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ボトル総額96万円という至高のテイスティング会は、ウィーテッドバーボン、2種類からスタート。ウィーテッドバーボンとは、ライ麦の代わりに小麦を用いたマッシュビルで造られており、マイルドでふくよかなフレーバーが特徴だ。オークションを賑わせている『パピー ヴァン ウィンクル』も、同じマッシュビルで造られている。「小麦を多く用いると雑味が出やすいが、バッファロー・トレース蒸留所は技術が高く、スムースな甘さを上手く引き出している」と石田氏。
『ウェラー フルプルーフ』は毎年夏場に1回のみボトリングされる限定品で、57%と高いアルコール度数でふくよかなボリュームがある。バニラやチェリーの濃厚な甘みと、樽由来の心地良い渋みも感じられ、フレーバーに深みがある。
世界中のコレクターを魅了する『ヴァン ウィンクル』ブランドからは、今秋、日本で発売された『オールド リップ ヴァン ウィンクル 10年』が登場。キャラメルやバニラといったバーボンウイスキーの定番のフレーバーだけでなく、洋梨や黄桃のようなジューシーな甘さも感じられる。これを目当てにテイスティング会に参加した方も多かったようで、皆、なめらかな口当たりにうっとりとしていた。
続いて、バッファロー・トレース蒸留所伝統のマッシュビルである、ライ麦比率の低いタイプを4種類テイスティング。プレミアムバーボンのエントリー銘柄である『バッファロー・トレース』も同じマッシュビルで造られている。『スタッグ』は、10年という長期熟成を経て、ボトリング時に加水せず瓶詰めをしており、ありのままのフレーバーを愉しめる。ブラウンシュガーの甘味、ライ麦由来のクローブのようなスパイシーさが織りなすハーモニーは、重厚感たっぷり。余韻もしっかりと感じられ、飲みごたえのあるプレミアムバーボンだ。
アメリカの国鳥であるイーグル(鷲)を商品名に冠した『イーグル・レア』からは、3種類を飲み比べた。『イーグル・レア 10年』は、1本1本手作業でボトリングしているこだわりの逸品。アメリカでは限定商品として発売されているが日本では通年販売しており、アメリカ人観光客が日本の酒販店で購入する姿も見受けられる。オレンジピールや蜂蜜、ナッツやココアといったドライな風味が特徴。「贅沢にハイボールにしてもおいしい」と松山氏。
『イーグル・レア 17年』はBTAC(バッファロー・トレース アンティークコレクション)のひとつだ。BTACは、毎年、バッファロー・トレース蒸留所が数量限定でリリースしている、コレクター垂涎のシリーズ。『イーグル・レア 17年』は英国の酒類専門誌『ザ スピリッツ ビジネス』で世界最高のバーボンウイスキーに選出されたこともある。トフィーの甘味、シナモンのようなスパイス感、シガーのような渋み…と繊細なフレーバーが層を成している。バッファロー・トレース蒸留所のブランドアンバサダーを務める、『リーガロイヤルホテル(大阪)』にある『Cellar Bar』に在籍する池上祐子氏も、ひとくち飲んで「おいしい!」と歓喜の声をあげていた。
至高のテイスティング会を締めくくるのは、本数限定で生産されている、20年熟成の『ダブル イーグル ベリー レア』だ。その名の通り、クリスタルのデキャンタには、キャップとボトル内部に2羽のイーグルが鎮座する。世界中のコレクターが注目する逸品で、各ボトルには認証書が個別に付属している。今年、日本初上陸となったスーパープレミアムバーボンを2本開けるとあって、会場は緊張感と高揚感に包まれていた。
まるでシルクのようななめらかなテクスチャーで、バニラやキャラメル、アプリコットのような上品な甘味が、ふんわりと広がっていく。長期熟成だからこその余韻も心地良い。
優雅で洗練されたフレーバーのプレミアムバーボンは、熟成環境にこだわることで生み出される。バッファロー・トレース蒸留所は、クーパレッジを保有しており、自社で熟成樽を製樽している。プレミアムバーボン用の熟成樽は木材からこだわっており、『イーグル・レア 17年』と『ダブル イーグル ベリー レア』には、特に厳選した樽を用いているという。
熟成庫は14棟あり、レンガ造り、石造り、金属と3タイプ存在している。『ダブル イーグル ベリー レア』は、温度の上がりにくいレンガ造りの熟成庫で、丁寧に熟成される。20年の熟成を経ると、樽の高さの1/4ほどしか、ウイスキーは残らないそうだ。長期熟成のプレミアムバーボンは、それだけ希少なのだ。
2日間で約100名の参加者が集った、至高のテイスティング会。アメリカ本国でも入手困難なプレミアムバーボンをテイスティングできるとあって、アメリカから来日した参加者の姿もあった。30~60代と幅広い世代の参加者たちは、6種類のプレミアムバーボンを飲み比べ、バーボンウイスキーのフレーバーの幅の広さを愉しんでいるのが印象的だった。
テイスティング会に登場した6種類のプレミアムバーボンの一部は、ゲストスピーカーとして登壇した、松山氏がオーナーを務める『Ken’s bar 京橋本店』、愛知県豊橋市にある石田氏がオーナーを務める『GEMOR』でも、味わうことができる。
時間に磨かれたプレミアムバーボン――。貴重なボトルを手に入れて満足するのではなく、実際に飲んで、おいしさを分かち合う体験をするのが、一番の贅沢なのだと気付かせてくれた。
AUTHOR
慶應義塾大学を卒業後、アパレルのラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーweb』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了される。蒸留所の立ち上げに参画した経験と、ウイスキープロフェッショナルの資格を活かし、業界専門誌などに執筆する他、日本で唯一の蒸留酒の品評会・東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)の審査員も務める。
STAFF
Writer: Arisa Magoshi
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