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1960年代中頃にあったアルファ ロメオのスポーツモデル『GT1300ジュニア』に由来する車名を与えられた最新モデルの『ジュニア』。サイズ感はBセグメント(全長約4.2m)に入るアルファ ロメオ最小のSUVとして登場。パワートレインはブランド初のバッテリーEV(以下、BEV)と、そしてマイルドハイブリッドの2タイプだ。ライバルは、自らも属するステランティスグループのプジョー『2008 DS3クロスバック』を始め、アウディ『Q2』やボルボ『EX30』、そして日本車勢もそこに加わる。世界はもちろん、日本でも人気の激戦市場にデビューした都市型SUV、『ジュニア』は名門アルファ ロメオの最新モデルとしてどのような魅力で勝負するのか?

アルファ ロメオのスポーツモデルの中でも、最重要モデルの一つというべき名作『ジュリア スプリントGT』。若きデザイナーだったジョルジェット・ジウジアーロが仕上げたスタイルと痛快な走りによって、多くの支持を得て大人気となり、現在も名車としての地位は揺るがない。その派生モデルの一台として1966年に登場したのが“普及版”の『GT1300 ジュニア』だ。当然のことだが、この『ジュニア』も実に魅力的な存在として、今も多くのファンを持つ。
そして時を経た現在、アルファ ロメオはその『ジュニア』の名をブランド初となるBEVをラインアップに加えたコンパクトSUVに与えた。「またしてもSUVか」とは思いつつも、アルファ ロメオ自身が『ブランドの想いはSUV市場が引き継ぐ』といった戦略を採っているから、いつまでも「感傷」に浸っているわけにはいかない。世界的なSUVを求める顧客ニーズに対応して「SUVの積極開発」へとシフトすることは当然の方法論だろう。
さて現在、アルファ ロメオが展開するSUVは3種。まずアルファ ロメオ初のSUVとして2018年に日本に上陸した『ステルヴィオ(Stelvio)』がある。「Dセグメント(中大型SUV)」に属し、そのベースはスポーツセダンの『ジュリア』。走りのテイストはその『ジュリア』の性格を受け継いだことで、オンロードでの走りの切れ味の良さが光る一台だ。実は昨年の段階では、後継モデル(BEV)の導入計画によっては生産終了になると予想されていた。ところが、その次期モデルの計画自体が見直され、現行車の販売を2027年まで続ける方針が示された。アルファ ロメオらしいV6エンジン搭載の高性能なクアドリフォリオ仕様(ジュリアも)の生産は2026年4月には再開とのことだ。
さて、つぎはCセグメント(全長約4.5m前後)属する『トナーレ(Tonale)』。『ステルヴィオ』よりひと回りコンパクトな都市型SUVで、マイルドハイブリッド(以下、MHEV)やプラグインハイブリッド(以下、PHEV)を揃えた電動車のSUV。サイズ感とアルファ ロメオらしいスポーティなデザインと操縦性が人気となっている。2023年、日本の上陸以来3年ほど経過しているが、間もなく(3月17日)に新型がデビューする。
そしてアルファ ロメオのSUVラインアップ中、もっともコンパクトな『ジュニア』がくる。サイズでも価格でもアルファ ロメオのエントリーモデルだ。ラインアップはブランド初のBEVモデルの『エレットリカ(Elettrica)』と、MHEVの『イブリダ(Ibrida)』の2タイプ。
ここで問題なのはBEVにするか、MHEVにするか。確かにブランド初のBEVというアルファ流儀の先進性は実に興味深い。その一方で、たとえ16kW(22PS)のEモーター(48Vバッテリー)のアシストを受けても、アルファらしくエンジンの香りを残したMHEVも捨てがたいのだ。そんな迷いを経た結果、選択したのは「アルファに乗るならエンジン」という思いもあり『イブリダ』となった。




日本だけでなく世界中で急成長する激戦区にデビューした都市型SUVの『ジュニア』。その佇まいは、コンパクトでありながらアルファ ロメオらしいと言うか、実に洗練されたデザインで仕立てられ、存在感がある。Bセグメントに属するSUVだが目の前に立つその姿は“エントリー”という言葉から想像する佇まいを軽く超えている。フロントマスクは三眼ヘッドランプと進化したトライローブ(三つ葉)形状のフロントグリルなどで個性を主張しているため、オーラすら感じる。もちろんひと目でアルファ ロメオと分かる強烈なアイコン性を確立している。近年の同社デザインに共通する「緊張感のある面構成」は、このコンパクトSUVにも丁寧に落とし込まれている。
サイドビューでは、前後フェンダーに宿る張りのある造形が印象的だ。抑揚の強いショルダーラインが光を受けて陰影を描き、静止状態でも躍動感を演出する。ホイールアーチの造形も単なるSUV的な力強さではなく、どこかスポーツカー的な“筋肉質”を感じさせるのがアルファ流儀と言える。
そしてリアに目を向ければ、空力性能を追求した“コーダトロンカ”処理。1960年代のレーシングアルファが採用した断ち切りテールの思想を、現代的に再解釈したデザインである。単なるレトロモチーフではなく、空力と造形美を両立させるための機能的デザインとして息づいている点に、このブランドのプライドを感じる。
インテリアは明確にドライバーオリエンテッド。メーターフードの造形やセンターコンソールの向きは、自然と身体を包み込むように設計されている。視線移動が少なく、操作系は直感的。ブランドが長年掲げてきた“人馬一体”の思想は、SUVというパッケージになっても揺らいでいない。
着座位置はやや高めだが、ステアリング位置やペダルレイアウトはスポーティ。単に見晴らしの良いSUVではなく、「積極的に操るためのポジション」が与えられている点がいかにもアルファらしいポイントだ。
アルファの流儀を強く感じさせる佇まいに、どこかほっとしたものを感じながら『イブリダ』をスタートさせた。1.2Lの直列3気筒DOHCターボエンジンと16kWのEモーターを内蔵した新開発デュアルクラッチトランスミッション(eDCT)、そして48VバッテリーからなるMHEVはシステム全体で最高出力145psを発揮する。
発進は驚くほど滑らかで、モーターアシストによるトルクの立ち上がりは俊敏。街中ではEV走行領域も活用しながら、静粛かつ軽快に速度を乗せていく。3気筒特有の振動は巧みに抑えられ、アクセル操作に対するレスポンスも鋭い。
さらに感心したのはハンドリングだ。コンパクトなボディサイズと正確なステアリングフィールが相まって、コーナー進入時のノーズの入りが実に素直。SUV特有の重心の高さを意識させないロールコントロールが施されており、ワインディングでもラインをトレースする感覚はきわめて自然。
パドルシフトを積極的に使えば、eDCTはテンポ良く変速を繰り返し、まるでホットハッチのような軽快さを見せる。ブレーキフィールも自然で、回生制御とのつながりは違和感が少ない。
「SUVだから妥協した」という印象は皆無。むしろこのパッケージングの中で、いかにアルファらしさを抽出するかに腐心した痕跡が随所に感じられる。操る歓びを確実にドライバーへ返してくれる感覚――そこには確かにモータースポーツのDNAが流れていた。




MHEVの仕上がりの良さを味わってしまうと、今度はBEV仕様への期待というか、仕上がりが気になりだした。低重心化というBEVの利点は、当然ながらアルファ ロメオのハンドリング哲学とさらに相性が良いはず。モーターだからこその瞬時に立ち上がるトルクと俊敏なシャシー制御が融合すれば、“新時代のアルファ像”はさらに明確になるはずだ。あれほどエンジンにこだわっていたことも忘れ、今度は『エレットリカ』の存在が気になって仕方が無い。そんな、わがままな気持ちにさせてくれた『ジュニア』だった。
主要諸元 | アルファ ロメオ ジュニア イブリダプレミアム |
| 全長×全幅×全高 | 4,195×1,780×1,585mm |
| ホイールベース | 2,560mm |
| 最小回転半径 | 5.3m |
| 車両重量 | 1,330kg |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| エンジン | 水冷直列3気筒DOHCターボ 1,199cc |
| 最高出力 | 100kW(136PS)/5,500rpm |
| 最大トルク | 230N・m/1,750rpm |
| モーター最高出力 | 16kW(21.6PS)/4,264rpm |
| モーター最大トルク | 51N・m/750-2,499rpm |
| 燃料消費率 | 23.1km/l(WLTCモード) |
| 車両本体価格 | 483万円(税込み) |
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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Writer: Atsushi Sato
Editor: Ryo Usami
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