特別仕様は見応えあり！豊作だったアニバーサリーエディション

2025年はアニバーサリーの「当たり年」となった。多くのブランドで周年モデルが目白押しで、秀作が相次いだ。アニバーサリーエディションは、大まかに分けると、時計ブランドの創業年、コレクション誕生の周年が中心で、ほかにもイベントごとの周年や創業者の誕生年の周年などがある。もはやひとつのジャンルとして確立しているといっても過言ではない。

アニバーサリーに合わせてヒストリーを振り返れば、さらなるファンの獲得にも繋がるだろう。長い歴史があるということは、その時計が信頼され、長年売れ続けてきて、そしてその分だけ技術力やノウハウが蓄積されていることを意味する。積み重ねてきた年月は、時計ブランドにとってとても大きな財産なのだ。

アニバーサリーに備えて何年も前から入念に準備をするブランドは多いから、力作揃いなのは必然だ。コレクションの誕生を記念したアニバーサリーであれば、そもそもロングセラーモデルであるわけなので、特別仕様で誂えれば注目を集めるのは間違いない。

そんな各社渾身のアニバーサリーモデルを見ていこう。

VACHERON CONSTANTIN

創業270周年の老舗が放つ特別仕様の定番モデル

2025年に創業270周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタン。年初からかつて創業222年を記念して発表した「222」をヒストリーク コレクションからステンレススティールで発表し、ウォッチズ＆ワンダーズ ジュネーブでの新作も期待が高まっていた。サロンの幕が開くと、定番モデルのアニバーサリー仕様、特別なコンプリケーション、ヴァシュロン・コンスタンタンがかつて工房やブティックを開き、メゾンにとってゆかりの地である“トゥール・ド・リル”をモチーフにしたアートピースだったりと、ブランドの魅力を多角的に表現したタイムピースを揃えた。

その中も「トラディショナル」モデルに注目したい。同じドレスウォッチとして双璧をなす「パトリモニー」が1950年代以降のスタイルをモチーフにしているのに対し、「トラディショナル」は1930〜1950年代のスタイルがモチーフ。2007年に「パトリモニー」から独立した、より正統派クラシックなコレクションだ。

270周年モデルでは、文字盤にメゾンを象徴するマルタ十字から着想を得た幾何学模様の装飾が特徴。7時と8時位置の間に配置したマルタ十字から影が伸びるように、ミニッツトラックや6時位置のスモールセコンドにも溶け込む独特な装飾を施した。シースルーバックから見えるムーブメントには、通常コート・ド・ジュネーブ仕上げのところ、特別なコート・ユニーク仕上げが施され、マルタ十字と「270」が組み合わさった特別なエングレービングが刻印される。またベースは従来と同じキャリバー4400だが、テンプ受けが両持ち式にブラッシュアップされ、フリースプラングテンプに変更されているところも注目だ。

ZENITH

鮮烈なブルーをまとう160周年アニバーサリーモデル

ゼニスはパイロットコレクション、デファイ スカイラインコレクション、そしてクロノマスタースポーツ コレクションのピラーコレクションに、シグニチャーカラーであるブルーのセミラックをワントーンで配したアニバーサリーエディションを発表。創業160周年をカラーによって強烈なインパクトを残した。

中でも注目なのは、長らくゼニスを支えてきたクロノマスターにスポーティな要素を加えた「クロノマスタースポーツ」。同コレクションとしてセラミックケースは初の採用で、ケースはもちろん、ベゼル、ブレスレット、リューズやプッシュボタンまで鮮やかなブルーセミラックをまとった。ベゼルはポリッシュ仕上げ、ケースやブレスレットはサテン仕上げとポリッシュ仕上げを使い分けて、立体感を際立たせた。発表された3種類のアニバーサリーモデルの中で最も仕上げに手間がかかっていそうだ。文字盤は同心円状に溝が施されたコンセントリック加工の3色のインダイヤルを配し、モダンなデザインに仕上げている。

搭載されるのは、伝統的なゼニスのクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」の進化版であるCal.エル・プリメロ3600。10秒で1回転するセンタークロノグラス秒針で1／10秒を計測できるハイビートクロノグラフだ。シースルーバックからは、160周年であることを示す特別仕様のローターを確認できる。

ROGER DUBUIS

創業者にオマージュした独自のレトログラードウォッチ

今年で創業30周年を迎えたロジェ・デュブイ。

アニバーサリーを銘打ったモデルはないものの、創業者ロジェ・デュブイ氏が好んだ機構であるバイレトログラード表示の新作を発表し、その節目を祝った。レトログラードとは針が円運動するのではなく、針が扇状に動作して端に達すると瞬時にジャンプして０に戻る機構で、ダブルレトログラードとはその扇状が２つ備わっているということ。

レトログラードは3時位置に日付、9時位置に曜日を表示するデイデイト表示を備え、楕円形のモダンなデザインが特徴的。文字盤は立体的な多層構造にして、上下にマザー・オブ・パールを部分的にはめ込み、デイデイトのゴールドの表示プレートとともに華やかさを演出する。

シースルーバックから見えるムーブメントにはロジェ・デュブイが一貫してこだわってきた厳しい品質基準をクリアしたジュネーブ・シールを刻印。その外周部にはロジェ・デュブイの共同創設者ふたりの時計に込めた思いが刻まれている。

HUBLOT

独自スタイルを確立させた「ビッグ・バン」の20周年を祝す

“アート・オブ・フュージョン（異なる素材やアイデアの融合）”というコンセプトを生み出し、時計業界に異素材ミックスの旋風を巻き起こしたウブロの「ビッグ・バン」が誕生から20周年。この20年の中で時計史に残るような斬新なアイデアを取り入れた5種類をピックアップしてオマージュしたのがアニバーサリーモデルだ。最初の「ビッグ・バン」から素材がアップデートした「チタニウム セラミック」と、赤みを帯びたオリジナルの18Kゴールドを使用した「キングゴールド セラミック」、独自の研究・開発により誕生したカラーセラミック「レッドマジック」、ブラックスタイルを流行させた「オールブラック」、傷つきにくい18Kゴールドを使用した「フルマジックゴールド」で、それらをモチーフにして現代的にアップデートさせた。

取り上げるのは、「ビック・バン 20th アニバーサリー チタニウム セミラック」。セミラックベゼルのエッジはローレット加工など施すなど初代「ビック・バン」のディテールを採用しながら、ケースはステンレススティールからチタンへとアップグレード。また当時はまだ登場前だった自社製のウニコムーブメントを搭載する。裏から見えるムーブメントは20周年仕様のゴールドローターで特別感を演出する。

TUDOR

ディテールをオマージュした初代クロノ誕生から50周年

チューダーのクロノグラフといえば、現在は2017年に誕生した「ブラックベイ クロノ」。しかし歴史をさかのぼれば、1970年にブランド初のクロノグラフ、「オイスターデイト」を発表し、モータースポーツの世界で密接に関わりをもってきた。そうしたことから、チューダーのクロノグラフは誕生から今年は55年目にあたる。当時は汎用ムーブメントが搭載されていたが、現在ではハイスペックな自社製ムーブメントに切り替わっている。

新型の「ブラックベイ クロノ」はアニバーサリーとは銘打っていないが、随所に初期のクロノグラフのディテールを取り入れている。3時位置にはあまり見かけない45分積算計や6時位置のカレンダー表示、クロノグラフのプッシャーのデザインなど、当時のスタイルを彷彿とさせる。

ブレスレットは、1950年代から60年代にかけて製造していた、リンクを繋げるリベットヘッドがブレスレットの側面に見られる「リベットスタイル」の3列ブレスレット。また新たに加わったドレッシーな印象を与える5列ブレスレットも用意。それらには8mmの長さを5段階で調整できる“T-fit”クイックアジャストクラスプが採用される。