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「GBラリー」1日めのゴールは、富士スピードウェイに併設された2022年オープンの「富士スピードウェイホテル」。歴史的なスポーツカーの展示や海外からのゲストも想定した充実のホスピタリティが特徴で、このような施設が誕生したことで、日本の自動車文化もいよいよ熟成の期に入ったことをうかがわせる。
ホテルのエントランスに「マクラーレンGT」を停め、前後の荷室からラゲッジを取り出す。今回は通常の一泊旅よりも量が多い。ホテルで開催されるディナー用のセミフォーマルウエア一式を持参しているためだ。
当初の計画では、“女王陛下の007”ことジェームズ・ボンドが海中から上陸し、ウェットスーツを脱ぐと下には白のディナージャケットを着ていた有名なシーン(「007 ゴールドフィンガー」より)にならい、重ね着して運転するつもりだった。イベントにはユーモアも必要と考えてのプランだったが、さすがに無理があって断念。それでも2人分のタキシード入りガーメントケースを無理なく収納できたのは、「マクラーレンGT」も十分“大人の秘密兵器”であるといえる。
ディナーでは旧知のメディア関係者に加え、英国をはじめ欧州ブランドを扱う協賛企業の関係者と席をともにし、輸入車の最新情報から時計、ファッション、食、アートなど、様々な話題で盛り上がった。世界を相手にビジネスを展開している方も多く、さりげないテーマの中に未知の情報や深い考察、そしてユーモアを織り交ぜた会話が楽しい。
紳士のフォーマルとは煌びやかさを競うのではなく、初対面でも国籍や職業を問わず良好な関係を築くためのもの。英国で必然的に発生し、いくつかの偶然も合わさって定着した英国の発祥のスタイルは、オンライン上でのコミュニケーションが増えた今こそ、貴重な対面の機会で人間関係を深めるうえで大きな意味をもつ。
前夜の記憶も新しい翌朝、ホテルを出発。箱根を超え、観光客で賑わう芦ノ湖を経てチェッカーが待つ大磯へと向かった。以前にも乗ったことはあるにせよ、「マクラーレンGT」は自分の感覚とよりフィットし、タイトな山道も観光渋滞もまったくストレスを感じることなく走っていける。
2日間とも、運転中は20年以上前に手に入れたジョンロブのダービーを履いていた。だいぶ減ったダブルソールは返りがよく、足の動きを妨げることがない。思えば、ここまで馴染むのに結構な時間がかかった。その点、「マクラーレンGT」は即、馴染む。靴とクルマを同列に扱うのはナンセンスかもしれないが、“英国の正統”は確実に進化している。ジョンロブも、今では屈曲性性をもたせたテンシル・コンストラクションによる、履きはじめから柔らかなモデルを製造している(もちろん伝統的なソールのモデルも素晴らしい)。価値観の多様化とクロスオーバー化が進むこれからの時代、TPOに対応できる「マクラーレンGT」は、新しい出会いと感動を生む魅力的なパートナーだ。
ナビゲーター役の編集担当とそんな話をしながら、気が付けばゴールしていた。現代の公道を走っていることが奇跡的なビンテージカーや、見ていて雨が降らないことを願わずにはいられないフルオープンカー、貴族的なラグジュアリークーペなど、本当に様々なクルマと愛好家が参加した「GBラリー」。各々が心に秘めた目標を抱いていたに違いなく、達成できたかは本人のみぞ知る。だが、充足感は皆同じだったに違いない。本気で遊べば、結果はどうであれ面白いに決まっているからだ。
なお、われわれは現代車両部門でのPC競技でトップタイムを記録。ゴール後の表彰式で祝福を受けた。本気で遊びながらも“任務”はまっとうしたことをお伝えしておこう。
主要諸元 | マクラーレン GT |
全長×全幅×全高 | 4,685×1,925×1,215/1,234mm |
車両重量 | 1,483kg |
駆動方式 | MR |
トランスミッション | 7速SSG |
エンジン | V型8気筒ツインターボ、3,994cc |
最高出力 | 456kw(620PS/7,500rpm) |
最大トルク | 630Nm/5,500~6,500rpm |
車両価格 | ¥26,950,000(税込) |
STAFF
Photo: McLaren Automotive,Great British Rally
Special thanks: McLaren Tokyo
Writer: Kaori Sakurai
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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