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高級時計の新作が一斉に発表される春。舞台となったのは、スイス・ジュネーブで開催された時計の見本市、ウォッチズ&ワンダーズジュネーブ(W&WG)。今年は取材班も増員し、さまざまな視点から高級腕時計の新作と最旬のトレンドに迫った。第一回は取材班が感じた会場のリアルな雰囲気や、新作時計の傾向や感想などを語った座談会からお届けする。
座談会メンバー/
SIHH以来、6年ぶりに参加となる編集:K
W&WGはもちろん海外展示会が初めてな企画編集:H
ほぼ毎年スイスの時計見本市に行くライター:T
K:ジュネーブに行ってきました。飛行機がロシア上空を飛べないから、ヨーロッパが遠くなった気がした。W&WGでは昼食の時間も惜しみ、5日間で会場内外を含めて合計32ブランドを回ってきた。
H:さすがは世界一の時計見本市という感じでしたね。初めてW&WGに参加しましたが、噂通りに高級感のあるサロン的な空間に圧倒されました。各国のバイヤーが多いせいか、ファッションと比べるとビジネススーツをビシッと着こなした人たちが目に付きました。
K:会期の前半は招待制ということもあり、時計関係者が多かったようだね。ビジネスはもちろん、時計を文化的な知財として位置づけようとしている人たちの集まりと感じた。会場を見ても、他の展示会なら会期が終わると1週間後には取り壊すので、天井が突き抜けている剥き出しの内装が一般的だけど、W&WGではどのブランドも細部まで作りこまれている。これはブランドイメージをきちんと伝えようという意図が強く感じられるね。毎年見ているTはどう?
T:コロナ前の勢いを完全に取り戻した人の多さでしたね。去年と比べると、今年は出展ブランドがさらに増え、その分だけ会場も拡張してW&WGの勢いを感じました。新しい入場ゲートもできて便利になりましたね。セキュリティ面を考えると、1カ所のほうがいいのでしょうが、それ以上に多くの人が来場するようになったということでしょう。
T:32ブランドも回って、多くの時計を見ていると、さっきも同じようなモデルを見かけたみたいなトレンドが見えてくると思うんですが、今年の新作はどんなことを感じましたか?
H:時計専業メーカーの独壇場と思っていましたが、意外にもジュエラーのヴァン クリーフ&アーペルや、ファッションブランド系のシャネルの時計に存在感がありました。ブランド全体の世界観を時計にもそのまま持ち込むのは、さすが。時計ファンの心を掴むのもわかります。
K:長年、時計を扱って編集者を続けていると、ライフスタイルの中での腕時計の位置づけにとても興味がある。その点でいうと、超複雑時計など見本市に来ないとみられない一点もののマスターピースに心が奪われるね。機械をどこまでも精緻に果てしなく複雑に作っていくと、それ自体が美しく見える。そういう時計を間近に見れるのも見本市の醍醐味だよ。
T:その通りですね。W&WGは、ビジネスの場であると同時に、新機構や奇想天外なアイデアの発表の場でもあります。現在人気となっている時計は、そういう革新性を何度も世に問うてきたブランドといえますからね。しかし、今年は新しいアイデアを持った時計は少なかった気がします。文字盤のカラーバリエーションや、ケースの素材違いが多い印象です。新作時計は開発に通常3年くらいのタイムスケジュールで企画が動いています。今から2,3年前はちょうどコロナが最も猛威を奮っていた頃だから、スケジュールがズレこんだんじゃないかな。だから比較的短期間でも対応できるカラバリが増えたのかも。
H:一方で、ユーザー目線からみると、ヴァシュロン・コンスタンタンやグランドセイコーなど、良質なドレスウォッチが多く目に付きました。
K:ラグスポウォッチは相変わらず人気で多く見られたけれど、別のスタイルもそろそろ見てみたくなってきた頃合いだよね。
H:ケースの薄さにこだわっている時計が多かったですね。そうすると必然的にドレスウォッチになるんでしょうか。派手な文字盤デザインだけではなく、装着感に目を向けるブランドが増えるのは、地味だけどとても大切なことだと思いますね。
T:鋭い意見です。時計のケース自体は薄くなったドレスウォッチでも、文字盤は昔のような平面的なプリントではなく、植字のインデックスや独特な質感の仕上げで立体的に仕上げるのが、今風の薄型ドレスウォッチですね。装着感でいえば、ブレスウォッチの欠点であった長さの調整は、これまでコマ詰めするかカットするしかなかったけど、バックルで調整できる時計がいくつもあった。これも腕時計の装着感に目が向いている証拠だと思います。
K:ブレスレットと薄型ケースといえば、パテック フィリップのゴールデン・エリプスの新作に強烈な印象が残っている。まさしくドレスウォッチ復権を感じさせる1本だった。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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