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腕時計としての実用性を保つためには、機能性とデザインのバランスがとても大切。個性を主張させながら、調和のとれた腕時計としての完成度の高い新作とは?
良い時計とは長い間愛用できる、機能性とデザイン性のバランスと取れたもの。バランスとは装着したときにも重要で、腕元でグラグラ動くよりも低重心で安定感のある時計がいい。そういう意味では、薄型ケースで文字盤のデザイン性が高いモデルが人気となるのは当然だろう。ウォッチズ&ワンダーズの新作でも機能性で個性を主張しながら、デザインでうまくまとめ上げたモデルを見つけた。尖り過ぎず、平凡でもない、ほどよく存在感があって飽きのこない調和のとれた完成度の高い時計をセレクトした。
まずは驚異の薄型ケースをしたピアジェのアニバーサリーモデルから。
2024年に創業150周年を迎えたピアジェ。そのアニバーサリーに、これまで薄型ケースを追求してきた時計ブランドとして、ケース厚2mmにトゥールビヨンを組み込んだ薄型ウォッチを発表した。
トゥールビヨンとは調速機と脱進機を収めるキャリッジをグルグルと回転させて重力を分散させる機構。一般的なものは浮いているように見えることからも大きなスペースを必要とするのがわかるだろう。そのため薄いケースなどの小さなスペースに収めるのに適していない。そうしたことからピアジェはまずベースとなった手巻きウォッチで世界最薄の「アルティプラノ アルティメート コンセプト」の約90%のパーツを小さく作り直した。そして10時位置に配したトゥールビヨンは、外周をセラミック製ボールベアリングで固定するゴールドのパーツを組み込んで極小サイズにまとめている。
またトゥールビヨンを搭載することで動力を約25%多く必要するするが、主ゼンマイを大きくすることで、約40時間以上のパワーリザーブを確保。コンパクトでもパワフルなトゥールビヨンは、アニバーサリーにふさわしい出来栄えとなった。なおリューズは3時位置のケースラインにきれいに収まっている。
パテック フィリップ仕込みの高級時計作りで愛好家の目を喜ばせているローラン・フェリエ。「クラシック・ムーン」はノスタルジー香るデザインに年次カレンダーにブランド初のムーンフェイズを備えた新作だ。
アニュアルカレンダーは12時位置の下に曜日と月を表示する小窓を備え、文字盤外周にポインターデイトで示すパテック フィリップのビンテージを彷彿とさせる。目を引くのは6時位置のムーンフェイズ表示だ。アベンチュリンガラスのディスクに、月と星の形を彫刻し、そこにスーパールミノヴァを塗布することで、暗闇に月や星が浮かぶ様子を演出した。さらに半透明のブルーエナメルのカバーを備え、北半球、南半球の月の満ち欠けを表現する。
ムーブメントは新型のLF126.02を搭載し、ムーンフェイズのないアニュアルカレンダーのみのムーブメントであるLF126.01の改良バージョン。パワーリザーブは先代機と同様に80時間もあり、曜日とムーンフェイズの調整はケースサイドのコレクターで調整できるので、手巻き式ながら極めて実用的なカレンダーモデルだ。
クロノスイスは時、分、秒をそれぞれ独立させたレギュレーターと呼ばれる表示機構やジャンピングアワーを得意とするブランド。世界で初めてシースルーバックを採用したことでも知られる。表現方法はとても古典的だが、近年では現代的な素材やカラーリングで注目を集めている。
レ・セックの新作は、米国ユタ州にある広大な塩湖で開催される1960年代のスピードレース「ボンネビル」から着想を得た。文字盤にはハンドギョーシェのあとにCVDコーティングが施され、グリーンからブルーへと変化するグラデーションを表現。レギュレーター仕様の時刻表示は、12時位置に時針、センターに分針、6時位置に30秒のレトログラードを備える。このレトログラードは30秒まで行くと0秒までに針が一瞬で戻り、再度スタートする機構で、ダイナミックな動きが楽しめる。この繊細な曲線を描く独特なギョーシェ装飾やレトログラードは、極めて古典的な技法であるが、ポップなカラーリングが個性を際立たせている。
レイモンド ウェイルの「ミレジム」は、時計界のアカデミー賞とも称されるジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで2023年チャレンジ賞を受賞。このチャレンジ賞とは2000スイスフラン(約35万円)以下の時計だけエントリーできるカテゴリーだ。セクターダイヤルと呼ばれるアワーマーカーで区切られたようなクラシカルなデザインに、スモールセコンドを配してバランスよくまとまっている。
今年の新作は、そのミレジムに初のムーンフェイズを搭載。持ち前のクラシックテイストを崩すことなく、6時位置に月齢表示をレイアウト。顔を描いた月は職人がひとつひとつ手描きしたもので、ヴィンテージウォッチには表情のある顔を描いたムーンフェイズが多いことからミレジムの世界観によくマッチしている。ケースはステンレススティールにローズゴールドPVDを施し、夜空を表現したようなネイビーの文字盤カラーと合わせた。ケースの厚みはスリムに仕上げ、デザイン性、装着性ともにバランスがとても良い時計だ。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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