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世界9か国でビストロから3つ星のファインダイニングまで、約30の飲食店の指揮をとる、アラン・デュカス氏。33歳でモナコの「ル・ルイ・キヤーンズ」に料理長として就任し、ミシュランガイドで3つ星を獲得。続いてパリ、ロンドンでも3つ星を獲得し、長い間、フランス料理界を牽引し続けている著名なシェフである。一方で、1999年に設立した「デュカス・パリ」を通じて飲食サービスとホスピタリティ業界において様々なヴィジョンを展開してきた。フランス料理の継承、後進の育成、日本の食文化振興など料理人にとどまらない幅広い活動を精力的に行っている。
「旅する料理人」として世界を飛び回る、アラン・デュカス氏。今、彼が最も情熱を注いでいるのが「ショコラ」とうこともあり、今年オープン5周年を迎えた、東京・日本橋の「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房」にて話を伺った。
その名の通り、店舗にショコラの工房を備える。アラン・デュカス氏は、インタビュー前に、まず工房へ入りショコラの試食をして、スタッフと言葉を交わしてから、取材陣の前に姿を現した。
「チョコレートの原料となるカカオ豆のセレクションは、私が自ら行っています。世界最高峰のプランテーションで育てたカカオ豆をパリに届けて焙煎し、パリ到着から72時間以内にはオリジナルのクーベルチュール(製菓用チョコレート)を完成させます。そのクーベルチュールをフランスから日本へ送り、東京の工房では、ショコラ製造の全工程を行っているのです。ガナッシュ(チョコレートと生クリームを合わせて滑らかにしたもの)もプラリネ(焙煎したナッツ類とキャラメルを砕いたペースト)も」
つまり、ショコラを東京の「現場で」作っているのだ。インタビューの前に、「ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房」で、ショコラと焼き菓子などの全権を担う、エグゼクティブ・シェフ・ショコラティエ&パティシエのパトリック・パイエー氏に工房を案内してもらった。その際に、できたてのショコラを試食させてもらったが、その口溶けの滑らかさと、香りの高さは感動的なものだった。
展開する国や地域の食材や文化に敬意を表した料理をモットーとするアラン・デュカス氏。東京工房を設立した理由は、ショコラ作りの魅力を多くの方々に直接、見て知ってもらい、ショコラティエという素晴らしい職業を広め、職人技術の継承を図る狙いもあるという。そして、日本ならではの食材も積極的に取り入れ、ショコラやデザートに仕立てている。
「16歳で料理人の道を歩み始めましたが、ル・ノートルではパティスリーも担当して。19歳の頃、料理人になるか、ショコラティエの道を選ぶか真剣に悩んだんですよ」
ここで、同氏の経歴に触れておこう。料理の世界に入ったのは16歳の時。以降、ミッシェル・ゲラール、ガストン・ルノートル、ロジェ・ベルジェなど、著名なシェフの店で経験を重ねる。ロジェ・ベルジェの「ムーラン・ド・ムージャン」では、同氏の料理における本質的要素となるプロヴァンス料理に出会い、1978年には、後に“我が師”と仰ぐ「アラン・シャペル」に出会っている。
そして1981 年、ジュアン・レ・バンのホテル「オテル・ジュアナ」内のレストラン「ラ・テラス」にシェフとして就任、1984 年にミシュラン・ガイドブックで 2つ星を獲得。その後、 1987 年にモナコの「オテル・ド・パリ」内のレストラン「ルイ・キャーンズ」の総料理長に就任し、33 歳にして、ホテル内にあるレストランとしては史上初の 3 つ星を獲得する。1998 年には、パリの「アラン・デュカス」でも 3つ星を獲得し、6 つの星を同時に持つこととなった。
若い時分に「とても官能的で魅惑的な素材」であるショコラに魅了されたまま、「いつの日か自分のショコラを作りたい」という夢を持ち続け、35年余りもの時を経て、2013年、パリに「ル・ショコラ・アラン・デュカス」の工房を開業したのだ。
「工房ではショコラ作りのノウハウを伝授しています。人を育て、未来へと繋いでいくということがとても重要なこと。〝覚えてしまえば、ほんの1日で作れるものを、一生かけて改善し、高めていく″ことが重要なんです」
2010年には、ジョエル・ロブション、ミシェル・トロワグロ、アンヌ=ソフィ・ピック、ティエリー・マルクスなど、フランスが誇る星つきシェフ15名が「コレージュ・キュリネール・ド・フランス」を結成し、その代表をデュカス氏が務める。フランス料理の継承と発展、世界への発信などの活動を行うが、日本でも毎年開催されている「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、同団体が発起人となり2010年にフランスで誕生したレストランイベント「Tous au Restaurant」(トゥス・オ・レストラン=皆でレストランへ)の日本版だ。
さらには、「コレージュ キュリネール 日本」も立ち上げ、最高顧問として、ガストロノミーに関わるすべての人々と共に、日本の食文化振興のために国際的に活動している。
10年以上前から地球環境の問題などにも取り組み、SDGsが提唱されるずっと以前から、生産者に敬意を払い、「食材の無駄も出さないように料理人は意識しなければならない」と、訴え続けてきた。
コロナ禍であっても、その活動は活発だ。レストランは営業できない期間もあったが、2020年に京都・嵐山に「MUNI アラン デュカス」を、21年にはパリに新しいコンセプトのベジタリアンレストラン、22年には同じくパリに、ビスキュイとアイスクリームの工房&ブティックもオープンしている。時間をかけて準備していた日本酒「七賢 アラン・デュカス スパークリング サケ」も、遠隔でのミーティングなどで打ち合わせを重ね、来日がかなわない中で発売された。
詳しくは語れないけれど、南極での取り組みや宇宙食まで、多くのことが同時に進行しているという。「ビジネスは、いずれついてくるものだよ」と、最後にひと言。
いつも前向きで、興味のあることには全力で挑む。そして、常に料理人であることを忘れない。今後も動向に注目が集まりそうだ。
STAFF
Writer: Fukuko Hamada
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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