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アルファ・ロメオ期待の小型車、ジュニアに、カーライフエッセイストの吉田由美氏が、いち早くミラノで現地試乗。筋金入りのアルフィスタ(アルファ・ロメオのファン)向けと言うよりも、次の愛車を探している多くのドライバーたちに選んでもらいたい、スタイリッシュ&スポーティな魅力を放つ。
イタリアの高級自動車ブランド「アルファ・ロメオ」。
1910年、イタリア・ミラノに誕生したアルファ・ロメオは、高性能のスポーツカーブランドとしてモータースポーツの世界でも活躍してきた。現在はイタリアの自動車ブランドというと、フェラーリやランボルギーニのようなスーパースポーツカーーブランドを思い浮かべる人が多いと思うが、実はフェラーリの創業者エンツォ・フェラーリはもともとアルファ・ロメオのレース部門から独立している。つまり、アルファ・ロメオは、フェラーリのルーツとも言えるのだ。
アルファ・ロメオはこれまで、経営難や吸収合併などを繰り返し、名称の「アルファ(A.L.F.A)」は、アルファ・ロメオの前身である「Annonima Lombarda Fabbrica Automobilli」と、1918年に吸収合併された「ニコラ・ロメオ技師株式会社」の名前をとって、1920年に「アルファ・ロメオ」となった。
私がアルファ・ロメオと関わるようになったのは2000年ごろ。当時、CSでアルファ・ロメオの番組のMCを務めたり、2001年の「日本におけるイタリア年」に伴い、パシフィコ横浜で、イタリアのアルファ・ロメオ歴史博物館(ムゼオ・アルファ・ロメオ)の日本出張イベント「ムゼオ・アルファ・ロメオ」が開催され、そのMCや番組取材で関わらせていただいた。取材を通してアルファ・ロメオオーナーと話したり、車を見たりする機会が多く、それはそれはオーナーの愛情がたっぷり注がれている車だな、というのが私の印象だ。「よく壊れるから、プラグを常備している」のは当たり前。ほかのアルファが壊れたり故障して止まっていると手を貸す、プラグをはじめパーツを提供するなど、助け合いが行われ、しかもそれを辛いと感じず、むしろ愛おしいと思う心の広さ…。そう思わせるアルファ・ロメオって凄いな~。魅了するのは、セクシーなデザインと、独特な乗り心地、モータースポーツから発するスポーティさ、そして官能的な香り。当時はシートの下に香りの板が貼られ、アルファ・ロメオの独特な香りは、一度乗ったらアルファ・ロメオ車の虜にされる、魔法の媚薬だったのかもしれない。
月日は流れ、アルファ・ロメオはFIATやアバルトと共に、シトロエンやJEEPと同じ「ステランティス」グループの傘下となり、本来のアルファ・ロメオの魅力を発揮できているかと言えば、そうではないような気がしていた。というのもこのところ、大きなサイズのSUVなどのラインアップが続き、アルファ・ロメオの真骨頂ともいえるミトやジュリエッタなどのようなコンパクトカーは姿を消していた。
そしてここからが本題!
そのミトの後継として登場したのが「ジュニア」(旧ミラノ)だ。
新型「ジュニア」は、アルファ・ロメオ初の電気自動車(BEV)と、アルファ・ロメオ久々のコンパクトカーという2つの重責を担い、今年4月10日に「ミラノ」という名で華々しくデビュー。しかしそれからわずか5日後、「ジュニア」に改名するという前代未聞の出来事が! これは「ミラノの生産がイタリア国内ではない」という理由から、イタリア政府から使用禁止とされたのだ。実は「ミラノ」はもちろんイタリア生まれなものの、生産は同じくステランティスグループでパワートレーンを共有するプジョーのe-2008などと同様、ポーランドの工場で行なわれる。イタリア政府はそれが気に入らなかったらしく、「ミラノ」と名乗らせなかったため、アルファ・ロメオは止む追えず「ジュニア」と名称を変更した。ちなみに「ジュニア」も1966年に発売された「GT1300ジュニア」というアルファ・ロメオにとって特別な車の名称ではある。しかし「ミラノ」は、アルファ・ロメオ誕生の地。「ミラノ」改め新型「ジュニア」には、新生アルファ・ロメオという意味が込められていたのかもしれません。
というわけで、名前は「ジュニア」となったのだが、国際試乗会はイタリア・ミラノで行われた。正確にはミラノから車で約45分のところにあるアルファ・ロメオの聖地バロッコのテストコース。現在はステランティスグループで共有され、「ステランティス・バロッコ・ブルーピンググラウンド」となっているが、1962年からここでアルファ・ロメオの開発を行っている。
世界一の広さを誇るバロッコの数あるコースの中で、今回の試乗に使われたのは、21kmの「Langhe Track」とアルファ・ロメオの特別なモデルだけが走ることができる5.7kmの「アルファロメオ トラック」の2コース。確かに昨年、アバルト500eの試乗会でここを訪れたときは、別のコースでの試乗だった。
バロッコのテストコースに到着し、目に飛び込んできたのは赤、黒、白、3色の「ジュニア」。シルエットも写真や動画で見るより、スタイリッシュでカッコイイ。一番心配だったのはフロントマスクのキモとなる大きな盾形のエンブレム。新型「ジュニア」には2種類のデザインが用意されていて、1つはAlfa Romeoの筆記体のシンプルな「Legenda(レジェンダ)」、もう一つはアルファ・ロメオのエンブレムであるミラノ市の紋章の赤十字とヴィスコンティ家の人をくわえた蛇の紋章が組み合わせれた「Progresso(プログレッソ)」で、中はまるで影絵のように黒でくり抜かれている感じ。これが斬新。いや、斬新すぎてギョッとする。しかし実物はなかなかお洒落。さすが、アルファ・ロメオだ!
新型「ジュニア」のパワートレーンは2つ。3気筒1.2L VGTエンジン+21kWhモーターのハイブリッド「Ibrida(イブリダ)」と54kWhのバッテリーを搭載するBEVの「ELETTRICA(エレットリカ)」。それぞれ、「イブリダ」には4輪駆動の「Q4」、「エレットリカ」には156ps、260Nm、航続距離410㎞の「エレットリカ」と高性能な280ps、345Nm、航続距離は360㎞の「Elettrica Veloce(エレットリカ ヴェローチェ)」があり、最初のリリースで「エレットリカ ヴェローチェ」の最高出力は240psだったが、その後、40psアップの280psへとパワーアップされた。
この日の試乗車はすべて高性能のBEV「ジュリア エレットリカ ヴェローチェ」。エンブレムは「プログレッソ」。タイヤは20インチ。「ジュリア エレットリカ ヴェローチェ」の走りの味付けは「ジュリア GTA」や「8C」などを手掛けたドメニコ・バニャスコ氏のチームが手掛け、200kg軽い車体、25mm下げたスポーツサスペンション、ワイドトレッド、専用のアンチロールバー、ダイレクトなステアリング、専用のトーセンD(トルセン式リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)、ブレーキシステム、そして専用の20インチタイヤが「ジュリア エレットリカ ヴェローチェ」に与え得られた秘密兵器だ。これらは試乗会のプレゼンテーションルームに展示されていました。
そして試乗。まずは白い「エレットリカ ヴェローチェ」のまわりをぐるりと一周。フロントの縦型の大エンブレムに目が行くが、フロントマスクはキリっと、ストンとしたリアのデザインも下部分の黒の分量が多く、ヒップアップ効果あり!?
車に乗り込むと、サベルトのバケットシート、脇部分が開いていて、これも軽量化に役に立っているのだろう。「スタート/ストップ エンジン」と書かれたスイッチを押し、スタート。「エンジン」と書かれているところに、エンジン車のライナップがあることを伺わせる。とはいえ、エンジンは搭載されていないからエンジンの振動や音は無くて静か。コースは小さなコーナーが多いハンドリングコース。特に驚くような派手な音の演出などは無いが、アクセルを強く踏むと鋭く、気持ちの良い加速に酔いしれる。そして次々に出てくるコーナーを自然で軽やかに私のハンドル操作に合わせてクルマの向きを変え、こなしていく。継ぎ目のないシームレスな加速はBEVならではだが、軽やかさは1590㎏という車重の効果もあるのかも。そしてBモード、「ダイナミック」モード、「ナチュラル」モード、「アドバンスド・エフィシェンシー」を次々と試し、それはほぼ想像通り。20インチの専用タイヤも優れたグリップ力を発揮してくれているようだ。
今回はテストコース試乗のみで「アルファ・コネクト・サービス」や先進安全装備を試す時間がなかったが、それは日本導入時の楽しみに取っておく。
日本導入は2025年半ばごろの予定だ。
AUTHOR
1998年より、モデル業の傍ら日産ドライビングパークにて、セーフティ・ドライビング(安全運転講習)のインストラクターとして3年間活動。その後、「カーライフ・エッセイスト」としてクルマまわりのエトセトラを、独自の視点で執筆活動をはじめ、現在は自動車雑誌を中心に、女性誌、テレビ、ラジオ、イベントなどで幅広く活動の場を広げている。
Instagram:@yumi_yoshida
STAFF
Writer: Yumi Yoshida
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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