独自のミックス感が魅力の『マクシズ・トウキョウ』

『マクシズ・トウキョウ』の外観の画像
小川町、靖国通り南側の路地の一角にある『マクシズ・トウキョウ』。知る人ぞ知る立地だが、ウインドーは大きく、さまざまな服が並ぶ様子が道からも窺える。

9月15日でオープン3周年を迎えるという、小川町のメンズウェアショップ『max’s Tokyo(マクシズ・トウキョウ)』。取材にご対応いただいたのは、同店を運営する株式会社マクシズの代表取締役、近谷忠信さん。現在小川町と恵比寿の2店舗を展開しているが、この『マクシズ・トウキョウ』は、近谷さんが独立して構えた初めての店という。

『マクシズ・トウキョウ』店内の様子の画像
『マクシズ・トウキョウ』店内の様子。「ストックスペースが少ないので、かなり店頭に出しています」と近谷さん。その密度が魅力でもある。

北海道・函館出身の近谷さん。中学生の時、地元の古着店でバイカーの先輩たちの薫陶を受け、アメリカンな古着の魅力に開眼した。その後18歳で上京、洋服店勤務など、複数のアルバイトを掛け持ちをしながら、稼いだお金を全部服に注ぎ込んでいたという。そんな生活を2年間過ごしたのち、札幌のセレクトショップ『arch(アーチ)』などを運営するミサンガインターナショナルに加わった。「28歳~30代になるまでに独立したいのでそれまでよろしくお願いします、と言って、雇っていただきました」と近谷さん。札幌の“アナトミカ”での勤務の後、前言通り独立し『マクシズ・トウキョウ』をオープンさせたのだった。

ドイツのブランド“FRANK LEDER(フランク レーダー)”の画像
近谷さんが札幌の『アーチ』で働く頃から親しんできたというドイツのブランド“FRANK LEDER(フランク レーダー)”。『マクシズ・トウキョウ』では毎シーズン取り扱っている。

「この店をオープンする前は、東京の商圏について、実はよくわかっていなかったんです」と話す近谷さん。東京に住んだ経験はあっても、直前まで札幌で働いていたこともあり、都内のどのような地域に出店すべきか、明確な方向性はなかったという。「歩きまわることができて、渋くてかっこいい街がいいなと思っていて。1階の路面で、ウィンドウがあってディスプレイを見せられる物件を探していたらちょうどここを見つけました。神保町は古本が多くあって、喫茶店やカレー屋さんなどもあり、あまりガヤガヤしていない。ここはいけそうだな、と直感したのです」(近谷さん)。

左/バッファローチェックのネルシャツに“BARRY BRICKEN(バリー・ブリッケン)”のチノパンというアメリカントラッドな組み合わせ 右/ヴィンテージのウエスタンブーツに“ターンブル&アッサー”のドレスシャツ、そして『TAKE IVY』の画像
左/バッファローチェックのネルシャツに“BARRY BRICKEN(バリー・ブリッケン)”のチノパンというアメリカントラッドな組み合わせも、『マクシズ・トウキョウ』の店内だと一味違う印象に。 右/ヴィンテージのウエスタンブーツに“ターンブル&アッサー”のドレスシャツ、そして『TAKE IVY』。服遍歴を重ねた人ほどニヤリとする組み合わせ。

『マクシズ』という店名は、1960年代~70年代のニューヨークの音楽シーンで重要な役割を果たしたヴェニュー『Max’s Kansas City(マクシズ・カンサス・シティ)』からとられている。「造語も考えてみたんですけどなんかしっくりこなくて。『マクシズ・カンサス・シティ』周りのカルチャーと服をリンクさせた時に、圧倒的にかっこよくて自由だなと思って、ズバリその名前で行こうと思いました。パンクからルーツミュージック、ハードロックなどまで、いろいろなジャンルのアーティストが活躍した文化を洋服で表現したかったんです」。近谷さんのこの言葉を反映するように、『マクシズ』店頭では、ジャンルやテイストも多岐に渡る服が展開されている。

左/デザイナー郷裕一のブランド“NICENESS(ナイスネス)”のジャケット、英国“ターンブル&アッサー”のヴィンテージドレスシャツ、アメリカのアンティークネックスカーフ、“リーバイス”のファクトリーで生産したオリジナルのウエスタンパンツ、アメリカ“アクメブーツ”のヴィンテージウエスタンブーツ。 右/生地にオーストリア製ローデンクロスを使い、“リーバイス”に別注したパンツの画像
左/「うちらしいスタイル」と挙げたコーディネイト。デザイナー郷裕一のブランド“NICENESS(ナイスネス)”のジャケット、英国“ターンブル&アッサー”のヴィンテージドレスシャツ、アメリカのアンティークネックスカーフ、“リーバイス”のファクトリーで生産したオリジナルのウエスタンパンツ、アメリカ“アクメブーツ”のヴィンテージウエスタンブーツ。 右/生地にオーストリア製ローデンクロスを使い、“リーバイス”に別注したパンツ。

「このスタイリングはジャケットが“ナイスネス”、中のシャツは英国“ターンブル&アッサー”のヴィンテージ、アメリカのアンティークのネックスカーフ、ボトムスがうちの別注“リーバイス”ウエスタンパンツ、そして足元が“ACME”のウエスタンブーツです」。これは「うちの感じがよく表れているもの」と近谷さんが示した店内のディスプレイのひとつ。アメリカに限らず日本や英欧の服を交え、現代のブランドとヴィンテージ、多様なテイストがミックスしたものが、『マクシズ』の打ち出すスタイルということだ。特筆すべきは、“リーバイス”に別注したパンツ。「生地はオーストリア製のローデンウール(ブラック)を使って、オニキスのボタンをつけています。シルエットはフランスの古い礼服のトラウザーズをもとにしたストレート。そしてUSメイドです。うちではユニフォームとしても使っています」(近谷さん)。まさに『マクシズ トウキョウ』を象徴するアイテムといえるだろう。

左/パリのブランド“Morgane Krischer(モーガン・クリスチャー)”のコート。 右/『マクシズ・トウキョウ』を運営する株式会社マクシズの代表取締役、近谷忠信さんの画像
左/パリのブランド“Morgane Krischer(モーガン・クリスチャー)”のコート。カラーはデタッチャブルになっている。高度なテーラリング技術を感じる一着。 右/『マクシズ・トウキョウ』を運営する株式会社マクシズの代表取締役、近谷忠信さん。『マクシズ・トウキョウ』のバイイングは近谷さんが行っている。

「当店のお客さまは20代から70代まで幅広くいらっしゃいますが、中心は30代~40代後半の世代ですね。全身アメリカンヴィンテージということではなく、例えば良質なトラウザーズとウエスタンブーツを合わせて、そこに自分の好きなヴィンテージのアイテムをひとつ取り入れるような価値観の方が多いように思います」(近谷さん)。ドレッシーな服とアメリカンな感覚のアイテムとの組み合わせは、近谷さんの意図するところでもあるようだ。彼は今後の展開を、次のように語った。「お店は現状のこの『マクシズ・トウキョウ』と恵比寿の2店舗から増やさずに、各店舗でよりかっこいいものを、深掘りしていきたいと思っています」。

『マクシズ・トウキョウ』のキャノピー(庇)の画像
『マクシズ・トウキョウ』のキャノピー(庇)。ブラック地にホワイトロゴが印象的。小川町の雑居ビルの間を穿つように伸びていた。

両店は現在さまざまなメディアで、神保町を代表するファッションの担い手として紹介されている。彼らはいずれも、自分たちにとって理想的な店舗を可能にする場を追い求めて、半ば偶然に近い形で、外部から神保町にたどり着いたように見える。そして両者とも、古書を含む書籍の集積や、喫茶店やカレー店などの個性的な飲食業の存在が、自分たちが表現しようとしているスタイルにプラスの効果があると話す。服などとは一見関わりがない要素こそが、ファッションを扱い、自らの個性を顧客に伝えるためには重要であるという感覚。これは何もファッションを提供する側に限らず、ファッションを享受し楽しむカスタマーサイドにおいても、有効な視点とはいえまいか。感性を、知性を働かせて、街の文化との関連からファッションを捉え直してみる。そんな姿勢から、トレンドやブランドが動かすファッションとはひと味違った、装うことの楽しさや喜びが得られるかもしれない。

Mr. IVY Kros Toshiyuki Style Book(小学館スクウェア・刊)
Mr. IVY Kros Toshiyuki Style Book(小学館スクウェア・刊) アイビーにいち早く注目し、VAN等のブランドを通じて啓蒙したリビング・レジェンド、くろすとしゆき氏の集大成。半生から愛用品、また旅の記録など、永遠に残しておきたい宝モノが詰まっている。https://shogakukan-square.jp/publish/books_archive/4578/

このように多様な文化と連関しながら、独自の個性が華開く神保町。そして、この街で、自己表現を本にして世に問う“究極の贅沢”=自費出版をサポートする、もうひとつの磁場として、この街に1969年に創業し、『知的好奇心』を形にしてきた出版社、小学館スクウェアを紹介しておきたい。小学館スクウェアは、AdvancedTimeを発行する小学館のグループ会社で、個人、法人を問わない自費出版、カスタム・パブリッシングの編集・制作をはじめとし、多くの表現者をサポートしてきた実績を持つ。上写真で紹介している『Mr. IVY』も、小学館スクウェアの編集によるカスタム・パブリッシングだ。近年は、自費出版をより手軽に実現させるため、『誰かが持ち歩く、あなたの物語。』というキャッチコピーで、2026年4月には「小学館スクウェア新書」「小学館スクウェア文庫」シリーズを立ち上げた。自分の得意分野について考えを広めたい人、創作した物語や自伝を本にしたい人(など)、様々なニーズに応えた本づくりを行っている。

ファッションも、知的好奇心から生まれる人間の営為である。感性や知性を働かせて、街の文化との関連からファッションを捉え直すにあたり、知の集積を誇る神保町は、うってつけの場所でもある。本作りの街、本を求め歩く街に、ファッションという新しいアングルが増えたことで、神保町の魅力はさらに増していく。

小学館スクウェアから、新書・文庫サイズの新シリーズがスタートした画像
より多くの読者に著者の想いを届けようと、小学館スクウェアから、新書・文庫サイズの新シリーズがスタートした。自費出版をより手軽に、かつクオリティはそのままに展開する。
お問い合わせ先
MAIDENS SHOP JIMBOCHO
東京都千代田区神田猿楽町2丁目2-14
03-5801-6123
営業時間 12:00~19:00
https://maidens-shop.jp
max’s Tokyo
東京都千代田区神田小川町3丁目5-7坂部ビル1F
03-3292-7415
営業時間 12:00~20:00
水曜休
https://maxsclothing.com/
小学館スクウェア 出版事業部
東京都千代田区神田神保町2-19 神保町SFⅡ 7F
03-5226-5781 
営業時間 10:00~17:00
土日祝休
https://shogakukan-square.jp/publish

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