ミニ丈のデニムを今また、はいていい。そう思えるようになりました

大人のデニムスタイルって、なんですか?

マディソンブルー ディレクター/デザイナー
中山 まりこ

悩んで、向き合って…今の自分だから似合うアイテム。あらゆる変化に合わせて、自由にしなやかに楽しみたい。デニムを自分らしくヘルシーに着こなす中山まりこさんにデニムとの向き合い方を聞きました。

FASHION Dec 4,2021
ミニ丈のデニムを今また、はいていい。そう思えるようになりました

日に焼けた肌とビッグスマイルで、デニム×ジャケットを、自分らしくヘルシーにかっこよく着こなす。そんな中山さんの姿は、多くの女性が憧れる“おしゃれのお手本”。自分らしいファッションを迷いなく満喫している! そんな印象が強い。だが、自身のデニム遍歴について尋ねると「40代のころ、いきなりデニムがはけなくなっちゃったんです」と“デニム迷子”だった過去を教えてくれた。

「30代のころは、シャンブレーのシャツに“リーバイス”の501、“マノロ”のヒールを履けば、サマになったし、デザイナーの魂が込もった“サンローラン”や“ランバン”のジャケットも、デニムのミニスカートさえあれば、自分らしいファッションとして着こなせた。でも、40歳を過ぎたころから、それができなくなってしまった。今思えば、“ありたい自分”と“見せたい自分”が乖離していたんでしょうね。この年で切りっぱなしのデニムのミニスカートなんて、はいてていいの? と若いころから大好きだったものを身にまとうことに、迷いや照れを感じていたんです。着る服がわからなくて、家から出たくないと思う日もありました(苦笑)」

そんな40代を過ごした中山さんだが、今では自身のブランド“マディソンブルー”で、ミニ丈のデニムボトムを世に送り出している。この春のコレクションの中にも、カットオフのデニムショートパンツが並ぶ。「50代になって、貫禄が出たり、皮膚感が変化したことで、好きだったデニムが、また自分の体になじむようになってきた。大きな宝石って、シワが深く刻まれた手にこそ、似合ったりするでしょう? ああいう感覚。この年になったからこそ、若いときに好きだったデニムを、また自分らしく着こなせるようになったんです。自身のブランドでも、思いきってミニ丈のデニムボトムを発売したら、50代・60代の女性が『今またこれをはいていいんだ!』とこぞって購入してくれて、すごく嬉しかったですね。年を重ねて体型が変わったことで、自分に似合う“シャネル”のジャケットにも、ようやくめぐり合えました。今季のショートパンツは、そのジャケットに合わせるイメージから生まれたもの。10年前の自分だったら、どう着たらいいかすらわからなかったと思います。40代でとことん悩んで、改めてファッションと向き合い、おしゃれの“自主練”もたくさんしました。デニムはもちろん、それ以外のアイテムも、試着を繰り返しては見直して…。迷ったからこそ蓄積された経験や知識と、今の自分だから似合うアイテム。それを組み合わせることで、デニムの着こなしも、少しずつアップデートできているように感じます。変化がないと、ただ、“古い人”になってしまうだけ。デニムをはじめとする、流行に左右されないアイテムをおしゃれの軸にすると、自分の装いのわずかな“ブレ”に敏感になれる。自分の変化、時代や環境の変化に合わせて、自由に、しなやかにファッションを楽しんでいきたいですね」

試行錯誤を経て、中山さんが再びたどり着いた、デニムのミニボトム。最後に、このアイテムにまつわる、素敵なエピソードを教えてくれた。「数年前に、パリでポップアップショップを開催したとき、70歳近いフランス人マダムが『あなたのコレクションの中で、このデニムのミニスカートがいちばん好きよ!』と言ってくれたんです。自分もこんな風になりたい! と思わずにはいられない、理想的な女性がかけてくれたその一言に、このままの自分でいればいいんだ、と勇気づけられた。今でもずっと、色褪せない思い出です」

パールやツイードでエレガントな要素を足し算!

中山まりこさんの画像

春夏の“MADISONBLUE”のデニムショートパンツに合わせたのは、“CHANEL”のジャケットと“MADISONBLUE”のボーダーカットソー。足元は“SAINT LAURENT”の白スニーカーで軽やかに。「デニムってカジュアルになりすぎてもいけないと思うんです。だから、ツイードやパールで、エレガントさを足して、バランスをとります」。ラフなイメージの強いカットオフデニム×ボーダーを、ツイードジャケットで大人のフレンチスタイルに落とし込む技はさすが!

デニムに白シャツは永遠の定番です

中山まりこさんの画像

「デニムのミニ丈ボトムにジャケットを合わせるのがマイスタイル。白シャツとデニム、ジャケット…、すべて定番アイテムの合わせが落ち着きます。特に、肌が日焼けしている季節は、白ジャケットを合わせるのが好きですね」。“MADISONBLUE”のショートパンツとシャツに“SAINT LAURENT”のタキシードジャケットでテイストミックス。「これまではスニーカーを合わせていたコーディネートだけど、今の自分にはくずしすぎな気がして…。“CHANEL”のバレエシューズにチェンジして大人っぽく」

デニムシャツは夫ともシェアしています

フォトグラファーでマディソンブルー副社長の夫・地主晋さんと。「デニムとレザーは、ハードなイメージがあるけれど、タイトスカートなら艶っぽい。ローファーは“HERMÉS”、服は“MADISONBLUE”のものです。夫は“Wrangler”のシャツに“MADISONBLUE”のパンツ。60代の夫には、ブルーのデニムパンツはアメカジすぎるようで、ウエスタンシャツで楽しんだり、パンツならブラックデニムを選んでいることが多いみたい。夫の黒デニムスタイルに着想を得て、黒のフレアデニムをつくったこともあります」

PROFILE
マディソンブルー ディレクター/デザイナー 中山 まりこ
マディソンブルー ディレクター/デザイナー
中山 まりこ

N.Y.でスタイリストや雑誌コーディネーターなどとして活躍。
帰国後は、広告や雑誌、音楽アーティストなどのスタイリングを手がける。
2014年に立ち上げた〝マディソンブルー〟は、今年6月にはパリでサロンをオープン。

初出:2021年4月10日発行『AdvancedTime』07号。掲載内容は原則的に初出時のものです。

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