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金沢の溢れ出る魅力を再発見し、新たな化学反応に期待膨らむトークショーが開催された。今回のイベントを共催したのは、金沢のアイコンホテル「ハイアット セントリック 金沢」。人と人、人とアート、人と文化が交差する新たな旅に出会える場所だった。
大人が愉しめる週末トリップの新定番がある。加賀百万石の城下町として400年にわたって繁栄し、今も街並みにレトロな風合い残す古都 金沢だ。もともと北陸を代表する観光拠点であり、食も酒もうまく、粋人の隠れ家としても名を馳せていた。北陸新幹線で東京と2時間30分でつながり、紳士のふらり旅スポットとして金沢好きが急増。文学派には泉鏡花ゆかりの地として知られ、金沢にある3つの花街、にし茶屋街、ひがし茶屋街、主計町茶屋街、そのほかにも兼六園、近江町市場、金沢21世紀美術館、泉鏡花記念館といった見どころがツーリストを魅了する。
「金沢は街全体がコンパクト。そこに魅力が凝縮されています。隠し玉もまだまだいろいろあります」というのは金沢市出身で、アートクリエイティブ集団「モダニスアンドカンパニー」代表である山田健仁氏だ。
斬新なアイデアによってさまざまなビジネスを立ちあげてきた山田氏。ライフスタイルホテル「ハイアット セントリック 金沢」とのコラボレーションによって、金沢の秘めたるポテンシャルを「自然・アート・食」を通じて発信するイベント[「知性と感性の交差点」アーティスト・イン・レジデンス at 金沢]をスタートさせた。
4月21日に開催されたファーストイベントには、金沢初のスピリッツ蒸留所「アレンビック大野蒸留所」代表の中川俊彦氏、TikToker・モデル・元パラ競泳選手など多様な顔を持つインフルエンサー川原渓青氏、幅広い分野で活躍するTV・ラジオ パーソナリティーのクリス・ペプラー氏の3氏をゲストに迎え、金沢の魅力や、アート・ファッションなどをテーマにしたトークセッションが行われた。
ビール醸造家であった中川氏は、蒸留酒のジンに可能性を見い出し、2018年に神奈川県から金沢へ移住。醤油のまちとして有名な金沢市大野町に「Alembic蒸留所」を設立した。2022年8月にファーストバッチとなる「Alembic Dry Gin HACHIBAN」が完成。腕試しとして出品した世界的な酒類品評会「インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション2023」で最高金賞と、コンテンポラリージン部門No.1となる最高賞の「トロフィー」をWで受賞した。
「醤油醸造を支える霊峰白山からの伏流水がジンをつくる上で大きな魅力でしたね。蒸留所ではこの白山の水を湛えた井戸水を使用しています。ポタニカルのハーブなどは地産のもの。金沢にはジンを仕込む上で最高の環境が整っています。金沢は伝統工芸が盛んな土地柄であり、漆を使ったパッケージのデザインなどを職人さんと検討している最中です。今後は大人が楽しめるノンアルコール飲料の開発なども手掛けていきたいし、一つのゴールとして、大野町発のジンで世界に進出したいですね」と話す。
川原氏は事故で右脚膝下を失った時のことを追想。初めて義足の写真をインスタグラムで投稿した際に「かっこいい」というコメントをもらったことで、「義足を見てもらうことを武器にし、自分の強みにしたい」と考え、「0から1」の発想の転換ができるようになったと明かす。一方で、ファッションやアートにも造詣が深く、「工芸王国・アート都市」を掲げる金沢に注目しているという。
「『金沢21世紀美術館』は特別な空間ですね。考えや思想、社会へのメッセージを表現したアーティストの作品に触れることで大きな刺激を受け、新たな『0から1』のアイデアが生まれることを実感しました。長い歴史を誇る工芸やアートがありながら、決して新しい人流や芸術を拒まず、受け入れることで伝統をアップデイトする文化も金沢独特のものですね。ポジティブなマインドにならい、アジアを代表する義足のモデルとしてランウェイに立ちたい、障がい者の支援をしていきたいといった挑戦すべき未来図を具現化していければと思っています」
国内外の多くの都市で数えきれないほどの有意義な体験をしてきたクリス・ペプラー氏にとっても、金沢には他の場所にはない唯一無二の風土があると語る。
「金沢は都市IQが高く、人も街もゆったりしていて、気を使わず地元にいるような感覚で時を過ごすことができます。特に人々の洗練された距離感と街並みの美しさ、土地の持つ澄んだ空気感は大好きですね。街としてのバランスがとれているからとても居心地がいい。一度訪れた外国の友人たちももう1度訪れたいといっていますし、ツーリストの知らないスポットもまだまだあるので、来るたびに新しい期待感がふくらみます」
今回のプロジェクトをリードした山田健仁氏は、香港にある外資系金融企業に勤務し、長く富裕層向けのウェルスマネジメントに携わった人物だ。2019年に帰国すると、キャリアをいかし、2020年、アートや食に関するPR・マーケティング会社「モダニスアンドカンパニー」を設立。「日本の美しさを再認識する瞬間を。」をテーマに、さまざまなラグジュアリーメゾンやクライアントと協業。日本のラグジュアリー文化の再構築に注力している。
「日本のラグジュアリーマーケットは、表層上の華やかさを追求し、高額であることに何より価値を見いだす傾向があります。海外の富裕層は歴史や文化に造詣が深く、学びを通じて審美眼を養っていく。価格ではなく価値が基準であり、価値があるから投資をする、商品を買うというスタイルです。日本にも価値主体のマーケットを根付かせたい。そんな思いからスタートアップしました」(山田氏)
意識を変えるため、山田氏が重視するのは“情緒的価値”と“機会的価値”だ。
「文化は伝統と継承の2面を持ち合わせています。“継承”は文字通り受け継いでいくもの。“伝統”は先人の叡智にリスペクトをしながら、各時代のアーティストの情熱やアイデアが加わって進化をしていくもので、そこに新しい情緒的価値が生まれます。アートを見て素晴らしいと感じ、料理を食べておいしいと感じるような、心の琴線に触れる、感動に近いものかもしれません。機会的価値とはアーティストが世に出るためのチャンスを提供することです。日本には素晴らしいアーティストがいるにもかかわらずそれをサポートする土壌がありません。私たちがサポートすることでアーティストは創作活動に専心できる環境を造成し、同時に顧客の豊かさを高めることにもつながります。新しいラグジュアリー文化の創造に一石を投じることができれば、うれしいですね」(山田氏)
[「知性と感性の交差点」アーティスト・イン・レジデンス at 金沢]は、こうした山田氏の考えをもとに、金沢の伝統を守りつつ、新しいアクションを起こす石川県や金沢発の衣食住に関わる革新的なブランドとのセレンディピティを創出するイベントだ。
「年間を通じて、様々な分野の第一線で活躍するアーティストの方々をゲストにお招きしていきたいと考えています。このイベントは、穏やかな気持ちで新しい叡知と向き合い、心と体に向き合うための余白とも言える時間をもたらします。平坦なラグジュアリーだけではなく、「知的」にも満たされる瞬間を感じていただきたいと願うのです。豊かな現代性と、由緒ある伝統が交じりあう新しいイベントです。次回もぜひご期待ください。」(山田氏)
山田氏が[知性と感性の交差点]で求めるものは、人と人がまじわることで生じる化学反応的な変化だ。金沢に新しい何かがが起こることを楽しみに、今後もイベントは続いていく。
STAFF
Writer: Masahiro Ando
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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