤を迎え、ますます盛り上がりを見せる大河ドラマ「豊臣兄弟!」。主人公はその統一を成し遂げる秀吉ではなく、彼をサポートし続け、天下人にまで押し上げる弟・秀長という視点の新しさに加え、歴史を大胆に捉えたドラマティックな演出が毎回、注目を集めている。

「豊臣秀吉像」「豊臣秀長像」の画像
「豊臣秀吉像」「豊臣秀長像」桃山~江戸時代 17世紀 京都・禅林寺蔵

現在、東京都江戸東京博物館では1階特別展示室にて、NHK大河ドラマ特別展「豊臣兄弟!」を開催中。既に名古屋(徳川美術館)、大阪(大阪歴史博物館)で成功を収めたイベントが、ついに最終地・東京に。これまで数々の大河ドラマとコラボしてきた江戸博だが、今回はリニューアル後初。開催前日にはドラマで豊臣秀吉を演じている池松壮亮が来場し、縁の品々を見て回った。注目は音声ガイドナビゲーターを秀長役の仲野太賀が務めていること。実際にガイドを聞いた池松は「1年半、毎日のように聞いている声なので、落ち着きます」と高評価。もちろん、毎週、ドラマを楽しんでいる人たちも同じ気持ちになるはず。彼の声を介し、遠く感じるはずの歴史上の人物たちが不思議なほど、身近に感じられる。期待通りの秀長・太賀効果。渡邊あゆみアナウンサーの解説ナレーションと相まって、すんなり頭に入ってくる。

達筆な秀吉、実直な文字の秀長。手紙のやりとりに人間味が感じられる

前後期合わせて約130点の展示品には、秀吉から秀長に宛てた手紙をはじめ、秀長が改名後初めて秀長と記した掟書、徳川家康の書状もある。「字は体を表す」と言われるが、筆まめだった秀吉の達筆ぶり、秀長の読みやすい実直な文字、家康の繊細さと大胆さが合わさった書など、ここでもドラマのキャラクターが思い起こされ、見ているだけで、武将たちの人間味が伝わってくるよう。特に今回は手紙類に口語訳が付けられているのが大きな特徴。何が書かれているのかだけでなく、どういう意味なのかを伝わりやすく、意訳している。さすが大河ドラマの中でもエンターテインメントに特化した「豊臣兄弟!」の展覧会。親しみやすくて、わかりやすい。

会場はプロローグ・エピローグと5つの章で構成されている。プロローグには同じ背景で描かれた対の秀吉・秀長像が出迎える。さすが兄弟、よく似た風貌ながら、公家や天皇の装束である白直衣姿を纏った秀吉の威圧感たるや。こちらは東京会場限定の展示作品となる。

歴史に名を残す、賤ヶ岳での伝説的な戦いで使われた槍が身近に

秀長が歴史に姿を現すのは、天正2年(1574)の伊勢・長島一向一揆攻め。その後、秀吉と各地を転戦して戦功を重ね、本能寺の変後、山崎の戦い、賤ヶ岳の戦いで秀吉の勝利に貢献した。「第1章 転戦の日々」ではドラマで強烈な印象を残した賤ヶ岳の戦いを描いた「賤ヶ岳合戦図屏風」があり、柴田勝家との攻防が思い出される。鼓舞する秀吉大将の元には賤ヶ岳七本槍の姿があり、すぐそばに片桐且元が使用したとされる「平三角大身槍 銘 兼上」がきらりと光る。ドラマ放送時には独特な表現がインパクト大だった賤ヶ岳七本槍。伝説的槍をこんなに間近で堪能できるとは感無量。

江戸時代に描かれた「賤ヶ岳合戦図屏風」と賤ヶ岳の七本槍の一口と伝わる「平三角大身槍 銘 兼上」の画像
江戸時代に描かれた「賤ヶ岳合戦図屏風」と賤ヶ岳の七本槍の一口と伝わる「平三角大身槍 銘 兼上」

天下一統の栄華が宿る屏風は圧巻!豊臣兄弟、人生最大のハイライト

大坂に居城を定めた秀吉は各地の大名との戦いに乗り出す。小牧・長久手の戦いで織田信雄・徳川家康を臣従させた。秀長は総大将や調整役として活躍。秀吉が関白に就任して豊臣姓を称し、朝廷にも影響力を広げると、秀長も大納言に任じられた。「第2章 天下一統」は豊臣秀吉が天皇を京都の邸宅、聚楽第に招いた様が見られる「御所参内・聚楽第行幸図屏風」が見事。天皇を迎え入れる、秀吉側の牛車の大きさが彼の力を見せつけている。豊臣兄弟、人生最大のハイライトといえる。

豊臣秀吉が京都に造営した聚楽第に後陽成天皇が行幸する様子を描いた「御所参内・聚楽第行幸図屏風」の画像
豊臣秀吉が京都に造営した聚楽第に後陽成天皇が行幸する様子を描いた「御所参内・聚楽第行幸図屏風」

四国攻めの功により、大和を与えられた秀長は、郡山城を本拠に城郭整備と城下町の再編を進め、現代にも残る郡山の基盤を形成した。秀長を支えたのは藤堂高虎・桑山重晴ら有力家臣たち。「第3章 大和入国」で目を引くのは大坂城と郡山城の瓦の比較。秀長の秀吉への強い信頼、憧れ、深い兄弟愛を感じずにはいられない。

能や茶の湯に深く傾倒した二人が育んだ芸術と芸能の軌跡

織田信長に続き、秀吉もまた、芸術・芸能を愛した。能や茶の湯に深く傾倒した秀吉。秀長も同じ。「第4章 時の権力と美」では秀長所有の品として唯一、明らかになっている茶入「肩衝茶入 銘 薬師院」を発見。秀長が主催し、自ら点前を務めた茶会で用いられたとされる。大河の主役に抜擢されなければ、この逸品もここまで注目されなかったろう。

「第4章 時の権力と美」の画像
信長、秀吉と芸術・芸能が権力者の保護のもと大きく花開いた時代。秀長も能や茶の湯を通じて武将や奈良衆交流。

大坂城の炎を逃れた名剣に想いを馳せる

上りつめたらあとは下るしかない。秀長が病に倒れ、この世を去り、秀吉は動揺。朝鮮出兵、千利休の切腹や愛児・鶴松の死と政権が危ぶまれるなか、秀頼誕生で後継問題が再燃。ついに秀吉の死後、大坂の陣が勃発する。「第5章 豊臣の落日」では大坂城で焼け出された名剣を展示。前半は「脇指 銘 吉光 名物 鯰尾藤四郎刀」、後半が「無銘 一文字 名物 南泉一文字」。豊臣・徳川の因縁を感じずにはいられない。

重要文化財「銀伊予札白糸威胴丸具足」の画像
重要文化財「銀伊予札白糸威胴丸具足」

「豊臣兄弟!」展をなぜ江戸博でと思ったが、ここにきて繋がった。豊臣の盛衰をじっと見つめてきた家康。彼の時代の到来をそのまま引き続いて、江戸博の上階、常設展で見ることができるのだ。大阪、名古屋の熱狂とはまた違った東京会場ならではの楽しみ方。いよいよ佳境を迎えるドラマのキャラクターたちをより身近に。天高く馬肥ゆる秋、ドラマ同様に楽しく、エンターテインメントとして、歴史・芸術に触れられるチャンスだ。

長浜城のセットの画像
会場では秀吉、秀長が琵琶湖を見下ろしていた長浜城のセットがフォトスポットに。
NHK大河ドラマ特別展「豊臣兄弟!」の画像

江戸東京博物館リニューアル記念・NHK大河ドラマ特別展「豊臣兄弟!」

会場:東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
会期:[前期]9月15日(火)~10月12日(月・祝)・[後期]10月14日(水)~11月8日(日)
9時30分~17時30分 ※入館は閉館の30分前まで、※土曜日は19時30分まで。 ※11月6日(金)は20時まで開館
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
休館日 月曜、9月24日(木)、10月13日(火)、11月4日(水)
※ただし、9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)、11月2日(月)は開館
主催: 東京都江戸東京博物館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NHK、NHKプロモーション
協賛:ライブアートブックス
公式サイト https://toyotomi2026.jp


MOVIE WRITER
髙山亜紀 

フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。

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