成熟世代のタブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
2001年の創設から20年。リシャール・ミルは入手が極めて困難な腕時計として知られる。 販売終了モデルは著名オークションなどで取引され、比類なき独創性と希少性、そして価格を超えた価値を持つ“アートピース”となっている。
欲しいけれど買えない、現物がない品物には共通点がある。製造数の少なさ、他の何者にも似ていない独創性、長い伝統とたゆまぬ革新に裏付けられた“ブランド力=信頼性と語るに値する物語の存在”だ。
自動車で言えばイタリアのフェラーリが好例。ニューカー、ヴィンテージカー共々世界中から強い引き合いがある。サザビーズなどのオークションで、往年の名車が高値で落札された例も枚挙に暇がない。
2021年、そのフェラーリとのパートナーシップ締結を発表したリシャール・ミルは、いま最も手に入れることが難しいタイムピースのひとつ。ブティックを訪れてみるとその事実が分かる。展示されている本数は片手で数えられるはず。そのほとんどが展示用の時計である。
リシャール・ミルが驚異的なのは、先述した“伝統”がまだない、ブランド創設からわずか20年にして超レアピースになったこと。
ちなみにフェラーリとの提携が発表されるや、世界中のブティックに問い合わせが殺到したという。手描きのレンダリングスケッチすら未だ公表されていないのに。
価値を表す指標のひとつが価格。販売が終了しているリシャール・ミル ウオッチの取引実績を、サザビーズのウェブサイトで調べてみた。
RM 010が20年12月に10万7100USドル=約1167万円で落札されている(06年発表時の国内価格は530万円 ※)。RM027は15年4月に392万香港ドル=約5566万円で取引成立(10年発表時の国内価格は4700万円)。RM 035は18年に93万7500香港ドル=約1331万円で落札された(11年発表時の国内価格は760万円)。
サザビーズの時計部門の総責任者、サム・ハインズ氏はこう語る。
「コロナ禍でより顕著になったのは、入手困難なモデルたちに一層の関心が集まっていると見受けられること。生産数のごく限られた限定品や、コンディションが際立つヴィンテージ時計に興味を持つ人が多い」
同社のオークションの時計部門の総売上高は伸びており、20年は約107億円。世界84ヵ国からオークションへの参加があり、特にアジアでの売り上げ伸長が顕著とのこと。
「若いコレクターが増え、市場は活性化しています。過去の金融危機後を思い起こすと、高級品や携帯できる資産となる物品の価値は上昇するでしょう。技術力が高く魅力的な時計が登場し、また、個々のコレクターの知識が豊かなのが時計市場の特徴。未来は明るいと思います」
美術商・美術品プロデューサーの経験がある作家の野地秩嘉氏は「精神性を内包する実用ツール、道具は、普遍的な価値を持つ」と言う。
「例えば日本刀は、使うために刀匠が魂を込めて作っている。飾るためではなく、実際身につけ使うために丹念に作るものには作り手の魂が入るんです。リシャール・ミルさんが送り出す腕時計も同様なのでは」
ルネサンスの芸術家ミケランジェロにまつわるこんなエピソードも。
「諸説ありますが、ミケランジェロはダヴィデ像をどう作ったか、と問われたときにこう答えたとか。『まずは大理石を見る。あとはダヴィデでない部分を削り取るだけだ』。リシャール・ミルさんは新素材や新技術、新機軸を見据え熟考して、どういう精神性、本質を持つ時計を創るか考え抜いているのでしょう」
高価格でありながら、それ以上の価値を持つリシャール・ミルは、腕時計の範疇を超えた現代の芸術品へと昇華したと言えるだろう。
2020年発表。初の完全自社製フライバッククロノグラフを搭載した、最新の代表作のひとつ。文字盤の2時位置に60分積算計、3時位置にファンクションインジケーター、5時位置に 24時間積算計、9時位置に秒針を持つ。
2011年発表。ベゼルにアルミニウム、ケースにマグネシウム、インナーベゼルにカーボンファイバー、ムーブメントにチタニウムなどの複数の特殊合金を使用。ストラップを含む総重量41gを実現。手巻き。生産終了。
2010年発表。カーボンナノチューブ配合複合材ケースやチタン製地板、アルミニウムリチウム製ブリッジを採用。時計ケース本体の重量は驚異の13g。ストラップ付きでも20g。手巻き。世界限定50本。生産終了。
2006年発表。初期の人気モデル。自動巻きムーブメントは可変慣性モーメントローターを備え、腕の運動量に拘わらず常に高い精度を保つ。RGのケースは139gと、ゴールド製としては軽量。生産終了。
1744年設立。美術、ラグジュアリー品など50分野をグローバルで取り扱う。2020年の業界における売上高シェアは50.4%で首位。顔写真は同社時計部門の総責任者サム・ハインズ氏。
※換算レートは1USドル=109円、1香港ドル=14.2円。発売当時の価格は税抜き価格です。
初出:2021年07月03日発行『AdvancedTime』08号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Richard Mille
Writer: Ken Sudo
Editor: Atsuyuki Kamiyama
『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。
高感度なファッション、カルチャーに好奇心を持ち続け、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、さらなる幅広い教養を求め、進化するソーシャルに寄り添いたい。
何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。
「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。
一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!
vol.023
vol.022
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.021
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.020
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.019
Special Issue.AdvancedTime×ROLEX
vol.018
vol.017
vol.016
vol.015
vol.014
vol.013
Special Issue.AdvancedTime×HARRY WINSTON
vol.012
vol.011
vol.010
Special Issue.AdvancedTime×GRAFF
vol.009
vol.008
vol.007
vol.006
vol.005
vol.004
vol.003
vol.002
Special Issue.01
vol.001
vol.000
成熟世代のタブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
夏の肌疲れを癒す、アロマのパワー
庭師は極めたいし俳優も学びたい。華道や茶道、陶芸にもトライしたい
「ウェレンドルフ」のジュエリーが魅せる“本物の価値”
シックでクラフテッド、それでいて機能的。新時代を迎えた“ジャパンキッチン”
持ち前の「強さ」に「幸福感」が積み重なり、唯一無二の美しさを放つ──。
永瀬正敏が語る『箱男』。安部公房から直接、映画化を託され、27年間諦めなかった石井岳龍監督と形に。前編
イージー・ブリージーでノイジー。伝統車の快音に心が沸き立つ