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ディナー前に、プライベート・プロパティをめぐる夕刻のサファリツアーに、ランドクルーザーで出発。時折現れる野生動物について説明を受けながら、オープンエアでのワイン&スナックを愉しむなど、ネイチャーガイドと記者、2名だけのエクスクルーシブな時間を満喫した。広大な私有地を持つがゆえに日没後も自由にサファリを移動できるのも『リトル・クララ』滞在者の特権だ。

帰宿後のディナーは、メインプールを囲むように設けられたディナーテーブルで、ローカルの食材を基本に練り上げられた、ヨーロピアン・キュイジーヌをいただく。途中、ローカルスタッフたちによるダンスも披露された。よくある、ショーアップされた観光客向けのダンスというより、ついでにちょっと踊ってみましょうか、という、インティメートな雰囲気が、プライベート感を高めていく。ガイドと共に夕食を摂りながら、翌日のプランを決めていく。フルオーダーメイドなスタイルは、オールインクルーシブゆえの自由さに満ちていた。

翌朝は、日の出前に『リトル・クララ』を出発。夜明けと共に舞い上がり、砂丘群を見下ろす絶景を楽しむ、熱気球のテイクオフを眺めた。その後、前述の通り、国立公園のゲートはくぐらず、私有地から国立公園へ合流する専用ゲートから、今回の旅のハイライト、赤き砂丘地帯の深奥部に位置する『ビッグ・ダディ』、そして、隣接する枯湖『デッドフレイ』へとランドクルーザーを走らせた。

道の両側に延々と赤い砂丘が連なり、太古の地球もかくや、という神秘的な光景の中を進んでいく途中、国立公園のゲートから45㎞ほどの地点に、標高150mで比較的登頂の容易な『デューン45』が現れた。トレッキング準備のない多くの観光客はこの『デューン45』に登るようだ。ここでは写真撮影にとどめ、本丸の『ビッグ・ダディ』へ向かうと、さらにチェックポイントがある。ここから先は、デザートタイヤを履いた4WD以外は通行不可となるため、レンタカーでここまではるばるやってきた観光客は、ほとんどここで乗り換えねばならない(有料ガイドが待っている)。

ここから道はない。柔らかい砂地で轍をトレースすることもできない砂漠を走破し、ようやく『ビッグ・ダディ』が姿を現した。『デューン45』はストレートな稜線を持つ砂丘だったが、『ビッグダディ』はスケールが違い、いくつかの尾根を従えてそびえたっているようだ。通常の“山”ではなく、これがすべて風によって形作られた“砂丘”だということに驚嘆する。

さて、ここからが本番。あの頂(クンブレ=頂上/スペイン語)まで、登るのだ。
普通に歩いているとくるぶしの上まで砂で埋まる、柔らかい赤砂上のトレッキングは、一般的な登山経験を積んでいる記者にとっても、それなりに難儀な行程だった。アイゼン無しで、積雪期登山に挑戦するがごとく、登るそばから足元が砂塵と化す(最初から砂なのだが)。大地の底が見えぬまま、斜度がきつい部分では、ずぶずぶと膝まで砂に埋まってしまう。何割かの挑戦者は早々に諦めている。

斜度の緩い稜線まで出ると多少は歩きやすくなるが、先行者の足跡をたどっていてもくるぶし上までは砂に埋まるのだから、やはり、登山未経験者にはリスクが高いと思われる。このナミブ砂漠でロケーション撮影を行っている映画『スター・ウォーズ』や『デューン』シリーズの登場人物になった気持ちで歩いていた記者としては感慨深かった。
足元から崩ゆくクンブレ(頂)からの眺望をしばし堪能した後は、一気に眼下の枯湖『デッドフレイ』へと、さながらスキーのように直滑降する。これも、膝下まで沈み込む赤砂の包容力のなせる業だろう。まさに滑るように直降した先にあるのが、『デッドフレイ』である。

『デッドフレイ』はナミビアを旅する者が最も心に残った風景として、赤い砂丘と並んで口にする絶景だ。1000年ほど前までは湖だったこの場所が乾燥し、湖面にあたる塩分を含んだ粘土質が白く残った。そこに成長していたアカシアもドライウッド化して腐敗せずに残ったため、地球上で無二の景観を形作っている。大いなる砂漠の国、ナミビアまでやってきたのなら、ここ『デッドフレイ』を探訪せずには帰れない。そう思わせるほどの深い感慨があふれ出した。

夜明けに出発したソススフレイを堪能して『リトル・クララ』へ戻る道すがら、私有地内のもう一つのロッジ『ウィルダネス・クララ・デザート・ロッジ』も訪問した。ここは、『リトル・クララ』より少し規模が大きく、グループの受け入れも可能なラグジュアリー・ロッジ。施設の位置が違うこともあり、リニアに連なる砂丘群を眺め渡せる、「リトル・クララ」とは全く違うランドスケープを楽しめるのも特徴だ。
ちなみにこのふたつのロッジは南アフリカに本拠を置くNGO『ウィルダネス・トラスト』によってハンドリングされており、ナミビア以外にも隣国ボツワナのほか、サブサハラ各国で60以上の施設を運営している。

さて、いったん『リトル・クララ』にもどり、夕方に向かった先は『セスリエム渓谷』。遥か昔、200万年前から500万年前に河川によって形作られた、さながら、ナミビアのグランドキャニオンである。渓谷の底を歩くこともでき、一年中水を湛えている池があるなど、この乾ききったソススフレイの大地における、真のオアシスといえよう。人気のない時間帯には、様々な動物たちが、水を飲みにここを訪れるという。

日中は、プライベート・ガイドと共に、この地域にしかない絶景を堪能し、ロッジに帰れば、いつでもリラックスできる。ここに集えるものだけが享受できる砂漠のオアシス。動物たちにセスリエム渓谷があるなら、乾いた大地をストレスなく旅するための、またとないリトリート、スペシャルな『旅籠』が、ここ『リトル・クララ』だなのだ。

2泊の滞在を終え、ここを去る日がきた。ここからは再び、350kmのダートコースを走り抜き、首都・ウイントフークから機上の人となる。ナミビアの悠久の大地に包まれるような感覚は、豊かな都会で暮らす人々にこそ知って欲しいラグジュアリー・エクスペリエンスだ。人生で再び相まみえるとは思えないような至高の時間を、ぜひ、全身で感じて欲しい。

https://www.wildernessdestinations.com/africa/namibia/sossusvlei/little-kulala
STAFF
Photography and text by KAMIYAMA Atsuyuki
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