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文字盤デザイン以上に、腕時計に躍動感を与えるのがムーブメントだ。今年はベーシックな3針仕様の新型ムーブメントを搭載した新作がビッグブランドから相次いだ。それらを一堂に並べると見えてくる最新の3針ウォッチを見ていこう。
時計は文字盤が同じデザインをしていようと、ムーブメントの精度、パワーリザーブなどのスペックの違いによって全く異なる使用感になってくる。それゆえにムーブメントにはブランドの思想が現れるといっていい。
今年は3針仕様の新開発ムーブメントが目立った。新開発ムーブメントといえば、個性的な複雑時計ばかり目がいくが、3針仕様のムーブメントは、時刻表示の基本であり、そこから機能を追加して派生するベースムーブメントでもあるから、どのブランドにとってもとても重要だ。
3針仕様の新型ムーブメントは、多くは特別な機構の開発ではなく、基本的なスペックアップを目指すのが一般的。高振動化による精度の向上、パワーリザーブ時間の拡大などだが、注目は小径・薄型化のサイズ面における進化だ。小型化しても精度を上げ、パワーリザーブを増やすムーブメントは、ブランドの将来を担うキャリバーといっても過言ではない。またムーブメントのサイズは変わらなくても、ケースをコンパクトにしやすいのが3針モデルの利点だ。
そんな期待の新型ムーブメントを搭載した5モデルを見ていこう。
オイスター パーペチュアルのクラシックなラインに、ケースとブレスレット一体型に見える新コレクション「オイスター パーペチュアル ランドドゥエラー」が登場した。シードゥエラー、スカイドゥエラーに続く、最新のドゥエラーは「ランド(大地)」だ。
このコレクションのために開発された「フラットジュビリー」と名付けられたブレスレットは、従来からある5連のジュビリーブレスレットのように見えるが、リンクがスクエア状でエッジ部分とセンターのリンクにポリッシュ仕上げ、その他の部分にサテン仕上げが施された。これによりフラットなブレスレットながら立体的な表情を獲得している。また文字盤にはレーザー彫刻によるモダンなハニカム模様の文字盤デザインも特徴的だ。
この新モデルのハイライトは、搭載される新開発の自動巻きムーブメントのCal.7135だ。ロレックス初となる毎時36000振動という高精度ムーブメントを採用し、しかもスタンダードなデイトジャスト41と比べてもケース厚は約2mm以上も薄型になっている。つまり、装着感が向上し、時刻の正確さも上がったということだ。
毎時36000振動のハイビートを実現するために、7件の特許が出願されている「ダイナパルス エスケープメント」と名付けられた独自の動力伝達機構を採用。従来の機構は動作するたびにパーツ同士が接触して摩擦が生じ、摩擦を軽減する潤滑油を注油する必要があった。本作のハイビートのムーブメントではなおさら摩擦が増える。そこでふたつの歯車が滑るように直接伝達される「ダイナパルス エスケープメント」では、摩擦を抑えるオイルを塗布し、エネルギーのロスも抑えることで、伝達効率を高められるようになった。
ランドドゥエラーには、同じムーブメントを搭載しながらケースサイズは40mmと36mmがある。小径・薄型のサイズにハイビートによる高精度を実現したムーブメントを搭載したこの新作は今年一番の話題作だ。
創業者のフェルディナント・アドルフ・ランゲの誕生年を冠した「1815」コレクションから、ケース径34mmモデルが追加された。レイルウェイの分目盛り、アラビア数字、スモールセコンドを備え、デザインそのものは懐中時計を思わせるが、そのコンパクトなサイズ感は腕に巻くための現代的な仕様だ。
搭載されるのは、A.ランゲ&ゾーネにとって75番目の自社キャリバーL152.1。歯車が露出せず堅牢に覆われた4分の3プレート、そのプレートに装飾されたストライプ仕上げ、ルビーが衝撃で外れないようにゴールドパーツとビスで補強したディテール、ハンドエングレービング入りのテンプ受けなど、グラスヒュッテ様式といわれる伝統的な美しい装飾が施されている。直径28.1mm、厚さ2.9mmというコンパクトな作りをすることで、ケースサイズは34mm径という最小クラスのサイズにまとめ上げた。しかもチラネジテンプを用いたフリースプラング式の調速機を採用し、72時間のパワーリザーブを実現している。従来の38.5mmサイズの1815は55時間のパワーリザーブだったから、着実な進化はA.ランゲ&ゾーネらしい実直さの表れといえる。
一方で、サクソニア・フラッハに搭載されるキャリバーL093.1と比べてみると、ムーブメント自体はサイズやスペックがほぼ同じ。あとは外装による装着感の違いだ。小径モデルなら直径34mm・厚さ6.4mmの「1815」、薄型モデルなら直径37mm・厚さ5.9mmの「サクソニア・フラッハ」のという選択となるだろう。
機械式時計で月差±1分以内の「グランドセイコーV.F.A.(Very Fine Adjusted)」は、精度を競うコンクールで用いた技術を超高精度なウォッチ。最近では9Sというメカニカルシリーズの20周年で「V.F.A.」を冠したモデルが登場したのが記憶に新しいところ。今年は超高精度の「スプリングドライブ U.F.A.(Ultra Fine Accuracy)」が発表された。
スプリングドライブとは、機械式時計の動力に、クォーツ時計の制御システムを組み合わせたグランドセイコーが誇る第3の駆動システムのこと。機械式のような質感を持ちながら、クォーツ式の高い精度を実現した良いところを組み合わせたシステムだ。
このスプラングドライブにU.F.A.の名を冠したのが、「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A.」。最もスタンダードなCal.9R65が平均月差±15秒に対して、搭載されるCal.9RB2は年差±20秒という驚異の精度を実現。この高精度を追求するためにエイジングで安定させた水晶振動子を新設計のICとともに真空に密封し、温度、湿度、静電気、光などの影響を抑えた。さらにスプリングドライブ史上初めて精度を補正する緩急スイッチも採用している。
このムーブメントを収めるのが、スプリングドライブ搭載モデルの中では最小となる径37mmのケース。ちなみにサイズは一般的なスプリングドライブのムーブメントであるCal.9R65と同じ。つまりケース自体をコンパクトにしているわけだが、軽量なブライトチタン製で腕に載せたとき低重心の設計となっていて装着感を良好だ。
ケースバックからは霧が凍結したような「霧氷仕上げ」という艶消し処理がなされたムーブメントが鑑賞でき、ローターには“SPRING DRIVE ULTRA FINE ACCURACY”の文字を刻印。文字盤にはスプリングドライブが製造される「信州 時の匠工房」の東側の霧ヶ峰高原で見られる樹氷をモチーフとした型打ちパターンが施される。
イタリア海軍の特殊潜水部隊に時計を納入していたという出自を持つパネライ。そのDNAを受け継ぐルミノール コレクションが新型ムーブメントを搭載し、アップデートを果たした。
ルミノールは機能優先のミッションウォッチゆえに厚みのある大型ケースが特徴であった。しかし今年はケースの直径はそのままに、ケースの厚みを15mmから13.7mmとスリムにアップデート。ケースを薄型にしながら、防水性能は300mから500mへと向上させ、ケースバックはクローズド仕様ではなく、シースルーでムーブメントを鑑賞できるようになった。スリムになったことで重量は15%も削減されたという。
シースルーバックから見えるのは、新型の自動巻きムーブメントであるCal.980。先代機のCal.9010と同じ3日間パワーリザーブでありながら、厚みは6.0mmから4.2mmと薄型となっていて、この進化がケースの薄さにも寄与している。また秒針が停止するハック機能が追加され、より正確な時刻合わせも可能となった。
ケースにはAISI316LVMというステンレススティールを採用。医療用グレードのスティールで、通常より炎症やアレルギー反応が起こりにくく、衝撃や応力を吸収しやすい特性があるという。またルミノールの名前の由来にもなっている夜光塗料は、昨年「サブマーシブル Elux LAB-ID」にも使用されたⅩ2を初めてレギュラーコレクションで採用。X2はX1より明るさが10%以上も向上させた最新バージョン。サンドイッチ構造の文字盤から見えるインデックスに使用され、視認性をアップさせている。
F1(フォーミュラ1)が創設75周年を迎える2025年に、タグ・ホイヤーはその公式タイムキーパーに復帰を果たした。同じくカムバックを果たしたのがブランドを代表するカレラ コレクションの3針タイプでミニマルデザインの「タグ・ホイヤー カレラ デイデイト」だ。
最新モデルでは、近頃話題のセリタ社の高級ムーブメント部門である「AMT」と共同開発した自社製ムーブメントCal.TH31-02を搭載。先代機に搭載されていたキャリバー5は汎用ムーブメントで約38時間パワーリザーブ、2年間保証であったが、Cal.TH31-02を搭載することで約80時間パワーリザーブ、5年間の延長保証へと格段に進化した。またタグ・ホイヤーを象徴する盾をデザインしたローターに加え、ハイエンドな仕上げも施される。王道モデルが劇的なスペックの向上を果たしたといえるだろう。
さらに今回のアップデートでは、時代にニーズに合わせてステンレススティール製ブレスレットの仕様が見直されたのも見逃せない。新しいクイックチェンジリンクシステムが採用され、ブレスレットのH型のコマが簡単に工具なしで取り外しができるようになった。これによってブレスレットの弱点であったサイズの調整も問題ない。
新キャリバー採用に外装のブレスレットに、細部にブラッシュアップを積み上げた正常進化といえる1本だ。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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