「ダンロップ・シンクロウェザー」の雪国適応力

革新的新技術によってオールシーズンタイヤの“ネガ”を克服

サマータイヤとスタッドレスタイヤの性能を両立し、1セットで1年を過ごせるタイヤとして開発された「オールシーズンタイヤ」。その一方で冬タイヤとしては“凍結路に弱い”とか、サマータイヤとしては“乗り心地が悪い”など、いくつかのネガを抱え『完全なるマルチプレーヤー』と呼ぶには、役不足な存在とも言えた。それ故「降雪が年に1~2度の都市部に居住する人たちのもの」のように捉えられていた。そんなところに登場したのがダンロップ(住友ゴム工業)の「シンクロウェザー」と名付けられたオールシーズンタイヤ。その名の由来どおり「天候や路面状態の変化にシンクロして対応する」という画期的な技術を搭載したタイヤであり、1年を安心に過ごせると自信を示している。これが事実ならば、まさに理想の存在なのだが、果たしてどんなパフォーマンスを披露してくれるのか? その実力を探るために注意報レベルの降雪が続く、国道17号線の三国峠越えに挑戦した。

LIFESTYLE Feb 28,2025
「ダンロップ・シンクロウェザー」の雪国適応力

全方位に対応するオールシーズンタイヤの弱点……。

まだまだミニマリストに傾倒するほどの信念も決意もないが、都合のいい部分だけ“Simple is best”を気取りたい。そんな思いに至ったのは冬用タイヤの選択で悩んでいるときだ。本来ならば雪のない春から秋にかけてのシーズンは夏タイヤと呼ばれる「ノーマルタイヤ」を装着し、冬場は雪道や凍結路で本領を発揮する「スタッドレスタイヤ」に交換するのが最良だ。車のポテンシャルを安全に、そして最大限に発揮できる手段でもある。

ところが首都圏や中京都市圏、さらに大阪都市圏や九州南部など、冬場でもめったに雪の降らない地域に住むドライバーにとって、スタッドレスタイヤに交換することは色々な意味で負担になる。例えば夏タイヤ以外にもう1セット購入し、そのタイヤの保管、さらに秋と春にはタイヤ交換をしなければいけない。そうした負担を考えれば、ウインタースポーツにも行かず、めったに降雪地帯にも出掛けず、雪が降ったら車移動を諦める、といった決断ができれば、夏タイヤのままでも過ごせるかもしれない。

タイヤの画像
これまでは夏タイヤ1セット+スタッドレス1セット+チェーン規制用布チェーンという体制。保管スペースや秋と春の入れ替え作業などで少々面倒な状況だった。

ただ、ここで覚えておきたいことがある。それは雪道や凍結路を、滑り止めを装着せず、ノーマルタイヤのままで走行することは「沖縄県を除く46都道府県の条例」に反する行為となり、道路交通法違反だ。当然ながら外出先で突然の降雪によって路面に雪が積もれば、チェーンを装着するか、そのまま車を置いて帰宅せざるを得なくなる。

そうした色々な懸念に対処する事を考えると、「高速道路冬用タイヤ規制」でも走行可能であることを示す「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(以下、スノーフレークマーク)が与えられている「オールシーズンタイヤ」の存在が浮上してくる。冬専用のスタッドレスに比べればウエット性能は高く、ブレーキも効くし、ステアリング操作に対するレスポンスもいい。もちろん夏タイヤでは走れない圧雪路なども走行可能であり、1年を通して1セットのタイヤで過ごせる。冒頭のミニマリストを気取るならばオールシーズン一択が最善の選択かもしれないが、事はそれほど単純ではない。あのマイナンバーカードのように、利便性の陰には、同じだけの不都合が潜んでいる。

確かにオールシーズンならばタイヤ交換などいったストレスから解放される。ところが夏タイヤとしては、乗り心地が少し硬かったり、ロードノイズが高かったり……。一方で冬タイヤとしてのパフォーマンスをみれば「圧雪路はいいが、凍結路には弱い」というネガを抱えている。JAFによるツルツルの氷盤路での制動力テストでは「夏タイヤより少しマシ程度」という結果も出ている。その結果、凍結路では「推奨しない」とか「走行NG」といった評価が与えられている状況。もちろんタイヤのメーカーや銘柄によっても性能は異なり、必ずしもオールシーズンタイヤが劣っているということではないが、本格的な降雪や凍結路が日常の「雪国での使用には不向き」という認識が一般的だ。

そうしたオールシーズンタイヤの評価の中に登場したのが「天候や路面状態の変化にシンクロして対応する」という、画期的な技術を搭載したダンロップの「シンクロウェザー」だ。夏タイヤとしての操作性やブレーキ性能、快適性を備えつつ、冬になれば「凍結路でも使える」という、まさにオールマイティな性能を備えたオールシーズンタイヤだ。

ダンロップ・シンクロウェザーの画像
右が取り外した7分山のスタッドレス。まだ十分に使えるが「シンクロウェザー(左)」と入れ替える。シンクロウェザーはオールシーズンに多い「V字シェイプ」のトレッドを採用。

ふたつの「スイッチ」で変化する路面状況に対応

ダンロップ・シンクロウェザーで走行している画像
轍のできた圧雪路をシンクロウェザーのトレッドがしっかりと掴んで安定して走る。

投打二刀流で活躍するドジャースの大谷翔平選手をCMに起用して話題となっているダンロップの「シンクロウェザー」。オールシーズンタイヤの弱点を「アクティブトレッド」という新技術を搭載して克服。もしそれが事実であれば、まさに「二刀流」を実現したオールマイティな存在ということになる。ではいかにして“弱点克服”を成し得たのか?

ダンロップ・シンクロウェザーで走行している画像
水や温度に反応して「ゴムの性質」を瞬時に変化させる新技術「アクティブトレッド」を採用したオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。

ポイントはタイヤのゴム素材に「水スイッチ」と「温度スイッチ」という、ふたつのスイッチを組み込んだこと。といっても物理的なスイッチを入れたということではなく、ゴムの性質が「ある条件になると科学的に変わる」ことをメーカーは「スイッチ」と表現している。

例えば「水スイッチ」だが、トレッド面(路面と接する部分)が水に触れるとスイッチが入り、ゴム表面が柔らかくなる。それによって濡れた路面でのグリップ性能が向上。逆に乾燥するとポリマー同士が再結合してゴムの剛性が復活してサマータイヤと同レベルの剛性に戻り、ドライ路面では快適な乗り味を実現する。同時にそれは、一般的なスタッドレスタイヤが苦手としていた「ウエット路面でのブレーキング」や「剛性感の無さ」、「ノイズの大きさ」などといったドライ路面での弱点も克服したことになる。

つぎに「温度スイッチ」。夏タイヤは路面温度や外気温が下がるとゴムが硬くなり、路面とのグリップ力が低下する。ところがシンクロウェザーのゴムは低温になるとスイッチが入り、柔軟性を保ちながら雪上や氷上路面でも柔軟性を保ちながら路面をグリップする。これまで「圧雪路はいいが氷上性能は夏タイヤ並み」などと言われてきたオールシーズンタイヤだが、その“弱点克服”を成し遂げ、氷上での性能を大きく向上させたことになる。結果として「高速道路冬用タイヤ規制」でも走行可能な「スノーフレークマーク」だけでなく、氷上性能の基準を満たすことを示す「アイスグリップシンボル」も取得した。メーカーによればその氷上性能は「ひと世代前のスタッドレス以上」とも。もちろん常温になれば、一般的なサマータイヤと同レベルの快適な走りを保ちます。

このように水の有無や温度の変化に瞬時に対応できる新技術は「アクティブトレッド」と名付けられたのだ。さらにこのふたつのスイッチに加え、静粛性と排水性・排雪性を高いレベルで両立した新しいトレッドパタンを採用。二刀流どころかマルチプレーヤーとして、ドライ路面からウエット路面、そして圧雪路や凍結路までこなす、レスポンスのいいオールシーズンタイヤが実現した。ではその実力は? 2010年式MINIクーパー・クラブマン(前輪駆動)に装着されていたスタッドレスタイヤ(7分山ほど)を外し、「シンクロウェザー」の175/65R15サイズを装着。注意報レベルの降雪に見舞われた新潟を目指した。

ダンロップ・シンクロウェザーで走行している画像
左/「シンクロウェザー」には「M+S(右)」、「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(中央)」の他、凍結路に対応した証「アイスグリップシンボル(左)」も取得。なおオフロードSUV用タイヤなどには「M+Sのみ」というものがある。スタッドレスタイヤよりも雪道性能は低いため「通行には注意を促したい」とか「積雪量によっては通行できないことがある」といった場合もある。 右/都内のドライ路面では「快適なコンフォートタイヤ」として通用する乗り味。ステアリング操作や加減速でのレスポンスが自然でストレスは感じない。
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雪国の日常でも使えるレベルに仕上がっている

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