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プジョーにとって400シリーズ、つまり400番台の車名を持つモデルと言えば、伝統的にDセグメント(中型車)を担うシリーズ。その歴史は1935年のパリモーターショーで姿を現した『401』に始まり、戦後には世界的な成功を収めた『403』、『404』、『405』へと歴史を紡いできた。そして流麗なデザインで知られる『406』へと時は流れ、2004年にはその個性豊かなデザインによって映画『TAXI』の劇中車としても広く知られた『407』が登場する。そして現在、新たな担い手となっているのが2023年に誕生した『408』シリーズだ。クーペスタイルを融合させたファストバックスタイルのクロスオーバーとして支持されてきたプジョー『408』だったが、今年(2026年)の6月25日にはフェイスリフトによって新しいデザインが与えられて登場。90年あまりに及ぶ歴史とともに磨かれ、進化を続けてきたモデルの“最新”を爽やかな秋風が吹き抜ける東京の街へと乗り出してみた。

パリ・サントノレ通りと言えば、高級ブランドの旗艦店などが立ち並ぶ世界屈指のラグジュアリー街である。そんな高級店の間に埋もれるようにしてある小さなホテルを見つけたのは耐久レースとして知られる「ル・マン24時間レース」の魅力にはまり、毎年のように通っていた頃のこと。白状すればコーディネーター氏の助言に従い宿泊したフランス初日の宿は、サントノレ通りの東端エリアにあった。歴史を感じさせる佇まいで間口は狭かったが居心地はとても良かった。目の前には朝食も採れる小さなカフェまであったし、なにより観光客がそれほど多くないというロケーションが好ましかった。おまけに地下駐車場にも近く、レンタカーを滑り込ませるのにも重宝した。
翌朝、気になっていたカフェで朝食を取り、レースが開催されるル・マン市まで一気に駆け抜けた。その時に借りていたのが1987年に発売され、欧州では1997年まで製造されたプジョー『405 ベルリーナ』(セダン)だった。日本国内でも何度となく試乗し、乗り味や使い勝手の良さを知っていたから「フランスでは『405』に乗ろう」と決めていた。
日本の道にも適応できると感じていた見切りのいいボディ、そしてしなやかな足と比較的小さなエンジン(1.6リットルだったか……)を活発に回しながら走る走行感はフランスの道にフィットしていた。もちろん中型セグメントだからキャビンも広く、夜を徹して繰り広げられる24時間レースを取材するには車中泊(仮眠程度だが)も比較的楽にこなせた。その際の印象が良く、帰国後には、『ベルリーナ』以上に実用性が高い『ブレーク』(ステーションワゴン)の中古車を真剣に探したほどだった。



そんな懐かしい話を思い出したのは最新の『408 GT ハイブリッド』のステアリングを握り、爽やかな風が吹き始めた都内へと乗り出したときだった。
今回のフェイスリフトで最大のトピックと言えば独自性の高いエクステリア、とくにフロントとリアまわりのデザインや、ホイールをリニューアルしたこと。これまでも評価の高かった日本の立体駐車場に収まるサイズ(全長4700mm、全幅1850mm、全高1500mm)で、都内での日常ユースにはジャストサイズとも言える扱いやすさは、何度試してみても感心する。その上でブレークというかSUVというか、まさにクロスオーバー的な作り込みによって高い実用性もある。クロスオーバーとは、なんとも都合のいい言葉であるが、どのような要望にも“きっちり対応してくれる存在”を現していることを『408』自身が証明してくれていた。
さらに、1.2L直噴ターボ+電動モーターという“燃費に寄せた構成”と6速デュアルクラッチトランスミッションの組み合わせによるハイブリッドシステムも評価ポイント。最高出力136ps、最大トルク230N・mというパワーソースはプジョーの『3008』や『5008』といったクロスオーバーSUVと共通する。車重は1,500kgちょうどであり、加速感や町中でのレスポンスに物足りなさはほぼ感じない。
敢えて言うならば、高速などでの合流時にごくまれに「あ、もう少しだけ力が……」と感じたこともあったが、通常ではほとんどパワー不足でストレスを感じることはなく、排気量の小さめのエンジンを元気に回しながら、というフランス車らしさを感じる。なりより、街中ではEV比率が高く、走行の50%程度がEVという印象で、むしろロードノイズが少々気になるほどの静粛性とスムーズネスを感じることができた。


走りを全体的に俯瞰してみると、“猫足”と表現された“伝統的なしなやかな足技”よりもスポーティーさがまさるが、フランス車好きのノスタルジーにも応えつつ、現代の走りのテイストを加味して仕上がった味わいは「路面とのコンタクトを大切にしつつ、不快な衝撃はうまくいなしていく」と言った印象で、フランス車ならではの心地いい走りは失われていない。
そんな上質感を味わえる走りと符合するように、内装ではアルカンターラ ® /テップレザーの標準化、そしてアンビエントライト等の演出も充実が図られている。
しばらく走り、新色の「フレア・グリーン」をまとった美しいフォルムを眺めた。当然ながら今回の最大の変更点であるフロントマスクはもっとも目を引くポイント。『308』とも共通する“ライオンの爪痕”をモチーフにしたライティングは、実に個性的。グリルのセンターで輝くライオンのエンブレムも発光式であり、注目度は自然と上昇する。
さらにリアへと回れば赤く点灯する「PEUGEOT」の発光レタリングが目に飛び込んでくる。このタイプの発光エンブレムはプジョーブランドとして初めて採用されたという。そしてデザインが大きく変わった19インチホイールも足下を引き締めている。同時にアクセントグリル、フロントリップスポイラー、リアバンパーなどといった「ブラックパーツ」もメリハリが効いていて、シャープな印象を受ける。この辺の清楚でありつつも細部で大胆さを表現する上手さはプジョーらしいと言える。
自動車評論界の巨匠として知られていた徳大寺有恒氏が生前「国を知りたければ、その国の車に乗りなさい」と常日頃から言われていたことを思い出した。最近ではグローバル化の美名に隠れ、失われつつある“らしさ”を今、強烈の感じるとすれば『408 GT ハイブリッド』は、その最右翼にくる存在だろうと思う。



主要諸元 | プジョー 408 GT ハイブリッド |
| 全長×全幅×全高 | 4,700×1,850×1,500mm |
| ホイールベース | 2,790mm |
| 最小回転半径 | 5.6m |
| 車両重量 | 1,500kg |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| エンジン | 水冷直列3気筒DOHCターボ 1,199cc |
| 最高出力 | 100kW(136ps)/5,500rpm |
| 最大トルク | 230N・m/1,750rpm |
| モーター最高出力 | 15kW(20ps)/4,264rpm |
| モーター最大トルク | 51N・m/750-2,499rpm |
| 燃料消費率 | 20.4km/l(WLTCモード) |
| 車両本体価格 | 559万円~(税込み) |
AUTHOR
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
STAFF
Writer: Atsushi Sato
Editor: Ryo Usami
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