（3ページ目）世界で最もパワフルなラグジュアリーSUV「DBX 707」で北の大地をグランドツーリング

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英国紳士的な品位を感じさせる走り

試乗コースはパークハイアットニセコ HANAZONOを起点に、支笏湖を経て新千歳空港へと至る150kmほどの道のり。遙か先の地平線へと続く直線路や、中速コーナーが右へ左へと展開するカントリーロードなど、まさに北海道ならではの道路が多くを占めていた。

走り始めて意外だったのは、車名に冠したパワーから想像される猛々しさを一切感じさせないこと。タウンスピードで流すような場面では、300km/hオーバーのハイパフォーマンスが嘘であるかのように、ドライバーの意図したとおりジェントルに加減速を繰り返す。ドライバビリティの洗練されたマナーは、内外装と同様に英国紳士的な品位を感じさせる。

DBX707には5つのドライブモードが備わる。交通量の少ないカントリーロードに至ると、センターコンソールのロータリースイッチを長距離走行での快適性を重視した「GT」モードからパフォーマンスを最大限に発揮する「スポーツ＋」モードに切り替え、ペースを上げた。

そんなシーンでは、アクセル操作に対するV8ツインターボのレスポンスや、ステアリング操作に対する車両の動きがより鋭さを増し、スーパースポーツとしての純度が高まる。5メートルを越えるSUVであることを忘れ、DB系のスポーツカーを駆っているような感覚で、ドライビングという行為を純粋に堪能できる。まさにアストンマーティンが同車をして、「世界で最も速く、最もパワフルで、最高のハンドリングを誇る」と謳う所以だろう。

特筆すべきは、そんなときのピュアスポーツカーのごとき振る舞いと、リアシートでの快適な移動を叶える優れたパッセンジャーカーとしての側面が、一切の違和感もなく同居していること。そしていずれのシーンにおいても、スペックから想像される猛々しさを、優れたエンジニアリングによるマシンとしての圧倒的な洗練性が包み込んでいることだ。

そんなわけで、新千歳空港までの心躍るドライブ体験は、後席で過ごした昨日の往路と同様にあっという間に幕を閉じたのだった。

欧州では、18世紀ごろから大陸を周遊するグランドツーリングという旅の文化が広がっていった。そんな旅に必須なのが、速く快適に、どこまでも走って行ける、エレガントなスタイルの馬車だった。やがて20世紀の自動車の時代になると、その役割はGTへと受け継がれる。

ハイパフォーマンスと快適性、そして美しいスタイルが高い次元で融合したDBX 707は、まさに現代を代表するGTの1台といえるだろう。そしてパークハイアットニセコ HANAZONOは、グランドツーリングのデスティネーションとして理想的な場所だった。いずれもが、唯一無二の特別な体験価値を提供してくれる、希有な存在だからだ。

主要諸元	アストンマーティン DBX 707
全長×全幅×全高	5,039×1,998×1,680mm
車両重量	2,245kg
トランスミッション	9速AT（湿式クラッチ）
エンジン	V型8気筒3,982ccツインターボ
最高出力	707PS／4,500rpm
最大トルク	900Nm／6,000rpm
車両価格	3,290万円～