【悠々自旅のfolk*scapes】竹富島、土地が育んだ人と文化 (後編)

小林泰彦が描く日本のディスティネーション alongside 『星のや竹富島』 vol.1

PR/星野リゾート

星野リゾートとのコラボレーションで、日本を旅することの魅力をより深く、多彩に追求していく連載企画。長年日本の津々浦々を旅してきた画家・イラストレーターの小林泰彦が、日本各地の星野リゾートを訪ね、その地の魅力の実像を掘り下げる。今回は日本最南端の『星のや』と竹富島独自の文化との連関を、さまざまな人との出会いを通じて探っていく。

SPECIAL Apr 30,2026
【悠々自旅のfolk*scapes】竹富島、土地が育んだ人と文化 (後編)

画家、イラストレーター
小林泰彦 

こばやしやすひこ/画家、イラストレーター。1935年、東京・日本橋生まれ。武蔵野美術学校中退。社会風俗、環境、街、旅、自然、スポーツ、登山やハイキングなどのイラストレーションを中心に、制作活動中。小説の挿絵や本の装丁などのほか、絵と文によるレポートや紀行のような仕事も数多い。また、文具類、食器類、衣類など小林泰彦のライセンスプロダクトも展開されている。国内外の旅によく出かけ、自然の中で過ごすことが多い。近刊は『にっぽん建築散歩』『続・にっぽん建築散歩』(ともに山と溪谷社)、『イラスト・ルポの時代』『ヘビーデューティーの本』(ともにヤマケイ文庫)、『ヘビトラ大図鑑』(トゥーヴァージンズ)など。

「ミンサー」「サバニ」~気の長い技術を後世へ継承したい

島仲やよいさんのイラストの画像
 世持御嶽(ユームチオン)は島の西集落と東集落(他に仲筋集落がある)の境界辺りにあり、ここは「種子取祭」の主会場で豊作祈願や奉納芸能の特設舞台もここに設けられる。ちなみに御嶽(オン)は本土での神社にあたり神司は神主にあたる。その世持御嶽の向かいに、いまから訪ねる竹富民芸館がある。

 民芸館は島の代表的民芸品の「ミンサー」のほか「芭蕉布(ばしょうふ)」「上布(じょうふ)」といった織物作品の展示、制作、技術指導を行なうミンサーセンターとも言うべき場所で、まずは民芸館で織り手をしている島仲やよいさんのお話を聞くことにした。

 昔はみんなおばあちゃんやお母さんが家族のためにと糸を紡ぎ、機を織ったものです。一方で上布は役人への献上品や税として織られており、また普段着には芭蕉布をと、それぞれ目的用途がありましたね。

 竹富島はミンサーが有名ですが……

 はい、ミンサーとは綿の細い帯(綿狭=めんさ)のことです。綿文化は後から入ってきたものです。婚約が決まったときに女性から男性へ贈られたのがミンサーでした。五つと四つの模様は「いつ(五)の世(四)までも末永く」という想いが込められていると言われます。

 わあ、ステキですね。

 女性が全身全霊を込めて織って男性に贈るわけで、五つと四つの模様を重ねると一つの四角形になるから、「身も心もあなたと一つよ」という意味にもなります(笑)。今ではこの模様が島の建築やタイルのデザインにも応用されて人気があります。

 私の曾祖母と祖母も母も織り手で私も母の作業を見て育ち、その後大学でテキスタイルを学んで島に戻って、昔見ていたものと学んだ知識が繋がって現在の私があります。いまはコスパが優先されますが、島には島の時間が流れているので、そんな気の長い技術を次の世代に繋いでいきたいです。

 貴重な島仲さんの覚悟を胸に畳んで民芸館を後にした。
上勢頭輝さんのイラストの画像
 カイジ浜は「星砂の浜」で知られる竹富島でも人気のビーチで、島に来る旅行者が必ず訪れるところだ。サンゴ礁の海を背景に自撮りする人、ラグーン(波の来ないサンゴ礁内の磯)で遊ぶ人、星砂を探す人などでいつも賑わう。

 そんな浜で目立つのが白い帆の「サバニ」という沖縄伝統の木造船だ。櫂(エーク)と帆で操船するサバニ独特の型は南の海にふさわしく美しい。そのサバニを用いて「サバニツアー『海人(シュウカジ)』ガイド」を行っている上勢頭輝(あきら)さんに島とサバニの話を聞いた。

 初めてサバニを近くで見ました。格好いいですね……

 サバニは元来は一本の木をくり抜いた丸木舟でした。その後そんな大木が少なくなった二五十年ほど前から、板を繋ぎ合わせるこのような形になったといいます。竹富島のサバニはサンゴ礁の浅い海でも小回りが利くように、また向かい風でも進めるように飛行機の翼のような揚力がつく形状になっています。

 サバニに興味を持たれたのはどうして……

 おじいたちから西表島までサバニで行くのがいかに痛快だったか聞かされて育って、中学生の時に石垣島から西表島まで中学生だけで5時間半かけてようやく辿り着いて息が上がり、帰りは船に曳かれて戻ったのですが、その体験がすばらしかったので(笑)。

 高校から島を出て沖縄本島でダイビングをやったりして、大学は水産学部を選びました。

 海で生きる決心をしたわけですね……

 それで25歳で島に帰って初めて自分の島の海が他より綺麗だと気づいて、ここが特別なものに見えた。その頃ちょうどおじいたちがサバニを復活させて孫たちに教えたいと言い出したので、それがきっかけでサバニを造ることにしました。今のサバニは5艘目で、子どもたちに教えるための小さいのから大人用の大きいのまで用途別に造りました。

 夏の夕方は中学生が集って練習します。中学校を卒業して島を離れる前に、自分の島の海を庭のように遊べるようになって欲しいと思ったのです。そんな子たちが大学生になって、将来は島に帰って海の仕事がしたいと言ってくれるようになったのがうれしいです。仕事がないと帰ってこれないのでね。

 サバニのツアーだけでなく他の事業も継承して、彼らが帰ってきた時の受け皿をつくるのが私の役割だと思っています。

 島に伝わる海の文化を次の世代にという上勢頭さんの強い意志をその太い腕に感じた、カイジ浜の午後だった。
桐野友歌子さんのイラストの画像
 桐野友歌子さんは、『星のや竹富島』のスタッフで、島をあちこち案内してくれたのだが、その途中で集落の景観や民家の造りを説明してもらったのが、民家オタクの私にはたいへんありがたかった。

 琉球赤瓦と白漆喰の屋根、その上のシーサー、琉球石灰岩の石垣(グック)、入ると正面にあるマイヤシ(ヒンプン)、日陰をつくる軒の深さ、サンゴの白砂を敷いた庭、風を防ぐフクギ並木、そういった各戸に共通する島の住居の形式や生活様式をよく見てください。普通は入って右が主屋(フーヤ)、左に台所(トーラ)が別棟になります。ニライカナイ信仰は東方崇拝なので、神様も右側(東)からお入りになり、人は左から入ります。主屋(フーヤ)は普通は南側の正面から見て右(東)の座敷が一番座で上座(かみざ)、床の間のある客間です。中の二番座は仏壇が置かれ、左の三番座などの座敷が家族の部屋になります。座敷の外側に縁側があり座敷に直接陽が差さないという南国らしい設計で、間仕切りを開放すると家全体に風が吹き抜けるのも同じですね。この間取りは『星のや竹富島』の客室の設計にも活かされており、高温多湿な亜熱帯の環境対策なのです。

 竹富島で気づいたことが二つある。一つは、樹林を風が渡るときに樹林全体が同じ方向に一斉になびく美しさだ。それは枝先が柔軟な木が多いためとか、風になびかない針葉樹がないためなどと理由を考えたのだが、どうだろう。

 もう一つは夜の闇の優しさだ。八重山地方は「星空保護区」と聞いたので、あるいはそれと同じかもしれないが、ともかく島の夜の闇は温かく優しい。(ホテル内は)不粋な街灯もなく、けれども足もとには露地行灯式の灯りがあるので危険はなく、暗闇が大切にされていると解る。昼も夜も優しく美しい竹富島なのだと思った。

イラスト・文/小林泰彦


次のページ
『星のや竹富島』その2~島の方たちの無形の心が特有の美しさに

SHARE

AdvancedClub 会員登録ご案内

『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。

 

高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。

何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。

 

「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。

登録は無料です。

 

一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!