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今年で創業110年を迎えるイタリアの名門「マセラティ」は、1914年の創業以来、その高い技術力と芸術性で常に世界中のモーターファンを魅了し続けている。そんなマセラティが新たな軸足として投入した最新SUV「グレカーレ」の魅力を、ラグジュアリーカーメディア『AQ』とのコラボでお届けする。
自動車界において、イタリアの名門「マセラティ」は特別な存在だ。その名声の源は、110年を超える歴史に裏打ちされている。1914年、ボローニャに創業したマセラティは、創業者であるマセラティ兄弟の高度な技術力を背景に、数々の高性能ロードカーやレーシングマシーンを世に送り出してきた。
F1、インディ500やル・マン24時間レースといったトップカテゴリーで輝かしい戦績を残す一方、顧客の要望に応じたビスポークモデルも手がけ、テクノロジーと芸術性を兼ね備えた“走る工芸品”としての評価も確立。そのDNAは、大陸横断をも厭わぬグラントゥーリズモというジャンルを代表する存在として、今も息づいている。
もちろん、その輝かしい伝統の裏には、経営的な紆余曲折もあった。しかしその都度、マセラティを愛する人々の情熱によってブランドは蘇り、近年ではモデルレンジを拡充しつつ、確固たる基盤を築きつつある。その新たな軸足として投入されたのが、今回試乗した最新SUV「グレカーレ」だ。
マセラティによるSUVという新たなジャンルへの挑戦は、2011年のフランクフルトショーに出展したコンセプトカー「Kubang(クーバン)」から始まった。当初から明確だったのは、単なるSUVにはしないという意思だ。それを現実のものとしてラグジュアリーとパフォーマンスの融合をテーマに量産化されたのが「レヴァンテ」であり、さらにひと回りコンパクトかつダイナミックな一台として、2023年に日本上陸を果たしたのがグレカーレである。
そのデザインは、従来のマセラティ像を一新するものだった。フロントからリアにかけての流れは、実に滑らかで洗練されている。とりわけルーフラインは、美しきGTカーのシルエットを彷彿とさせ、SUVというより背の高いグラントゥーリズモの趣すら感じさせる。中央にトライデントを掲げたグリル、そして往年の名車「3200GT」をオマージュしたブーメラン型のテールランプなど、新しさと伝統が共存するディテールワークも魅力のひとつだ。
試乗したのは、その最上級グレードである「トロフェオ」。パワーユニットには、スーパースポーツ「MC20」と共通の3L V6ツインターボ“ネットゥーノ”を搭載する。この電動化の時代にあって、内燃機の可能性を信じ、あえて“鼓動”を残すという選択には、マセラティの信念と技術者たちの矜持が色濃くにじむ。
ステアリングに設けられたスターターボタンを押すと、一瞬の静寂の後、重厚なエグゾーストノートが低く響き渡る。最近では珍しくなったエンジンが目覚める儀式が、ここにはしっかりと息づいている。スポーツカー譲りのレスポンスと、現代的な洗練を共存させたそのフィールは、まさに成熟したマセラティと呼ぶにふさわしい。
今回の試乗は、いわゆるマジックアワーと呼ばれる薄暮の時間帯にスタートした。真夏の熱気がようやく和らぎ、街の喧騒が徐々に落ち着きを見せ始める。刻々と変わる周囲の色温度が、グレカーレの艶やかなボディに陰影を与える。その微細な変化に気づけるのは、五感が解き放たれるからだ。ナイトドライブにはそんな楽しみがある。グレカーレは街の変化に調和するように佇みながら、いつでも一歩を踏み出す構えを見せていた。
運転席に収まって感じるのは、視界の良さと車両感覚の掴みやすさだ。堂々たるワイドスタンスを誇りながらも、スタイリングの妙と高めの視点により、市街地でも運転に不安を覚えることはない。
ドライブモードを「コンフォート」に設定してスタートすると、エアサスペンションが路面の凹凸をしなやかに受け流し、530psを誇るエンジンも穏やかに脈打つ。音も振動も抑制され、車内には上質な静けさが満ちる。まさにラグジュアリーSUVらしい優雅なひとときだ。
一方でドライブモードセレクトを「GT」に切り替えると、足まわりにわずかな緊張感が宿り、操舵感にも芯が生まれる。ロングドライブ向けの安定性が高まり、車全体に“構え”が生まれる印象だ。そして「スポーツ」に入れると、眠っていた野性が一気に目を覚ます。スロットルレスポンスは鋭さを増し、排気音は咆哮へと変貌。車高も自動的に下がり、ドライバーとクルマがひとつの塊となって路面を駆ける感覚が訪れる。操る愉しみを強く喚起される瞬間だ。
個人的には、街乗りでは「コンフォート」、高速巡航では「GT」、そしてドライバーの集中力が高まるナイトドライブやワインディングロードなどでは「スポーツ」。この3モードを場面に応じて使い分けるのが、グレカーレの真骨頂だと感じた。他にも、悪路に対応する「オフロード」や、サーキット向けの「コルサ」モードも用意されているが、今回は出番がなかったから、また別の機会に堪能してみたい。
ゆったりと身を預けられるインテリアには、外観やその走りっぷりとは異なる静謐な空気感が広がる。水平基調のダッシュボードにデジタルインターフェイスが違和感なく融合し、操作性と美しさを両立。タッチスクリーンのメニュー構成や応答性も的確で、日常遣いのストレスは皆無だ。加えて、気分に合わせて選べるアンビエントライトが、夜のドライブに彩りを添えてくれる。
試乗車は、マセラティのカスタマイズプログラムで提供されている「フォーリセリエ・コルセ・コレクション」による特別仕様。深く艶やかな「ロッソ・グラントゥーリズモ」のボディカラーと、ブラック&グレージュの2トーンレザーにネイビーブルーのステッチが織りなす室内は、スポーティさのなかに穏やかな気品がある。ブラックアウトされたホイールの奥に覗くキャリパーの鮮やかさも、ディテールへのこだわりを物語っていた。ドライブモードにしろ、内外装のカスタマイズにしても、選択肢として豊富に用意されていることこそが、グレカーレの奥行きを物語っている。
こうして一晩をともにし、あらためて気づかされたのは、グレカーレは単なる高性能SUVではないということ。走りの実力、洗練されたデザイン、多彩なモード設定、すべてが高度に調和しており、どれかひとつが突出するのではなく、全体で“マセラティらしさ”を構築している。
クーバンに始まり、レヴァンテを経て結実した、マセラティによるSUV開発の集大成。それがグレカーレだ。際立つスタイリングと扱いやすいパッケージ、そしてブランドの矜持を余すところなく凝縮したこの一台は、走る時間帯も、行き先も、気分さえも選ばない懐の深さを持ち合わせる。どんな日常も、非日常に変えてしまう力を秘めたグレカーレは、乗る者に“移動”ではなく、“体験”を与えてくれる存在である。
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STAFF
Writer: Tsuneharu Kirihata
Photos: Hirohiko Mochizuki
撮影協力/横浜赤レンガ倉庫
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