英国のジュエラー“デヴィッド モリス”に新たな輝きをもたらしたセシリー・モリスの美学

DAVID MORRIS ブランド&リテールディレクター
Cecily Morris

2025年に日本でも本格展開を始めた英国のジュエリーブランド“デヴィッド モリス”。その世界観を広げる新たなコレクション「Triolette(トリオレット)」を手掛けるのが、同ブランドの3世代目にあたるセシリー・モリス氏である。彼女が目指すジュエリー、そしてブランドのあり方とは。

FASHION May 28,2026
英国のジュエラー“デヴィッド モリス”に新たな輝きをもたらしたセシリー・モリスの美学

揺るぎない歴史とアイデンティティを継承し、独自の歩みを続ける

“デヴィッド モリス”のジュエリーの着用画像
独創的なデザインの“デヴィッド モリス”のジュエリー。

英国のジュエリーブランド、“デヴィッド モリス”。15歳からロンドンの宝飾業界に身を置き、セントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツにて金細工を修めたデヴィッド・モリス氏が1962年に創業した。創業翌年には「デビアス・ダイヤモンド・インターナショナル・アワード」を受賞し、さらにその次の年も連続で受賞して一躍注目を集めた。そして1971年の映画『007/ダイヤモンドは永遠に』でジュエリーが使用されて以来、「ロンドンのジュエラー」としてその存在は世界的に広く知られるようになった。

現在はデヴィッド・モリス氏のご子息であるジェレミー・モリス氏がCEOを務め、ロンドンのニュー・ボンド・ストリートに建つ歴史的建造物に本店を構えている。本店には自社アトリエも併設されていて、界隈の名だたるジュエラーの中でも、本店内にアトリエを持つのは“デヴィッド モリス”だけという。2025年3月には大阪髙島屋に日本第1号店をオープンし、日本での本格展開も始まっている。

そんな“デヴィッド モリス”のファインジュエリー「Triolette(トリオレット)」シリーズのデザイナーを務めているのが、ジェレミー・モリス氏のご息女であるセシリー・モリス氏である。この「トリオレット」の日本での本格展開のために先般来日したセシリー・モリス氏に、彼女自身のクリエーションや、家族経営を堅持しつつより幅広い層に向けた展開を行なっている“デヴィッド モリス”の今後など、幅広くお話を伺った。

“デヴィッド モリス”は今も家族で経営しているブランドです

ジェレミー・モリス氏(左)とセシリー・モリス氏(右)の画像
ジェレミー・モリス氏(左)とセシリー・モリス氏(右)。

──セシリーさんがジュエリービジネスに関わるようになった経緯を教えてください。

私には2人の姉妹と2人の兄弟がいますが、父(ジェレミー・モリス氏)からはいつも「自分の夢やキャリアを見つけなさい」と言われていました。大学卒業後、仕事を探していた時にたまたま本店のレセプショニストのポジションが空いていたので、「2週間くらい続けばいいかな」という軽い気持ちで始めたのです。そこからマーケティングなどにも携わるようになり、5年ほど経った時、ずっとここで働きたいと思いました。今ではこの仕事とブランドを心から愛しています。ブランドの歴史の一部となり、このビジネスを成長させたいと強く願うようになりました。

──“デヴィッド モリス”の特徴は、まずどういったことでしょうか?

フランスやイタリアの著名ジュエリーブランドの多くは、巨大なグループの傘下になっています。しかし、“デヴィッド モリス”は今も家族で経営しているブランドです。そして、他の独立系ブランドの中にはプライベートセール(外商)のみを行っているところもありますが、私たちのように実店舗を構え、海外へも進出しているファミリービジネスのブランドは非常に限られています。この独自性を大切にすることが、私たちが生き残っていくために不可欠だと考えています。

熟練の手仕事と最新技術。アトリエには、親子で働いている職人もいます

ロンドン、ニュー・ボンド・ストリートの本店と、同建物内にあるアトリエでの作業の様子の画像
ロンドン、ニュー・ボンド・ストリートの本店と、同建物内にあるアトリエでの作業の様子。

──英国発祥のブランドであることの強みなどについては、どうお考えですか?

英国のブランドであることは私たちにとって極めて重要です。ニュー・ボンド・ストリートにある歴史的な建造物を本店としていることもそのひとつです。この建物は歴史的遺産として保護されているため、わずかな改変をするにも許可が必要なほどですが、その伝統を守り続けることがブランドのストーリーにもなっています。英国ブランドであることの強みは、その揺るぎない歴史とアイデンティティにあると考えています。

──昨今、さまざまな分野で職人技術の継承に関して話題となっていますが、ロンドンの御社アトリエにおいてはいかがでしょうか。

本店のビル内にアトリエを持っているのは、他のジュエラーにはない非常に稀なケースです。私たちのワークショップには親子で働いている職人もいます。父親は30年以上ブランドを支えてきた熟練の職人で、10年前に加わった息子はCADなどの最新技術を使いこなします。このように伝統的な手仕事と新しい技術が共存しているのは、とても幸運なことだと思います。そして、父は今も制作の全プロセスに深く関わり、最終的な仕上がりを自らチェックしています。

──新しいテクノロジーは、ジュエリーデザインにどのような影響を与えていますか?

私たちは3Dプリンティングを活用しています。これにより、石のサイズや寸法、セッティングを完璧に把握できるようになり、それをデザインに落とし込むのが非常に容易になりました。特にビスポーク(注文品)の際にはとても助かっています。というのも、石はすでに手元にあっても、デザインをどうするか検討中ということがよくあるからです。そんな時、3つか4つの異なるデザインパターンをプリントし、お客様にご提案することができるのです。

「トリオレット」は、より日常に馴染むものになったと思います

スタッキングできる「トリオレット」のリング(左)とフープピアス(右)の画像
スタッキングできる「トリオレット」のリング(左)とフープピアス(右)。18Kイエローゴールドとパヴェダイヤモンド&ラウンドダイヤモンドの組み合わせ。

──セシリーさんご自身が手がけられた「トリオレット(Triolette)」コレクションのコンセプトについて詳しく聞かせてください。

“デヴィッド モリス”の既存のコレクションを見渡した時、「自分が毎日身につけたいもの」が欠けていると感じたのがきっかけです。ひとつ手に入れたら、次の記念日にまたひとつと買い足して、スタッキング(重ねづけ)を楽しめるようなものが欲しかったのです。また、ギフトとしても贈りやすいものを目指しました。ブランド初のイエローゴールドを採用したことで、より日常に馴染むものになったと思います。これまでブランドを知らなかった若い世代のお客様が、まずひとつ購入し、ふたつ目、3つ目と戻ってきてくださる……そんな光景を思い描いて作りました。

父はハイジュエリーや希少な石に情熱を注いでいますが、実は祖父は今の私と同じようにエントリーレベルのものにも関心を持っていました。私は、伝統を守りつつも、今の若い世代が投資としてジュエリーと出合い、成長と共にステップアップしていけるような、より広いレンジのラインナップを構築していきたいと考えています。

「トリオレット」を着用したセシリー・モリス氏の画像
「トリオレット」を着用したセシリー・モリス氏。

──日本を含むアジア市場において、御社として、今後どのような取り組みが必要だと考えていますか?

今、重要なことは、私たちがどのようなブランドであるかをマーケットに正しく示すことです。特にアジアでは「なぜ“デヴィッド モリス”のジュエリーはラグジュアリーなのか」という点、つまりひとつの作品に注ぎ込まれる知見やクラフツマンシップについて、お客様に丁寧に伝えていく必要があると感じています。自分たちのストーリーと技術に自信を持ち、時間をかけて信頼を築いていきたいです。

──新しい世代に向けて、ブランドの魅力をどのように発信されていますか?

SNSなどを活用して、作品の背景にあるストーリーを伝えています。例えば、父がどこでその宝石を見つけ、どのようにデザインを決めたのかといった物語です。また、世界各地でポップアップや展示会を開催し、お客様に直接お会いして石の由来を話すことも大切にしています。最近では、職人技に焦点を当てた美しい動画も制作していて、父の石に対する情熱や、1点に1,000時間を費やすこともある制作プロセスを可視化しています。

お問い合わせ先
デヴィッド モリス髙島屋大阪店
06-6631-2043
https://www.davidmorris.jp/

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