何事にも縛られなかった伝説の異星人の精神性は、現代の私たちにこれからをどう生きるべきか、指南してくれる。

ロックミュージシャン/俳優/ジェネラリスト
David Bowie

さまざまな価値観を持つ、いろんな人々が一緒に力を合わせて生きる、これからの時代。デヴィッド・ボウイの精神性は私たちの生きる指標になりえるのか。

LIFESTYLE Mar 29,2023
何事にも縛られなかった伝説の異星人の精神性は、現代の私たちにこれからをどう生きるべきか、指南してくれる。

性、国や文化、宗教、そして年齢までもあらゆる規制、常識を取り払い、フリーだったデヴィッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイの画像
2022 Starman Productions, LLC.  The David Bowie Archive

80年代、デヴィッド・ボウイのオリジナル・アルバム『レッツ・ダンス』が発表されると世界中が熱狂、それに伴う「シリアス・ムーンライト・ツアー」はこれまでにない大盛況となった。ロック好きや流行やファッションに敏感な人に愛されていた特別なボウイが大衆に支持されるようになり、ついたキャッチフレーズが「時代がボウイに追いついた」。

果たして、時代はボウイに追いついていたのだろうか。

デヴィッド・ボウイの画像

この度、公開されるデヴィッド・ボウイ財団唯一の公式認定ドキュメンタリーに触れ、なんと烏滸がましい考えだったのかと思わざるを得ない。

「スターマン」「チェンジズ」「スペイス・オディティ」「月世界の白昼夢」といった40にもわたる名曲と選りすぐりの未公開映像で構成された超体感型ミュージックオデッセイ、『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』。

監督はザ・ローリング・ストーンズの『クロスファイアー・ハリケーン』、カート・コバーンのドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』を手がけたブレット・モーゲン。音楽プロデュースはボウイ、そしてT・レックスもプロデュースしたトニー・ヴィスコンティ。音響は『ボヘミアン・ラプソディ』でオスカーを獲得した音響技術者ポール・マッセイが参加。スタッフに錚々たる顔ぶれが揃い、ドキュメンタリー映画のイメージを軽く凌駕する、画期的な映像作品となっている。

ナレーションと著名人のインタビューで作られたドキュメンタリーは多いが、本作は全編にわたり、ボウイのモノローグで進行する。外側からボウイの人となりを知るのではなく、ボウイの内側、その深淵なる人間性、人生哲学を探求していくような画期的な映像体験はまるでボウイという宇宙を旅する時間である。

デヴィッド・ボウイの画像

ジェンダーレスな全性愛。

ボウイといえば、グラムロック。今でこそ、珍しくない男性のメイクやジェンダーレス・ファッションだが、70年代、ボウイが濃いメイクと中性的なファッションで登場したとき、夢中になる若者たちとは裏腹に世間の反応は冷ややかなものだった。劇中にも、ヒールを履いたボウイに「あなたはバイセクシャル?その靴はバイセクシャル用?」と不躾な質問をするインタビュアーが登場する。男性は化粧しないと思われていた時代。ボウイは微笑みを絶やさず、「ただの靴だよ」と返す。男性も女性もない。それはファッションに限った話ではない。

ミック・ジャガーとも噂のあったボウイ。最初の妻であるアンジーのルックスはレズビアン風で、バイセクシャルのカップルとされていた。LGBTQの考えがやっと浸透しつつある現在から遥か昔、「バイセクシャル」という言葉すらセンセーショナルだった頃、ボウイはすでにパンセクシャルだったのだろう。男女どちらにも自分の性別を当てはめず、魅力を感じれば、性別を問わない、ジェンダーレスな全性愛。

提供:ワーナーミュージック・ジャパン

ボウイの概念には偏見、差別がない。若い山本寛斎をステージ衣装デザイナーに起用し、美しいものは西洋、東洋、分け隔てなく、その文化を尊重し、愛した。ベルリンに住んだかと思えば、京都に憧れ、バリ島のガムランに魅せられ、「チャイナ・ガール」と浮き名を流して、ソムリア出身のイマンと結婚した。映画では定住せず、世界各地を放浪するボウイの半生が映し出される。

ボウイの目線で見つめれば、「ブラック・ライヴズ・マター」や「東アジア人差別」といった問題は決して起きないはずだ。

さまざまな価値観を持つ、いろんな人々が一緒に力を合わせて生きる、これからの時代。いまこそ、ボウイのようなニュートラルな考えが必要ではないだろうか。

デヴィッド・ボウイの画像
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ボウイはどのようにして、ボウイになったのか。

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