AdvancedClub 好評に終わった京都・町家エリアでの「長く愛せる家具と季節を感じるデザート」イベントをレポート!
大阪の梅田周辺は、近年、大規模再開発が進んでおり、JR大阪駅周辺の商業施設「グランフロント大阪」「ルクア大阪」をはじめ、今年は「グラングリーン大阪」や「KITTE大阪」もオープン。東京よりも活気があり賑わっている。このエリアに27年前に開業したラグジュアリーホテルの先駆的存在、ザ・リッツ・カールトン大阪は、この秋、大規模な客室改装を完了。最高のフレンチを味わい、関西旅の拠点にしたい。
日本初のザ・リッツ・カールトンが大阪の真ん中に開業したのは、1997年(平成9年)5月だった。当時、大変な話題を呼び、開業からしばらくは宿泊しなくても一度見てみたいという人も殺到していた。筆者もその年の夏、真新しいザ・リッツ・カールトン大阪に、出張のついでに滞在したことがある。それまでに香港のザ・リッツ・カールトンへ行ったことがあったのだが、その落ち着いた欧風の雰囲気と高級感は共通していて、何よりホテルスタッフの完璧なまでのエレガントなサービスに舌を巻いた。それまでに日本にはなかったラグジュアリーホテルの誕生だったと言える。
あれから27年あまり。今年春から行われていた大規模な客室のリニューアルが完了し、ザ・リッツ・カールトン大阪は「承継と新生」というコンセプトのもと、リボーンした。
客室のリニューアルは、例えば、客室階の廊下のカーペットをロビー階の大理石の色を使用したりして、空間の連続性を持たせている。客室内も、開業当時からの花柄をモチーフにした彫刻風のパネルをヘッドボード上に取り付けたり、壁紙の色も温かみのある柔らかな色合いに変更したり。寝室には花柄をモチーフにしたカービングの装飾壁を採用したりと、より心地よく、安らぎをもたらす客室空間になっている。
また、専任コンシェルジュが常駐する34階のクラブラウンジも、カーペットや家具を新調しリニューアル。クラブラウンジではアフタヌーンティーを含む5回のフードプレゼンテーションがあり、こちらに滞在すれば、食事のために外出する必要はほぼなくなりそうなほど充実している。
このザ・リッツ・カールトン大阪には、ダイニングとしてフランス料理の『ラ・ベ(La Baie)』がある。長年、料理長を務めているフランス・ブルターニュ出身のクリストフ・ジベールさんの卓越した技術とセンスにより、『ミシュランガイド京都・大阪』で7年連続13回目の一つ星を獲得している名店だ。今回、ランチタイムにこの『ラ・ベ』の「シニャチュール」コースを試食させてもらった。
一歩、足を踏み入れると、そのダイニング空間はヨーロッパの晩餐会が行われてもよさそうなくらいの格調の高さ、品の良さにこちらの姿勢も改まるほど。しかしテーブルに着くとしっとりと落ち着いて、安心感がある。決して緊張しすぎることのない、この独特の空気感、まさにグランメゾン。
かつてのミシュランの編集長は、評価は皿の上のみ、つまり料理だけで店内空間や設えは関係ないというようなことを発言していたが、長年、ヨーロッパへ行くたびに各国でミシュランを利用していた筆者からすると、評価されている名店は必ず店内の設えも素敵だった。一流の店は料理だけでなく、空間とサービスも素晴らしいはずだ。
最初に手でつまめる小さなアミューズが3品登場。これに続いて前菜は「オシェトラキャビア フェンネルのムース 繊細なブイヤベースジュレ」。最初からじつに繊細な味わい。かつてテレビドラマの「グランメゾン東京」で、最初の皿で客の心をつかまなければならないという話が出てきたが、まさにその通り。
続いて驚かされたのが、バター。近年、フレンチでもバターを出さない店が増えるなか、ここではしっかり供される。それもそのはず、シェフはバターで有名なブルターニュ出身。巨大な筒状の無塩と、海藻を練りこんだ有塩の2種類のボルディエバターがワゴンで運ばれてきた。暖かいパンとともに、ワインも進んでしまう、もうこれだけですっかり『ラ・ベ』の世界の虜だ。
次の皿が「フォアグラカナールとのテリーヌ パンデピス根セロリのジュレ カシスペースト」、そして「帆立貝柱のマリネとブイヨン、食感の異なる蕪 柚子」と続く。いずれもストレートかつ伝統的なフランス料理をベースに、食材の食感の対比やソースの酸味とのバランスが絶妙で、軽やかに食べ進んでいける。
ここまで料理に合わせたワインは、アンリ・ジローのシャンパーニュ「エスプリ・ナチュール G」、アルザス・トリンバックのリースリング2015が供された。
いよいよメインの料理が登場する。『ラ・ベ』の名物「オマールブルーブランデーと海草のココット蒸しスパイスのきいたソース」だ。まずは、ココットごと蒸しあがったばかりのオマールブルーを見せてくれる。その姿のまあ立派なこと。
オマール海老の一種で、青みがかった色をした殻をもつことからオマールブルーと呼ばれるが、ここで使われているのは最高級とされるフランス・ブルターニュ産。厨房では生きたままオマールブルーを保管できる水槽を擁しており、最上の状態で調理されるのだ。
さあ、皿に美しく盛り付けられてオマールブルーが運ばれてきた。目の前でソースをかけて仕上げてくれる。ソースは2種類。いずれもビスクソースだが、色の薄い方はオマールブルーの海老味噌などをより多く使い、濃い方は様々なスパイスを効かせているという。
さっそく身を口にする。なんと軽やかな食感と甘み。かなりレアながらも絶妙な温かさとコニャックと海藻で蒸された風味が。ふたつのソースもそれぞれに身を包み込み、豊かな余韻を感じさせる。特に濃い色のソースは濃厚かつスパイシー、というものの辛いわけではなく、身の味わいを引き立て、香りの余韻が数十秒も鼻腔に漂う。
そしてオマールブルーの爪の部分は別皿で供される。同じくビスクソースだが、ザバイヨンソースがかけられていて、これがまた全く別世界の甘い香りを残す。火の通し方もしっかりしていて、同じオマールブルーでもその違いを存分に楽しめるメイン料理となっている。
しかも、この料理に添えられるワインは、ブルゴーニュの赤ワイン。しかも名手ジャン・タルディのオート・コート・ド・ニュイ2020。この濃密な組み合わせには脱帽した。
かなり満たされた気分で、最後のデザートに。事前に選んだのは「クレープフランベトラディショナル バニラアイスクリームと柑橘のヴェリーヌ」。そう、我々の世代なら、若いころによく出会ったあのクレープシュゼットのこと。ワゴンが運ばれてきて、目の前で調理して仕上げてくれるのだ。昔は適当な目分量でつくる店も多かったが、『ラ・ベ』では、このクレープフランベをつくる際のオレンジジュースや酒の分量をきっちり決めているという。
できあがった温かいクレープフランベを口にすると、さらりとしながらコクがある軽やかな甘さ。NHK大阪局で制作された朝ドラ「カムカムエヴリバディ」では、人の心を安らかにするものとして甘味に大きな役割を与えていたが、『ラ・ベ』のクレープフランベは、心を和ませるだけでなく、ザ・リッツ・カールトン大阪のダイニングならではの大きな充足感をコース料理の締めとして調和させる稀有な存在となっていた。ここに来たら、ぜひクレープフランベを注文していただきたい(追加料金1400円)。
最後にプティフールとお茶なども用意されるが、あとはぜひ実際に足を運んで、『ラ・ベ』の素晴らしい世界を体験していただきたい。ちなみに筆者はこれだけのフルコースをいただいたが、全くお腹が持たれることもなく、一般的なフレンチとは食後感が物理的にも違ったことを一言申し添えておきたい。
まさに至高のフレンチ、大阪にあり。2025年は万博も開催される。このザ・リッツ・カールトン大阪を、関西旅の拠点にするのはいいかもしれない。
『ラ・ベ』の食事券(ランチ)をペアで1組様に抽選でプレゼントいたします。
※ランチは、この記事で紹介した内容と同じコースです。
◾️締め切り:2025年2月9日23:59まで
ご応募いただくには小学館IDへのログインが必要です。是非、小学館IDへ会員登録(無料)の上、ご応募ください。
STAFF
Photos & Writer: Indy Fujita
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