洗練のホスピタリティを備えた「ポルシェ・パナメーラ」が醸し出す、定宿の味わい

新型は2023年11月、上海で発表された新型ポルシェ・パナメーラ。実に8年ぶりのモデルチェンジにより3世代目へと変わった。フル4シーターの5ドアスポーツサルーンとして進化を続けてきパナメーラ。一流のスポーツカーでありながら高級サルーンとしての快適さを兼ね備えたスポーツサルーンの魅力はどう進化したのか?

LIFESTYLE Jan 23,2025
洗練のホスピタリティを備えた「ポルシェ・パナメーラ」が醸し出す、定宿の味わい

ポルシェは、ゆっくり走っても快感

長年にわたり日本の自動車ジャーナリズムを牽引し、多くの人から“巨匠”とも呼ばれた徳大寺有恒さんが亡くなられて10年(没年2014年11月)になる。お洒落で美食家で博識で女性に優しく無類の寂しがり屋……。週刊誌の編集担当としてお付き合いが始まって以降、ずっとお世話になってきた徳大寺さん(以下、徳さん)、もちろん多くの思い出がある。

ある国産スポーツカーの試乗会の時だ。メーカーのエンジア達は試乗前の徳さんを取り囲んで「いかにパワフルで速く、カッコいいか」を、まさに口角泡を飛ばすがごとく力説。実は徳さん、そういった状況が苦手、というか嫌いだった。そしていよいよ試乗の番が巡ってきたときのこと、チーフエンジニアを先頭に徳さんを囲みながら、さしずめ病院の院長総回診のように試乗車まで案内。するとついに徳さんも辛抱出来なかったのか「乗らずとも分かる!」と一喝。場の空気は一瞬にして凍り付いた。もちろん同行していた我々も慌てたが、なんとか徳さんをなだめ、試乗に出発した。

「彼ら(エンジニア達)にとって手掛けたクルマは子供と一緒、その気持ちはよく分かるんだよ」と話し出した。

「でもね、スポーツカーの楽しさは馬力や速さや形だけで決まるものじゃないし、乗る人の生活の中で色々な輝き方をするものなんだよ」

その日の徳さんは、スポーツカーであっても終始穏やかに、ごくごく常識的な試乗だった。サーキットならいざ知らず、一般道で試乗テストでは、いわゆる“飛ばす”といった走り方あまりしなかった徳さん

「飛ばせば飛ばすほど分からなくなること、見逃すことが多くなるもんだよ」とも言っていたことを思い出す。

それから、どれぐらい経ってからだろうか、徳さんが所有していた「911カブリオレ(930)」のステアリングを任されたことがあった。久し振りの911、飛ばしたくなる気持ちを抑えながら走っていると

「ポルシェはゆっくり走っているときでも気持ちいいとは思わないか?」と助手席の徳さんが、こちらの気持ちを見透かすようにぽつり。

確かにそうだ。冷静になって走行感覚を分析すれば、世界トップクラスのスポーツ性能を持ちながら、ゆったりとした流れの中では実に快適なことを発見した。この当時、スポーツカーはハードであれ、みたいな風潮がサスペンションの硬さは時として不快さすら感じたものだ。しかし、ポルシェ911はあらゆる速度域において“最良の快適さ”を実現していた。

何も足さず、何も引かない“絶妙なる距離感”の走り

ポルシェ・パナメーラの画像
箱根・仙石原にある「箱根リトリートföre & villa 1/f(フォーレ&ヴィラ ワンバイエフ)」。約15000坪の広大な敷地内に点在するヴィラでは、自然の中に身を置いたような滞在ができる。パナメーラを横付けしたのは、敷地内の歴史的建造物「俵石閣」。
ポルシェ・パナメーラの画像
数寄屋の棟梁として当代随一の腕前とされた建築家・島田藤吉が手掛け、大正3年に創業した温泉旅館「俵石閣」を改装し、料亭として蘇らせた建物だ。クラシックな定宿にも、モダンなそれにも、パナメーラは見事に調和する。
「箱根リトリートföre & villa 1/f(フォーレ&ヴィラ ワンバイエフ)」を紹介した記事はこちら

その後、ポルシェは2002年には「カイエン」、2009年に5ドアサルーンの「パナメーラ」といった具合に“ポルシェ初”となるセグメントのモデルを次々投入し、ビジネスとしても成功した。そしてスポーツカーの代表的ブランドの挑戦はライバルをも刺激。後を追うように名門スポーツカーブランドからも魅力的なモデルが登場しているわけだ。

まさにその先鞭を付けたとも言えるパナメーラの現行型は2023年11月に発表され、8年ぶりに3世代目へとモデルチェンジを遂げた。オーナーの中にはプラットッフォームが先代モデルの改良版という事で、ビッグマイナーと呼ぶ人もいる。だが正直、ポルシェは常時進化を続けているため“イヤーモデル”として表現する方がいいのかもしれない。

ポルシェ・パナメーラの画像
仙台に比べフロントバンパーの形状が変わり、グリル開口部は全幅目一杯まで大型化。フロント全体の押し出し感が強まった印象だ。

そこで今回のパナメーラのハイライトと言えばプラットフォームの進化に加え、「Eハイブリッドモデル」にオプション設定される「ポルシェアクティブライドサスペンション」という先進のサスペンション。しかし、今目の前にあるのはエントリー・グレードで、最高出力353馬力を発生するV型6気筒3リッター・ターボエンジン搭載した後輪駆動モデルだ。

だからと言ってまったくネガティブな気分になど微塵もならないのは、ポルシェだからか……。ポルシェはどんなモデルであろうと、どんなグレードであろうと徹頭徹尾ポルシェだから、例えエントリー・グレードであっても、こちらの期待を裏切らないからだ。いやむしろ“素のポルシェ”だからこそ、本質的な魅力をしっかりと味わえる。

ポルシェ・パナメーラの画像
左/シャシーが進化したことによりしっかりとした剛性感はさらに向上。市街地走行でも上質なステアリング・フィールを味わえる。オプションの「リアアクスルステアリング」が装備され、市街地などでの使いやすさが向上。 右/353馬力のv6型エンジンは高回転までよどみなく回る。そのスペックによって最高速度は272km/h、0-100km/h加速が5.3秒を実現。

さっそく走り出せば5メートル越えで、1.8トンあまりあるボディでも、軽やかな身のこなしを見せる。「911の4ドア版」と言われるだけあり、運転席から見える景色は慣れ親しんだ911と同じ。その動きは意のままに操れる感覚。市街地でも郊外でも、そして高速でもそれぞれの速度域に合わせて「極上の快適」をこちらに提供してくれる。

ポルシェ・パナメーラの画像
サルーンとは言え911にも通じるポルシェフォルムによって、スポーティイメージをしっかりと演出。

徳さんの「ポルシェはゆっくり走っているときでも気持ちいい」というとは思わないか?」と言う言葉が思い浮かぶ。

もちろんワインディングに乗り込み、アクセルをグッと踏み込めば、例え素のポルシェであっても、無類の速さとコントロール性の良さを披露し、スポーツカーとしての素顔を見せてくれる。「なんなんだ、このクリーンで心地いいステアリング・フィールは!」その速さに驚くのだが、速さにザラザラとした感じがなく、実にシルキーにして穏やか。

持っているパワーを余裕としてリザーブしている。

ポルシェ・パナメーラの画像
「ポルシェドライバーエクスペリエンス」というコンセプトにより仕上げられたインパネはステアリングを握るドライバーのために設計され、快適な操作性を実現。
ポルシェ・パナメーラの画像
Apple CarPlay、Android Auto、Spotify、さらにインカービデオを踏査したインフォテインメントシステム。デジタルの可能性も大きく拡がった。

気持ち良さからどんどんスピードが上がる。さが、頃合いを見計らうようにヒートアップしていたこちら側「少しゆっくり走っても気持ちいいですよ。何があるか分からないから余力は残しておきなさい」と抑制してくれるのだ。これこそポルシェである。そこには、速かろうが遅かろうが、どんな状況でも「五感で感じる幸せ」がしっかりとあった。その感覚は、まさに絶妙に行き届いたホスピタリティで、いつも迎えてくれ慣れ親しんだ“定宿のような味わい”を持っているのだ。

ポルシェ・パナメーラの画像
左/シートのフィット感の良さはポルシェの伝統。ドライブ中に座り直したりすることが少ない。 右/ルーフラインは低めだが、ドライバースシート並みのフィット感の良さと足元の広さが確保され、寛げるリアシート。オプションでシートベンチレーションとマッサージ機能が選択可能。
ポルシェ・パナメーラの画像
左/開口部の広いパナメーラの特徴。容量は通常で494L確保され、4人分の一泊分の荷物も収納できそうだ。 右/後席を倒せば最大で1,328Lまで拡大する。長尺ものも収納でき、実用性はかなり高い。
ポルシェ・パナメーラの画像
オプションの「HDマトリクスLEDヘッドライト」が装備されていた。ライトひとつで16,384個、両側で32,758個ものLEDが使用され、より高度かつ精密なな調整が可能になり、照度も向上。
全長×全幅×全高5,052×1,937×1,423mm
ホイールベース2,950mm
最小回転半径データ無し(旧型は5.6m)
最低地上高132mm
トランスミッション8速AT
駆動方式FR
エンジン水冷V型6直列ターボエンジン 2,894cc
最高出力260kW(353PS)/6,800rpm
最大トルク500N・m/1,900~4,800rpm
燃費データなし
車重1,885kg
価格14,660,000円~(Panamera/税込み)

お問い合わせ先
ポルシェコンタクト
0120-846-911

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