（2ページ目）『名探偵コナン』毛利小五郎に学ぶ、愛される伊達男の魅力

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毛利小五郎、ジャック・バウアー…幾多の“伊達男”たちを演じてきた、小山力也が語る“ダンディズム”。心に糊を利かせて生きる哲学

スリムな長身にスーツが似合う。いつもビシッと糊を利かせたシャツ。2009年から毛利小五郎を演じる小山力也さんは、そのキャラクターが持つダンディズムに惹かれ続けてきた。

「どんな悪党と対峙しても、小五郎はその命を奪うことはない。彼は、誰であってもフラットに接する広い心と、人間性を否定しない姿勢を持っています。その根底には、ヒューマンな愛情が垣間見えますが、それ以上に際立つのは節度を持ち、品位を保つスタンスです。小五郎は、時に酔いつぶれてしまうこともあれば、魅力的な女性に心が揺れることもあります。しかし、欲望に忠実なようでいて、決して道を外すことはありません。必要な時には毅然と襟を正し、凜として振る舞う。見た目だけでなく、内面にも美意識を通した『心にも糊を利かせている』あり方なのです。だからこそ、彼は周囲から信頼され続けるのではないでしょうか」

ダンディズムは、ファッションや小道具がシンボリックに語られがちだ。しかし、伊達男の本質は外見に頼ることなく、自然に反映される生き方にある。それが小山さんのダンディズム論だ。

「自分の心の折り目に沿って、正直に生きていくこと。その結果として振る舞いや行動様式が磨かれていき、それが『格好良さ』となって表れるのです。心をさらけ出し、飾らずに潔くある。それが小五郎の生き方です。私自身、彼の行動には共感する部分が多々あります。お酒や食べることが好きなところなどね。しかし、彼には『絶対にやらない』『絶対に言わない』という己の中の基準がある。それが無理のないかたちで身についている。だからこそ、その行動が魅力的に映る。私は、そのナチュラルな部分を大切にしながら演じています」

少年時代は『タイガーマスク』の伊達直人に憧れて育ち、声優として『24-TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランドや『ER』のジョージ・クルーニーなど、錚々たる名優を声で演じてきた。使命を全うしつつ、個人の生の感情をなくすことがない。シビアな瞬間であっても、自分らしく愉しむ。作品で活写される行動様式、心の在りようを理想にしてきたという小山さん。だからこそ「年齢を重ねた今なお、心も体も整えていきたい」と視線を前に向ける。

「そう、だから『抗う』──。これが私のテーマになっています。日々のセルフエクササイズを欠かさず、小さな努力を積み重ねています。三國連太郎さんや勝新太郎さんのように、年齢を重ねてもなお輝き続ける人を目指して。何歳になっても目標を心に置き、ストイックに自分を律していく。これは、小五郎にも通ずる『心にも糊を利かせた』生き方だと考えています」

毛利小五郎という男。その魅力は、「糊を利かせた」ように一貫した信念と、そこから発露する人間味にある。4月に公開される『名探偵コナン隻眼の残像』は、劇場版では20年ぶりに彼がメインに。

「小五郎の本領が存分に発揮される作品です。普段は軽妙な言動が目立つ彼ですが、今回は男の『真心』が見られますので、ご期待ください」

PROFILE

声優／ナレーター／俳優

小山力也

Rikiya Koyama
12月18日、京都府生まれ。1988年、劇団俳優座に入団。舞台やテレビドラマ、映画で幅広く活躍。2009年からTVアニメ『名探偵コナン』の毛利小五郎役を務める。海外ドラマの吹替版『24-TWENTY FOUR-』シリーズのジャック・バウアー（キーファー・サザーランド）、『ER 緊急救命室』Ⅰ～Ⅴのダグラス・ロス（ジョージ・クルーニー）も代表作。

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初出：2025年2月22日発行『AdvancedTime』25号。掲載内容は原則的に初出時のものです。