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実際に起きた事件を追ったノンフィクション小説「冷血」で大成功を収めた作家トルーマン・カポーティ。しかし、その後、N,Y社交界で派手な生活に溺れ、スワンと呼ばれる女性たちとさまざまな泥沼愛憎劇を繰り広げていった。 『フュード/確執 カポーティvsスワンたち』 ナオミ・ワッツ、クロエ・セヴィニー、ダイアン・レインら美しきスワンの逆鱗に触れた男の行く末は?!
今年は生誕100年、没後40年にあたる、作家のトルーマン・カポーティ。日本ではオードリー・ヘプバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」の原作者として広く知られている。自らがゲイであることをオープンにし、幅広い分野で才能を発揮、多くの人を魅了し、NY社交界のスターでもあった。
フィリップ・シーモア・ホフマンが本人に生き写しの演技を披露して、アカデミー賞主演男優賞を受賞した映画『カポーティ』(05)は「冷血」執筆時のカポーティに焦点をあてている。6年もの歳月をかけて、熱心に取材を重ね、「冷血」を仕上げたカポーティだったが、大成功を収めると、吹っ切れたように、ニューヨークの上流社会に出入りし、別人のように派手な生活を楽しむようになる。
『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』(20)は彼の波乱に満ちた生涯、そして“未完の絶筆”とされる問題作「叶えられた祈り」を巡るミステリーに迫ったドキュメンタリー。
「叶えられた祈り」はカポーティが「白鳥(スワン)」と呼んだ社交界の女性たちの裏事情を題材にしている。友人たちの私生活をゴシップ混じりで暴露すると、一人は自殺に追いやられ、カポーティは他の女性たちからも敬遠されるようになる。
こうした一連を、海外ドラマ「フュード/確執 カポーティvsスワンたち」は赤裸々に描いている。タイトルそのままズバリ、カポーティとスワンたちの“対立”である。
「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」のヒットメーカー、ライアン・マーフィが製作総指揮、名匠ガス・ヴァン・サントが全8話中6話を監督。英国の演技派トム・ホランダーがカポーティの特徴的な仕草と話し方をマスターし、まるで本人を見ているような錯覚を起こす。
本物のスワンたちを彷彿させる、煌びやかな豪華キャストにも注目。表面は優雅に泳いでいるけれど、水面下では必死に努力し続けた、美貌と知性とステイタスを兼ね備えた女性たち。なかでもカポーティのお気に入りは天性のソーシャライト、ジャクリーン・ケネディがお手本にした女性、ベイブ・ペイリーだった。演じているのはナオミ・ワッツ。指の先まで完璧な女性でありながら、米ネットワークTV局CBS会長の夫は浮気症で人知れず、苦しみ抜く。その孤独を知るのはカポーティだけ。
そんな彼女の友情を裏切ったカポーティが許せないのがリーダー格のスリム・キース。映画監督のハワード・ホークスに始まり、演劇界の大御所リーランド・ヘイワード、最後は英国男爵ケネス・キースと、結婚そして離婚するたびに力をつけて行った、強い女性をダイアン・レインが迫力で見せる。
ウィンストン・チャーチルの親戚と結婚し、スワンのなかでも傑出したセンスを誇っていたC. Z.ゲストには実際にもファッションアイコンであり続ける、クロエ・セヴィニー。C. Z.は「頭が空っぽ」と書かれ、怒ったスワンたちがカポーティを見限ろうとしても、そうしなかった寛大な女性。
ジャクリーン・ケネディの妹でファッションアイコンとして人気を集めたリー・ラジウィルにはキャリスタ・フロックハート。どちらが始めたのか、陰口バトルが白熱し、カポーティから夫殺しの噂をたてられ、不幸な最期を遂げるアン・ウッドワードにデミ・ムーア。人気トーク番組ホスト、ジョニー・カーソンの妻でカポーティに最期まで寄り添ったジョアン・カーソンをモリー・リングウォルドが演じている。
“スワンたち”を輝かせる個性に合ったヴィンテージファッションとゴージャスな宝石類。ベイブやカポーティの豪華なアパートメントのインテリア。そしてスワンたちが噂話に花を咲かせる、実在のフレンチレストラン「ラ・コート・バスク」(2004年に閉店)など、細部にわたり、完璧に再現された装飾にも目を見張る。特にカポーティが主催した、伝説の「黒と白の舞踏会」の場面は圧巻。実際に舞踏会が行われた「プラザ・ホテル」のグランド・ボールルームで撮影され、ドレスはハリウッドセレブ御用達デザイナー、ザック・ポーゼンが手がけている。
スワンたちとの関係悪化が追い打ちをかけ、凋落するカポーティの私生活。彼が酒とドラッグに溺れる姿を見ていられず、何度も手を差し伸べるのはかつての恋人で作家のジャック・ダンフィ。そのせいで妻子を捨て、カポーティの元に身を寄せたものの、酒を飲んでは暴力を振るう銀行員ジョン・オシェイと三角関係に。やがてジョンとの関係の終わりにカポーティが養女に迎えることになった彼の娘、ケイト・ハリントンとの不思議な縁。自分が壊した家庭の犠牲者である娘を救い出そうと彼女にモデルになることを勧め、カポーティ自身の人生と反比例するように彼女の人生を好転させる。スワンとのバトルばかりでない、ナイーヴで心優しい面もあったカポーティの側面も繊細に描かれる。
時代を超えて証明される審美眼。人によって、多様な顔を見せる人間性。スキャンダラスな人生を送った天才作家の表と裏の表情は時を経てなお、多くの人を翻弄する。
製作総指揮/ライアン・マーフィ
監督/ガス・ヴァン・サント
出演/ナオミ・ワッツ、ダイアン・レイン、クロエ・セヴィニー、キャリスタ・フロックハート、トム・ホランダー、デミ・ムーア、モリー・リングウォルド
TM & © 2023 FX Networks LLC. All rights reserved.
【放送】 BS10 スターチャンネル/7月15日(祝・月)より毎週月曜23時~第1話放送スタート(7月13日(土)13:15~第1話先行無料放送)
【配信】 スターチャンネルEX(Amazon Prime Video チャンネル)/7月14日(日)午前0時より第1話配信スタート( 7月14日(日)~8月12日(祝・月)期間限定第1話無料配信)
公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/feud2/1/
トルーマン・カポーティ/Truman Streckfus Persons 作家、脚本家、俳優 1924年9月30日、ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。19歳で執筆した「ミリアム」でO・ヘンリー賞が受賞、「怖るべき子供」と評される。1948年、「遠い声、遠い部屋」を刊行、「早熟の天才」と絶賛される。1966年に発表した「冷血」では実際に起きた殺人事件を題材にし、ノンフィクション・ノベルというジャンルを切り拓いた。映画『名探偵登場』(76)では俳優としての才能も発揮。晩年はアルコールと薬物の依存に苦しみ、1984年死去。
MOVIE WRITER
髙山亜紀
フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。
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Composition: Kyoko Seko
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