タブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
6月下旬にミラノメンズファッションウィークにて発表された、各メゾン&ブランドのコレクションから、AdvancedTimeが注目する動向をピックアップ。2027年春夏の傾向を先んじて紹介する。
例年6月中~下旬に開催される、ミラノ&パリのメンズファッションウィーク。次の年の春夏コレクションが発表されるわけだが、まさにこれから夏を迎えようとする気候も相まって、秋冬コレクションのそれとはまた一味違った、独特な盛り上がりを見せる。もっとも今年はヨーロッパを襲う熱波の影響で、ショーの時間をずらしたりなど、いつもとは違ったハードな側面もあったようだ。2月の2026~’27年秋冬ファッションウィークに続き、2027年春夏ファッションウィークから、AdvancedTimeの読者向けに、ピックアップして紹介する。なお、2026~’27年秋冬の記事同様、発表された順番となる。


先シーズン同様、フォトグラファーのイーサン・ジェームズ・グリーンによる『ダンヒル・カタログ・レゾネ』とともに発表された“ダンヒル”の2027年春夏コレクション。クリエイティブ・ディレクターのサイモン・ホロウェイが着想源として挙げた人物は、先シーズンにもその名が挙がったロード・スノードン(スノードン伯爵)、画家のルシアン・フロイド、そして俳優のロジャー・ムーア。同じ007の装いにしても、テレンス・ヤング監督ご用達の“アンソニー・シンクレア”でモダンなカットのスーツを仕立てたショーン・コネリーと、“シリル・キャッスル”や“ダグラス・ヘイワード”といったショウビズ界の顧客も多いテーラーに依頼していたロジャー・ムーアとでは、大きく異なる。ムーアのそれは英国のクラシックなテーラリングをベースとしながらも、どこか余裕や艶っぽさを感じさせる。“ダンヒル”2027年春夏コレクションのテーラードウエアには、その片鱗が見て取れるようだ。同ブランドのシグネチャースタイルともいえる「ボードン」ブロックで仕立てられたブルーのスポーティングジャケットは、柔らかなラペルのラインや、多少構築的な肩周りなど、まさにムーアの装いを彷彿とさせるエレガントさがある。その一方で、ロイヤルネイビーの制服を連想させる8ツボタンのブレザーは、オーセンティックなスタイルを現代の感覚で着こなす試みとも感じられ、ブラウンのブレザーは特に興味深いアレンジ。この他にも、グレンプレイドのスーツや、レザーのカーコートなど、英国の伝統的な柄や生地、さらに“ダンヒル”のアイコニックなアイテムが、独特なツイスト(ひねり)を感じさせるスタイリングで提案されている。クラシックなメンズウエアのエレガンスに、カジュアルやエフォートレスという感覚をブレンドしている、その塩梅こそが英国らしさ、といえなくもない。


毎コレクションそのリベラルアーツに関する深い知見から導き出される、観念的とも言えるテーマが特徴の“ブルネロ クチネリ”のコレクション。今回のテーマは「Thought is Free 思考は自由である」というもの。シェイクスピアの『テンペスト』や『十二夜』に登場するこの警句は、SNSに常時接続され、さまざまな「監視」が強化されている現代においては、より意味深長に響く。ファッションにおいてそれは、ドレスコードやステレオタイプからの逃走またはそれらの書き換え、といえるだろう。果たしてコレクションでは、タイドアップとカーゴトラウザーズの組み合わせ、ダブルブレストスーツにレタードTシャツと足元はスニーカーといったスタイリングなどが、テーマの具現化いえるだろうか。多くのアイテムはベージュを基調としたグラデーションに、ピンクやウォッシュアウトしたデニムなどの色が付加され、ナチュラルで柔和な雰囲気が生み出されている。フォーマルもアースカラーで提案されて、同ブランドならではのドレススタイルが展開されていた。スエードのレザーブルゾンをスーツの上にラフに合わせる着こなしなども、スマートなブレイキングルールのアイデアといえそうだ。


2027年春夏コレクションのプレゼンテーションにおいて、新たなプロジェクト「Brioni Maestria(ブリオーニ マエストリア)」を発表した“ブリオーニ”。この「ブリオーニ マエストリア」はビスポークの卓越性をより高め、シーズナルコレクションに新たな可能性をもたらすものという。シャツやニットウエアからフットウエア、スモールレザーグッズに至るまで、幅広いカテゴリーにおける多彩な選択肢を通じ、ひとりひとりのスタイルと個性を引き立てる、より高度なパーソナライゼーションを提案する。このパーソナライゼーションの中心には、ガイドラインのもとでのカスタマイズを行う「スミズーラ」と、個性と創造性を表現する「Alta Sartoria(アルタ サルトリア)」というふたつのアプローチがあるという。生地だけでなく、ボタン、ライニング、素材や色の組み合わせ、機能的な仕様など、さまざまな項目で幅広いセレクションが可能とのこと。その上で、“ブリオーニ”の2027年春夏コレクションの特色は、その色彩にある。ローマの夕暮れから着想された「ロッソ ローマ」をはじめ、ユーカリプタスグリーン、トラバーチンベージュ、トレヴィブルー、コーラルといった独自の色あいが提案されている。そしてニットタイを選んだタイドアップのスーツスタイルや、ヌバックレザーを使ったアンコンストラクテッドなSoffioブレザーなど、スタイリングやアイテムにテーラードの美意識とノンシャランな感覚が巧みにミックスされ、今日的なリアリティに繋がっている。


今回のミラノファッションウィークにて、価値の転換を強く印象づけた“プラダ”。先シーズン提案されていたロング&ナローなシルエットの方向性をより進めて、さらに削ぎ落した印象だ。ボトムスはほとんど5ポケットの「ジーンズ」スタイルで、身体に沿ったシルエット。それがレザーやプリント、シアー(透け)ファブリックなどさまざまな素材で展開されていた。コレクションのテーマは「CLARITY」。「明快さ、明晰さ」という意のこの語が示しているのは、根源的で、意味のあるものへ向かう選択または集中の結果という。ジーンズやデニムジャケット、Tシャツといった、実用性に根ざしたシンプルな魅力を持つ衣服の語彙が改めて見直され、余分な装飾や誇張、または複雑さがなく、まさに明晰に提示される。近年、というか2027年春夏においても、余裕あるサイズ感、そしてレイヤードな着こなしはメンズファッションにおける大きな潮流だが、“プラダ”2027春夏コレクションは、それとは一線を画するスタンスをはっきりと打ち出している。その感覚が端的に表現されていたのが、グレーとブラックのピンチェックファブリックを使ったタイトなデニムジャケット&ジーンズに、同生地のオーバーサイズのジャケットを組み合わせたスタイリングだろう。それは色あいこそノームコア的だが、よりソリッドな存在感を見るものに感じさせる。そして特筆すべきは、多くのルックで、バックル&ストラップにややロングノーズなスクエアトウを組み合わせた独特なレザーシューズが使われていたこと。装飾性を拒絶したようなスタイリングの中で、その斬新な存在感が、一際目を惹いた。
AUTHOR
『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。
高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。
何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。
「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。
一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!

vol.031

vol.030

vol.029

Special Issue.AdvancedTime×AQ

vol.028

vol.027

Special Issue.AdvancedTime×AQ

vol.026

vol.025

vol.024

vol.023

vol.022

vol.021

vol.020

vol.019

vol.018

vol.017

vol.016

vol.015

vol.014

vol.013

Special Issue.AdvancedTime×HARRY WINSTON

vol.012

vol.011

vol.010

Special Issue.AdvancedTime×GRAFF

vol.009

vol.008

vol.007

vol.006

vol.005

vol.004

vol.003

vol.002

Special Issue.01

vol.001

vol.000
華やかな面とシリアスな面…多面的に世界を知れた『ル・ロゼ』での3年間―
ようこそ、AdvancedClubへ!
メンズファッションウィークで知る、2027年春夏注目のスタイルとは(ミラノ編)
天才の孤独感と周囲との軋轢。『悪の華』はボードレールの生涯を知ることで、その世界がグッと身近に
大江健三郎の自筆原稿には推敲のプロセスが一目瞭然!東大准教授・阿部賢一氏を迎えて大江文学を読み解く