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存在感があり得られる感動も大きいハイエンドカーは、それ単体で良し悪しが語られがち。だが、そこにこだわるのはカーマニアだけ。ファッション性や芸術性、あるいはそれ以外の理由でクルマを選ぶ人もいるし、購入後にどこで、どんなスタイルで乗るかも重要だ。そこで重要な手がかりを与えてくれるのが、販売サイド。皆が集まれる場を提供するコーンズの取り組みから、ハイエンドカーの可能性を探る。
日本の自動車産業は世界市場で大きな存在感を示しているが、欧米と比べてクルマ好きが共通の趣味や話題で楽しめる場は決して多くない。そのため、愛好家団体やメーカー、販売店が主催するファンミーティングなどは貴重な機会となっている。欧州のハイエンドカーを手がけるコーンズでは、オーナーに向けてサーキットでのイベントを実施しており、2022年は5月に富士スピードウェイで開催された。オーナーの運転経験や好みに応じた走行プログラムが用意され、同伴の家族にも配慮したこのイベントは、本当にいいものを心ゆくまで楽しみたいと願う富裕層の欲求に応えるものであり、クルマのある暮らしをより豊かにするためのヒントにもつながる。自動車文化の底上げに貢献するコーンズの取り組みを、イベントや建設中の施設を通して紹介しよう。
趣味性の高い機能や性能を備え、ファッションとしての個性を放ち、乗っている時間を濃密な体験へと導くのが、ハイエンドカーだ。
スポーツカーは日常の生活では絶対に味わえない強烈な加速を見せ、それを受けるブレーキ性能もすこぶる高く、コーナーでは路面にへばりつく安定感で遠心力に耐える。
サルーンはどんな状況でもすこぶる静かだ。ドアの内張りから天井まで上質な素材で仕立て(今後はレザーフリーがテーマになってくるだろうが)、外界の喧騒とは無縁の“個室”気分が味わえる。
今最も人気のあるハイエンドカーのスタイルとして、SUVも忘れてはならない。上述のスポーツカーとサルーンの要素を兼ね備えた趣味+実用の究極にあり、高い着座位置と広いキャビンがもたらす開放感、大柄なボディの存在感の高さは、ファッションアイテムとしてもいうことなし。
生活の道具として必要な条件をはるかに超えた、ハイエンドカーのポテンシャル。それは、いつまでも人生を楽しみたい、美しく生きたいと願う私たちの秘薬。ブースターオイルや美容液のごとく、乗る者すべてを生き生きとした表情へと変えてくれるエッセンスを内包しているのだ。
日々の生活を潤すハイエンドカーのあふれるポテンシャルは誰もが感じられるものではあるが、存分に味わえる最高のステージは、断然サーキットなどのクローズドコース。高い速度でも安全性が保てる舞台で、普段は試すことのない速度域で走ってみると、直接的なスピードの快楽だけではなく、作り手の思想や万が一の際の姿勢制御の対応までイメージが湧く。速さを競うことだけがサーキットを走る目的ではないのだ。
クローズドコースを使ったハイエンドカーのイベントは、年々増えている。今回ご紹介するのは、その一例。輸入車ディーラーのコーンズが主催したオーナー参加イベント「CORNES DAY 2022」だ。
5月15日に静岡県の富士スピードウェイで開催された「CORNES DAY 2022」には、全国各地から165組、350名のオーナーとその家族が集まった。メーカーやインポーター主催ではなく、ディーラーというところに、このイベントの特徴がある。
輸入車販売は、輸入元としてインポーター(メーカー)があり、正規販売店としてのディーラーがある。1861年に設立された貿易商社「アスピナル・コーンズ・アンド・カンパニー」の系譜にあるコーンズ・モータース(以下コーンズ)は、古くから欧州製ハイエンドカーの販売を行っており、かつては日本法人が設立されていない複数のブランドの輸入元としても活動していた。2022年現在はフェラーリ、ランボルギーニ、ロールス・ロイス、ベントレー、ポルシェの販売とアフターサービスに取り組んでいる。
ハイエンドに特化したディーラーとしての長い歴史に裏打ちされるのは、技術的な信頼だけではない。本物を知る富裕層顧客の多さも、コーンズのブランド性を示す重要なポイントだ。近年は自らラグジュアリーブランドと称する企業やショップも少なくないが、顧客からのあらゆるニーズに応え、メーカーが描く世界観を鮮やかに提案し、文化にも影響を及ぼすほどになってこそ、真のラグジュアリーブランドと言える。
日本の輸入車文化の醸成に貢献した企業としては、メルセデス・ベンツなどのドイツ車、アメリカ車を手がけるヤナセが有名だが、少量生産のビスポーク的価値観に基づくハイエンドカーを得意とするコーンズが果たした役割も、実に大きい。
コーンズは2022年より定期的にオーナー向けのサーキットイベントを開催していて、サーキット走行のほか、運転技術を磨くアカデミーにも力を入れてきた。ハイエンドカーの魅力を存分に味わうという点で、これほど有意義なイベントはない。しかも、参加者は多彩なブランドの車両やオーナーと接点が持てるわけで、より豊かなカーライフの一助となることは間違いない。
さらにコーンズでは現在、千葉県南房総市に会員制のプライベートドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」を建設中(2022年末開業予定)。800mのストレートを内包したサーキットを核に、オーナー車両の長期保管サービスも予定されているほか、バーラウンジやレストラン、温泉施設、ファミリーで過ごせるアクティビティも併設されるという。
ハイエンドカーは止まっているだけでも十分な存在感があるため、所有することがゴールと思いがちだが、本当の楽しさ、豊かさはどう楽しむかにかかっている。ビジネスにおいては現状に甘んじることなく、荒野をめざして可能性を追求し、プライベートでは最高に贅沢なパートナーを得て遊び尽くす……。そんな「格好いい大人」を見て、若い世代は自分らしく生きるための未来を描く。コーンズの挑戦は、これからも日本の自動車文化を育ていくに違いない。
STAFF
Writer: Kaori Sakusai
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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