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人類初となる月面着陸から半世紀。いまだ人類は月への飽くなくチャレンジを試みる。 月には一体何があるのだろうか。オメガが企画したイベントで月面着陸に携わった男たちが集った。彼らの言葉にヒントがあるのかもしれない。
イーロン・マスク、前澤友作、堀江貴文……事業を成功させ、富を得た男たちはなぜか月へと行きたがる。月には男を惹きつける何かが潜んでいるようだ。半世紀前、月に降り立った男と、それを支えた男たち。彼らの声にその答えがあるのかもしれない。
時は1969年7月20日20時17分(協定世界時=UTC)、ドイツ人技術師ウェルナー・フォン・ブラウンの手に端を発すサターンV型ロケット、アポロ11号の月着陸船イーグル号は人類初となる月面着陸に成功した。船長ニール・アームストロングは7月21日の2時56分15秒 (UTC)に月面に降り立った最初の人物となり、その19分後に月着陸船操縦士バズ・オルドリンが続いた。二人は約2時間15分を共に船外で過ごした。
アポロはどうして誕生したのか。アメリカはなぜ月を目指したのか。そこには当時の国の威信をかけた軍事や国策的な流れもあるのだが、それ以上に我々は命がけのミッションと、それを支えたドラマに熱い思いを抱かずにはいられない。
人類初となる月面着陸から50年が経った。それを記念して去る5月9日(米国時間)、フロリダ州にあるケネディ宇宙センターでイベントが開催された。そこには往年のNASA宇宙飛行士であるチャールズ・デューク、トーマス・スタッフォードらが集い、当時の思いを語った。
男たちの2019年現在の言葉に耳をかたむけると、前述の成功者たちがなぜ月を目指すのかがわかるかもしれない。そう、そこには冒険、ロマン、夢があり、富だけでは達成できない、何か奮い立つ思いを抱かせるのだ。我々の月はどこにあるのだろうか。
5回のアポロ計画に従事し、アポロ16号では月着陸船パイロットとして、月のデカルト高地に降り立ったチャールズは、アポロ11号の月面着陸に際して、「着陸の際のコントロールセンターの緊張感は、常軌を逸すほどだった」という。自らのチェックリストを時間通りに進めていくことは非常に大切で、ロケットのエンジン噴射には秒単位での計測が必要だった、とも。さらに、自身が月へ向かったときの思い出として、「忘れられない思い出が二つあります。一つ目は上空3万kmから眺めた地球。それは息をのむようなもので、宇宙の暗闇のなかに美しい球体がつるされているようでした。二つ目は、月面の非常に荒れた場所に着陸したこと。平坦な場所を探し出すのは至難の業でした」1972年にアポロ16号で月を歩いたチャールズは、当時も今も最年少の人物であり、71時間14分の月面滞在中に、家族の写真を残してきたことでも有名だ。
宇宙服を着て、聴衆に手を振り、エレベーターに乗り、ロケットに上がっていく時間をとても長いものに感じたというバズ。発射後、外を見て、太陽が昇り、ロケットから霜が剝がれ落ちていくのを眺めながら、この瞬間、瞬間を胸に刻んだとも。さらに、「スタートがどこであれ、人はより遠くに向かいたいと思ってきました。ある時は海の向こうにあるものを発見したいと考えました。地球が平面でないことを知ると、その先にあるものを見たいと思ったのです。そして我々は空を見上げたものです。プロペラ機が完成し、その後ロケットが月に到着しました。月計画ではとてもよい仕事を成し遂げたと思っていますが、いま私たちが目ざしているのはさらにその先なのです。たとえばこのように表現できます。挑戦(EXPLORE)しなければ、期限切れ(EXPIRE)になってしまう。どちらを取るかは自分次第だと」と人類に冒険が必要な理由を語った。
ジェームスは月には行っていない。しかし、彼ほど宇宙計画において重要な人物はいないかもしれない。なぜなら、月へ行く際の装備品を承認する任にあったのだから。そのなかで誕生した伝説がムーンウォッチこと『オメガ スピードマスター』だ。極端な温度、真空状態、湿度、腐食、衝撃、振動、加速、圧力など11のテストを国内外の時計に課したという。すると……「これほどテストをパスする時計があるのかと、私自身も驚くほど厳しいものをこの時計はクリアしたのです。宇宙船に装備した時に起こりうるすべての環境を試しました。それは困難極まりないものであり、とくに時計に課せられたテストは最も過激なものでした」。そのなかから『オメガ スピードマスター』だけが、テストをクリアしたのだ。「当時は誰もが時計をしていました。しかし、宇宙飛行士が時計に求めたのは任務に対する時間を正確に計ることだったのです。地上から時を告げられなくなったら。デジタルタイマーが故障したら……頼りになるのは自身の腕にある時計だけなのです」。
1969年のアポロ10号で月を周回し、後の11号の月面着陸への最終リハーサルを行ったトーマスは、最初に月を見た時をこう振り返った。「4~5万マイルまで月に近づくと月食を少し見ることができました。その後、太陽が沈むと、上空には闇が広がるばかりでした。そのうち、地球が見えなくなり、漆黒のなかにたたずんでいるような感じでした。すると突如、私たちの眼下に月が現れたのです。あの瞬間は絶対に忘れられません」と語った。さらに。宇宙で重要なことは、「飛行計画と軌道を計る上で基本となるのが時間です。私は2種類のオメガを携行していました。一つはミッションの経過時間を示すもの。もう一つはヒューストン時間を示すものです」。また彼は、アポロ・ソユーズテスト計画において、アポロ側の船長を務め、ソビエト連邦の宇宙飛行士と宇宙空間で史上初めて会った一人でもある。
初めて月へ行った腕時計「オメガ スピードマスター」。その完成は1957年まで遡る。黒い文字盤、視認性を高めるブロードアロー・ハンドを持つこのクロノグラフがなぜNASAの公式装備品として月へ行ったのか。1964年、オメガを含む10社に宇宙飛行および宇宙空間で耐えうるクロノグラフの提案をNASAはオーダーした。その内、条件を満たす3社のクロノグラフが選ばれたという。さらにその3本には過酷なテストが待っていたが、すべてをクリアしたのは「オメガ スピードマスター」だけだった。その後の1969年にアポロ11号に乗ったアームストロングとオルドリンの腕により月面へ降り立った「オメガ スピードマスター」。それから6回におよぶ月面着陸すべてにも携帯された。
そんな伝説のムーンウォッチが最初に月にふれた年から50年を記念し、リミテッド エディションが登場した。これは1969〜1973年にかけて1014本限定で作られた18Kイエローゴールド製(’69’年11月に開催された晩餐会で宇宙飛行士たちに贈呈された)モデルのデザインを踏襲している。今回も1014本の世界限定である。この時計にロマンを感じずにはいられない。
1969年のリミテッドモデルは一般販売もされたが、当時、非常に入手困難だった。現在はもちろんおいそれと見ることすら難しいだろう。今回の限定モデルは、第4世代のスピードマスターをベースに、42㎜のケース、1列が5つのアーチ形リンクからなる当時のブレスレットのデザインを採用。サイズ:径42㎜、厚さ13.08㎜ムーブメント:手巻きCal.3861(マスタークロノメーター認定)、パワーリザーブ50時間1014本世界限定。2019年7月発売予定。
50年間で技術はより進化。それを証明する新作はバーガンディのセラミック製のベゼルリングを採用。セラゴールド™でタキメータースケールを施している。
ドーム型の月の隕石(本物)をはめ込んだケースバックには、1969-2019やAPOLLO 11-50th ANNIVERSARYなどスペシャルな文字が刻まれる。
左/人類史上初めて月へと降り立った時計を継承する定番のモデルが「スピードマスター プロフェッショナル」だ。
右/定番モデルをベースに、タキメーターなどにムーンシャインゴールドを用い、さらにインダイヤルにオルドリンがイーグル号のタラップから降りる瞬間を配したスぺシャルモデル。6969本世界限定。
文字盤やベゼルリングのブラックに映えるムーンシャインゴールド。インダイヤルには月へ降りるオルドリンが!
初出:2019年06月29日発行『AdvancedTime』Special Issue 01号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Editor: Takashi Ogiyama
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