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もうすぐバレンタインデー。ウイスキーとチョコレートのペアリングを愉しみにしている方も多いのではないだろうか。樽での熟成により芳醇なフレーバーをまとったウイスキーは、チョコレートだけでなく和菓子など、幅広い甘味とのペアリングを愉しむことができる。特に、シングルモルトはフレーバーが個性豊かで、ペアリングがはまると、単体では味わえない表情を見せてくれる。まさに、“口福”な体験だ。

2010年代に入り、ウイスキー好きを虜にしてきたミズナラ樽熟成のウイスキー。ジャパニーズウイスキー『山崎』は、ミズナラ樽に由来する白檀や伽羅の香木を想わせるフレーバーの魅力を、世界に知らしめたのブランドのひとつと言って良いだろう。
1923年、万葉の昔から“名水の里”と名高い山崎の地で、日本初のモルトウイスキー蒸溜所となる山崎蒸溜所の建設が始まった。サントリーの創業者である鳥井信治郎氏が、ウイスキーづくりの理想郷を求め、たどり着いたのが山崎の地だったという。1929年には、スコッチウイスキーの伝統的な製法を踏襲してつくられた、初の日本産ウイスキーが発売された。
しかし、1940年代になると、戦争の影響で海外からの熟成樽の輸入が困難となってしまう。そこで、日本国内の様々なオーク材から熟成に適したものを探し求め、選ばれたのがミズナラだった。ミズナラは”水楢”の漢字が当てられるほど、水分を多く含み、燃えにくい特性を持っている。高級な家具材として珍重されてきたが、ウイスキーを熟成してみると原酒が漏れやすく、製樽作業は苦労の連続だったという。
さらに、新樽でウイスキーを熟成すると木香が強すぎることから、ブレンダーからは必ずしも高い評価を得られなかったそうだ。しかし、新樽では強すぎた木香が、長期熟成することで白檀や伽羅の香木を想わせる独特のフレーバーに変化していく。
2000年代に入り、『山崎12年』や『山崎18年』が世界的なコンペティションで高い評価を獲得。神秘的なフレーバーは、サンダルウッドの香りとして、海外のウイスキー好きをも魅了していった。
山崎蒸溜所では100タイプ以上の原酒のつくり分けをしており、多彩な原酒をブレンダーの熟練の技でかけ合わせることで、奥深いフレーバーを生みだしている。『山崎12年』は、ホワイトオーク樽を主体に、アクセントとして、スパニッシュオーク樽と、ミズナラ樽で熟成した原酒が用いられている。ミズナラの樹が樽に適した太さまで成長するには、約200年かかるといわれており、ミズナラ樽はとても希少なのだ。『山崎12年』は、バニラの甘やかさと、熟した柿のようなフルーティーさ、白檀や伽羅の香木を想わせる神秘的なフレーバーが印象的だ。
ペアリングには『いったつみとらどう』の『椰子の白わらび餅』を。日本料理店『神楽坂石かわ』と『虎白』の職人が、練りものの技法で、わらび粉とココナッツミルクを仕立てあげた。ココナッツミルクの甘い香りが優しく広がり、『山崎12年』から、白檀や伽羅のヴェールに包まれたココナッツの甘さを引き出してくれる。もちもちの食感は、『山崎12年』の深みのある味わいをしっかりと受け止める。
2025年にオープンした、いったつみとらどう 羽田空港店限定品として『椰子の白羊羹』も。こちらは賞味期限も2カ月弱あり、冷暗所での保存でOK。白生餡とココナッツミルクのハーモニーは上品で、シルキーな食感と共に、優しい甘さが広がっていく。海外の方へ、ジャパニーズウイスキーの繊細なフレーバーを伝える相棒として、活躍してくれるだろう。

1918年、本場でのウイスキーづくりを学ぶため、単身スコットランドに渡った竹鶴政孝氏。日本でのウイスキーづくりの理想郷を求め、スコットランドに似た冷涼な気候風土を持つ、北海道・余市の地に出会う。1934年には、のちにニッカウヰスキーとなる大日本果汁を設立。余市川が石狩湾に流れ出る河口に建つ余市蒸溜所は、潮風と川霧が運ぶ湿潤で澄んだ空気に包まれており、ウイスキーの熟成に適しているのだ。
余市蒸溜所では、ウイスキーの製造を開始してから90年経った現在も、世界でも稀有となった石炭直火蒸溜を続けている。竹鶴氏が学んだロングモーン蒸溜所の製法と設備を踏襲した、1,000℃を超える火力の石炭直火蒸溜と、下向きのラインアームを持つストレートヘッド型のポットスチルから生み出されるのは、力強く重厚なスピリッツ。ボリュームのある酒質はスモーキーな香りと相性が良く、ピートが効いているのが『シングルモルト余市』の特徴だ。樽詰めされたスピリッツは、石狩湾から吹く潮風に磨かれながら、熟成を重ねていく。そのせいだろうか、『シングルモルト余市』のウイスキーからは、力強いピートのフレーバーと麦の香ばしい甘さの奥から、ほのかな潮気を感じるのだ。
スモーキーな潮気をまとった『シングルモルト余市』に、『ショコラティエ パレドオール ブラン』のホワイトチョコレートを合わせると、コクのある甘さが際立つ。『ショコラティエ パレドオール ブラン』は、自社でカカオ豆からホワイトチョコレートを作る、日本初のブランド。1996年、パティシエとして活躍していた三枝俊介氏は、未知への探求心に突き動かされフランス・リヨンに渡る。ショコラティエの第一人者ベルナシオン氏から、伝統的なビーントゥバーのショコラづくりを学ぶためだ。ビーントゥバーとは、カカオ豆の選別からショコラを完成させるまでの全工程を自社で行う製造方法。まだ、日本にはビーントゥバーという概念が浸透していない時代だったが、手間がかかる分、ショコラでの表現の幅が広がると確信した三枝氏。2004年にショコラティエに転身し、2014年に清里にビーントゥバーの工房を、2019年にはビーントゥバーのホワイトチョコレート専門店を青山に開業した。
青山一丁目駅に直結した店舗には工房が併設されており、製造工程をガラス越しに垣間見ることができる。カカオ豆からホワイトチョコレートになるまでは、実に、約20日間…!カカオ豆の風味を引き出すために産地ごとにローストする温度や時間を調整したり、滑らかなテクスチャーにするために職人の手仕事が施されたホワイトチョコレート『パレドオール ブラン』は、うっとりする口どけ。カカオバター由来のコクのあるテクスチャーは、重厚な『シングルモルト余市』との相性も抜群だ。
スコットランドとフランスの伝統的な製法でつくられたウイスキーとショコラが奏でるハーモニーからは、低音ならではの穏やかな音色が、心地良く響いた気がした。

かつて、「マッカランには、とらやの羊羹“夜の梅”」と謳った文豪がいた。日本にウイスキー文化を根かせたひとり、芥川賞作家の開高健氏である。洋酒に餡とは意外な組み合わせに思えたが、トロみのあるテクスチャーのマッカランに、後味の良い濃厚な甘さの“夜の梅”を合わせると、シェリー樽熟成のウイスキーに潜んでいる酸味が際立ち、マッカランの甘味をより活き活きと感じられるのだ。
それから40年余り。シェリー樽熟成のウイスキーも餡も、新しいおいしさを表現するようになっていた。1967年にスコットランドのスペイサイド地方で誕生したグレンアラヒー蒸留所は、2017年にウイスキー界の伝説的プロデューサー ビリー・ウォーカー氏が蒸留所を取得以降、シェリー樽熟成のリッチなフレーバーをハウススタイルとしてきた。ビリー氏は、熟成においてスピリッツが様々な種類の木に触れることが大事と考え、シェリー酒の熟成に使われたアメリカンオーク、ヨーロピアンオークだけでなく、シェリー酒や赤ワインを熟成したフレンチオークや、アメリカンオークの新樽も用いている。『グレンアラヒー12年』にはこれらの熟成原酒がブレンドされており、幾重ものフレーバーが重なることで、奥行きある味わいに。苺ジャム、ナツメグ、バタースコッチ、黒糖と様々な甘味が織りなす、長い余韻が印象的だ。可憐な薄ピンクのスイートピーから、フレッシュなピンクのガーベラや深紅のバラ、紫のトルコキキョウが咲きほこる、お花畑にいるような気分にしてくれる。
とらやの伝統的な餡は、フランボワーズとの出会いで、おいしさを進化させていた。アジア人シェフとして初めてフランスでミシュランの三つ星を獲得した小林圭シェフが手掛ける『Maison KEI』の『あんコンフィチュール フランボワーズ』は、餡にフランボワーズの甘酸っぱさを加え、小豆の素朴な甘さを華やかに昇華。スコーンに添えて食べると、フランボワーズの瑞々しい甘味から、餡の濃厚な余韻へと展開が愉しめる。『グレンアラヒー12年』とペアリングすると、お花畑に木苺が実ったかのようだ。バニラアイスに『あんコンフィチュール フランボワーズ』を添え、グレンアラヒー12年』をかければ、大人のためのデセールに。後世に語り継ぎたくなるマリアージュを、好みの食べ方で味わってみて欲しい。
ロイヤルクランダービー 東京ショールーム

1750年に芸術家アンドリュー・プランシェ氏が、ダービーの地に工房を設立。1761年9月、ジョージ3世の戴冠を記念する特別な作品を制作して以降、すべての英国君主へ作品を納めてきた。1890年、ヴィクトリア女王が社名に“ロイヤル”の称号を冠することを正式に許可。1911年には、タイタニック号の一等食堂用食器の製造の依頼を受ける。現代でも、すべての製品の全工程を英国で行っている。
東京都中央区京橋1-5-8
営業時間:完全予約制
TEL 03-6262-1395
https://royal-crown-derby.jp/
オールドイマリ プレート(21.5cm)

世界中で愛される名作パターン『オールドイマリ』は、1882年に誕生。ヨーロッパ王侯貴族を魅了した日本の伊万里様式がモチーフになっている。豪華絢爛で目を引く美しいデザインで、卓上を雅やかな雰囲気に。希望小売価格68,200円。
ロイヤルアルバートホールプレート(21cm)

1871年、ヴィクトリア女王が、亡き夫・アルバート公に捧げた演劇場、ロイヤル・アルバート・ホール。その複雑な建築様式を意匠にした『ロイヤルアルバートホール』コレクションは、繊細なグレーが普遍的な構成美を伝えてくれる。希望小売価格16,500円。
ロイヤルアントワネットプレート(26cm)

『ロイヤル アントワネット』は、ロイヤルクラウンダービーがこれまでに発売したコレクションの中でも最も愛されているコレクションの1つ。繊細な星と細部までこだわった手描きの22カラット ゴールドで飾られた魅力的な花柄のコレクションは、ディナーパーティーからアフタヌーンティーパーティーまで、華やかに彩ってくれる。エリザベス2世は、ウィンザー城で朝食用として愛用されていた。希望小売価格61,600円。
グレンケアン・クリスタル・スタジオ
1981年、レイモンド・デービッドソン氏によってグラスゴーに設立。40年以上にわたり、家族経営で品質を追求してきた。多くのウイスキーブランドから、特別な製品のデキャンタの制作を任されている。2006年、英国女王賞企業部門を受賞。
ブレンダーズグラス

著名なブレンダーや蒸留所マネージャー等、数多くのプロフェッショナルの意見を取り入れて、ウイスキーの持つ色合い、香り、そして味を堪能するために完成させた究極のウイスキー用グラス。ウイスキーの命である香りを逃さない形状ながら、飲み易さを追求。程よい重さで手にしっかりとなじむ。毎年500万個の販売実績をほこる。参考小売価格1,100円。(株式会社 ウィスク・イー)
コピータリッド付きグラス

ボウルが卵形の形状になっており、液面から立ち上る香りがすぼんでいる口の部分で凝縮されるため、香りがひろい易い。蓋付で、時間と共にアルコールと一緒に揮発してしまう芳香成分を逃さずに溜めておくことができる。また、グラスの口の部分は見た目もスタイリッシュなコールドカット仕上げのため、口をつけるふちの部分に膨らみが無く、ウイスキーを口に含む際、とてもスムースに舌の上にウイスキーが流れ込んでくれる。参考小売価格1,980円。(株式会社 ウィスク・イー)
●掲載商品の価格はすべて、税込み価格です。
AUTHOR
慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーWEB』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了され、蒸留所の立ち上げに参画。ウイスキープロフェッショナルを保有し、酒類コンペティションの審査員も務める。公社)日本観光振興協会 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 会員。
STAFF
Photos: Ami Kuroishi
Writer: Arisa Magoshi
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