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フェラーリがニューモデルを京都の名刹、仁和寺で披露した。宮廷建築の風情を今に伝える古都京都の文化財を舞台に登場したのは、これまでにないコンセプトのスポーツカー。多人数乗車を可能にした空間設計と磨き上げたスポーツ性能が完璧に調和したイタリアの創造物は、和の伝統的価値観と融和しながら秘める輝きを存分に放っていた。
クルマは服と似ている。華やかさや趣味的分野、仕事に適したバリエーションがあり、持ち主のキャラクターを際立たせたり、あるいは機能に徹したり……。現代社会に欠かせないモビリティという重要な役割はあるものの、クルマには確かなファッション性があるのだ。
スポーツカーはその代表格。スピードを自在にコントロールし、遠心力に逆らって華麗に曲がっていくという“走る”機能を徹底的に研ぎ澄ませ、乗り手の心を解放する。スピードを体現したデザインも大きな魅力だ。空気抵抗を減らすために低く構えたスポーツカーのスタイリングは、ジェット機や超特急と同じく、子供から大人までを魅了する。
純粋に速く走る機能だけを追求すると、どれも似たようなスタイリングになるが、製造会社はイメージリーダー的存在のスポーツカーに独自の個性をブレンドし、自社のアイデンティティを宿らせる。だからファッション性も高い。
今ではレーシングカーに迫る速さのスポーツカーを作る自動車ブランドも複数あるが、人気、知名度で圧倒的なのが、イタリアのフェラーリ。創業以来2人乗り、もしくは2+2(前2席、後部に小ぶりな2席)の2ドアスポーツカーだけを手掛けてきた同社が、2022年9月に初の4ドア・4シーターモデル「Purosangue」(プロサングエ)を発表。同年11月に早くもジャパンプレミアを果たした。
全長4,973mmの大柄なボディをもつ「Purosangue」は、荷室を含め広い室内空間を誇る。後席ドアは後ろ側にヒンジがある「ウェルカムドア」仕様。通常の前側ヒンジの前席ドアも開けると、いわゆる観音開きとなり、乗り降りがしやすくなっている。
ロングノーズが印象的な車体前部には、フェラーリの代名詞にして、中高回転で素晴らしい音色を生み出すV型12気筒エンジンが収まる。搭載位置を車体中心に寄せてスポーツカーらしい運動性能を実現し、4輪駆動で走破性も抜群。
多様性の時代に対応するがごとく誕生した「Purosangue」は、様々なシチュエーションでスポーツカーの悦びを最大4人まで同時に味わうことができる、まったく新しいキャラクターなのだ。
イタリアで作られる服には、人を内面から美しく見せる効果がある。テーラードジャケットを例に挙げると、英国の伝統的なスタイルを尊重しながらも生地や仕立ては柔らかめ。体に吸い付くような着心地だ。卓越したアイロンワークによる、首から肩までの“のぼり”といわれる美しいカーブ。肩まわりの動きを考慮した袖付け。首回りから肩、背中、胸板まで上半身ががっしりとしたイタリア人が着ると、とても様になる。
骨格が違う日本人でも、体を相応に鍛えれば服の魅力を表現できることができるし、おのずと振る舞いにも自信が出てくるから不思議だ。そういう点でもイタリアの、特にナポリのサルトやファクトリーで作られる服には、着る人を内面から美しく、艶っぽく見せる効果がある(決してマッチョ志向を礼賛しているわけではない)。
そんな環境で生み出されるスポーツカーも、やはり表現力に優れている。加えて機能だけではない美意識を貫き、独自性を確立しているのが、フェラーリだ。
フェラーリの本拠地はナポリよりもずっと北のモデナとはいえ、そこで生み出されるスポーツカーには、イタリアンテーラードにも通じる魅力があるように思う。「Purosangue」のプロポーションは完璧だ。大きくふくらんだ前後のフェンダーと、側面下のデザインによって、人でいえばウエストをぐっと絞り込んだフォルム。これにより上述したロングノーズの美しさが際立ち、ひとつの大きな岩から削り出したような、力強くて芸術的なたたずまいを見せる。それは、神による創造物を最も優れた形で表現したダビデ像のごとき、肉感的で動的で、高回転型の自然吸気6.5リッターV型12気筒の魂を宿す、アグレッシブな内面をあらわしたものであるといえる。
先進の運転支援技術を内蔵し、快適装備も標準化した「Purosangue」は、これからの時代を象徴するハイエンド・スポーツカーだ。シートに座る権利を得た者は、人馬一体となって湧き出るエネルギーに感極まるに違いない。
主要諸元 | |
全長×全幅×全高 | 4,973×2,028×1,589mm |
車両重量 | 2,033kg |
駆動方式 | 4WD |
トランスミッション | 8速DCT |
エンジン | V型12気筒、6,496cc |
最高出力 | 725PS/7,750rpm) |
最大トルク | 716Nm/6,250rpm |
車両価格 | ¥47,600,000~(税込) |
STAFF
Photos: Ferarari Japan
Writer: Kaori Sakurai
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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