トータルビューティクリエイター・川邉サチコさんの創作アーカイブを現代美術へと昇華

本誌でもおなじみのトータルビューティークリエイター・川邉サチコさんのこれまでの創作活動が、気鋭の現代美術家によって、新たなモダンアート作品に。「伊勢丹新宿店 本館6階 アートギャラリー」にて開催される、注目の個展をご紹介。

LIFESTYLE Oct 7,2026
トータルビューティクリエイター・川邉サチコさんの創作アーカイブを現代美術へと昇華

現代美術家の池田健(いけだたけし)が、新たなアーカイブ・プロジェクト「AWAI PROJECT」を始動。その第一弾として、本誌にも何度も登場している、トータルビューティークリエイター・川邉サチコさんの、これまでの撮影資料・印刷物などを、池田が再構成した新作6点が「伊勢丹新宿店 本館6階 アートギャラリー」にて開催の個展「TIME WORN」において、2026年10月7日(水)~13日(火)に初公開される。

東京を拠点に活動するアーティストの池田は、その制作活動において、葉巻に巻かれていたシガーリボンやシガーバンドを解体、異なるブランドの歴史や文化的記号を再構成する作品などを発表してきた。それぞれに異なる土地・交易・制度・ブランドの記憶を背負った素材を切断し、新しい関係性の中へ配置する。その制作行為を、池田は単なる素材の集合ではなく「編集」ととらえている。

《Invisible Archive》見えない記録の画像
《Invisible Archive》見えない記録 2026年、H 910 × W 727 mm © Takeshi Ikeda

今回の「AWAI PROJECT」では、その方法を、ファッションと美容の歴史を生きてきたひとりの人物のアーカイブへと拡張。外見上は異なる素材であっても、歴史や文化の断片を解体し、異なる時間を再接続するという方法は共通している。「AWAI」は日本語の「間」に由来し、過去を復元するのではなく、過去と現在の間に新しい秩序をつくること、それが「AWAI PROJECT」の核となる考えで「創造する人々が残した痕跡を、過去の記録として閉じるのではなく、未来に向かって再び動かしていきたい」と池田は語っている。

川邉サチコさんは、トータルビューティークリエイター、ヘアメイクアップアーティスト、美容家、そして、商品デザインプロデューサーとして、日本のファッション、美容、広告、表現文化の発展・形成にたずさわり続け、大きな足跡を残してきている。そしてその長きにわたる活動の周囲には、完成した写真や仕事の記録だけでなく、撮影資料や印刷物、設計図、試作資料、メモ、人物写真など、数多くの断片が残されている。

それらは本来、作品になることを目的として生み出されたものではないが、そのひとつひとつには、時の流れとともに、美意識、身体感覚、時代背景などが刻み込まれている。池田はこうした資料を、過去の証拠として保存するのではなく、現在から読み直すための素材として扱っている。人間の創造的な営みの周囲に残された痕跡を、一次素材としてとらえ、それらを発見し、解体し、再編集することで、新たな作品として、未来へ接続していく試みだ。

《We Agree》同意 の画像
《We Agree》同意 2026年、H 1,303 × W 894 mm © Takeshi Ikeda

今回の6作品において、人物写真は切断され、複数の層に分けられ、透明フィルムを介して人物・文字・図面を重層化して重ね合わせ、写真や印刷物を異なる文脈の中へ再配置し、さらに、金糸や銅鋲によって物質的な緊張が加えられている。鑑賞者は、その内容を一度に読み取ることができず、見ようとするほど別の層が現れ、理解しようとするほど像が分断されていく。この遮蔽と断片化は、記憶の不完全さを示すだけではなく、過去を現在の価値観だけで簡単に回収し、説明しつくすことへの抵抗でもある。  

《chigaya》の画像
《chigaya》2026年、H 910 × W 727 mm © Takeshi Ikeda

こちらの作品、《chigaya》は、川邉サチコさんの娘の美木ちがやさんが、これまで個人的に大切に保管してきた写真や資料をもとに、制作されている。親子の写真、人物像、文字や記録は、切断され、再配置され、透明フィルム、銀糸、銅鋲によって、複数の時間がひとつの画面に重ねられている。タイトルは母から娘へ語りかける言葉であり、個人的な記憶として守られてきた資料が、母と娘の関係を媒介にしながら、ファッションや美容という社会的な記憶へ接続されていく。「AWAI PROJECT」が扱う「個人と社会」「記録と作品」「保存と変容」の「間(あわい)」を、親子という最も私的な関係から可視化する試みの本作をはじめ、かずかずの「AWAI」を体感しに、ぜひとも訪れてみたい。

池田健の画像
PROFILE
現代美術家
池田健/Takeshi Ikeda

1979年生まれ。東京を拠点に活動する現代美術家。シガーリボン、葉巻木箱、銅鋲、金糸など、歴史や文化的背景を持つ素材を解体・再構成し、平面作品、立体作品、インスタレーションを制作している。キューバ・ハバナの「ヴィフレド・ラム現代美術センター」に作品が収蔵されているほか、ハバナの「Cesar Jazz Club」には全長約5メートルの作品が、また、東京・西麻布の「Cigar Club Tokyo」、恵比寿の「Bar Panacee」、京都・祇園の「Cigar Bar SUI」などに作品が常設展示されている。JPS Gallery所属。

池田健 個展「TIME WORN — 時間を纏う」の画像

池田健 個展「TIME WORN — 時間を纏う」

会期:2026年10月7日(水)~10月13日(火)
時間:午前10時〜午後8時[最終日午後4時終了]
(※会期中、作家全日在廊予定 )
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 アートギャラリー

お問い合わせ

E-mail: ikedat0620@gmail.com / Instagram: @takeshy620
Artist Information: jpsgallery.com/artist/takeshi-ikeda/

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