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武家政権のもとで独自の美意識を育み、江戸時代には全国の名工・名品を集め、蒔絵・加賀友禅・九谷焼といった伝統工芸の極致を築き上げる文化集積へと昇華。明治維新以降、伯爵家として華族社会に連なり、西洋文化を取り入れた教養文化を涵養する。武から美、教養へ。その変遷を一望する、贅を尽くした「百万石!加賀前田家」が東京国立博物館 平成館で開催中です。
富と美が織りなす壮麗な文化が、時を超えて輝き続けている。
公開中の映画『黄金泥棒』では平凡な専業主婦が金の魅力に取り憑かれ、100億円の秀吉の金茶碗を盗み出す計画を企て、大騒動になる顛末が描かれる。戦国時代から人々を魅了してきた金。通貨の価値が不安定な現代でもまた、資産を守る手段としてゴールドが人気である。

金沢で金箔が初めて作られたのは黄金好きの豊臣秀吉が朝鮮の役の陣中より、前田利家に金・銀箔の製造を命じる書を寄せたことに始まると言われている。織田信長につかえ、秀吉政権下では五大老の一人となり、そして江戸時代には数ある大名の中で断トツの石高を誇っていた前田家。金の価値が変わらないように今でも「華族の名門」として知られている。
戦国時代の土豪から加賀百万石の大名、明治以降は華族へ。前田家が生き残ってこられたのは何も金の力だけではない。破格な財力がもたらした大胆すぎるセンス、対照的に先祖伝来の品を実に繊細に手厚く保管していた慎重さ。何世代も先に財産を残すことをイメージしていた想像力で、時代の何歩先も読んでいたのだろう。
放送中の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で前田利家を演じている大東駿介が前田家19代当主・前田利宜氏とともに、広報アンバサダーを務める「百万石!加賀前田家」が現在、東京国立博物館 平成館で開催中。さまざまな展示品を目にすると、前田家がここまで長く続いた理由を改めて感じられる。
まず会場で出迎えるのは前田家の象徴とも言える金色に輝く甲冑、重要文化財「金小札白糸素懸威胴丸具足」。戦場で目立って仕方がないと思ってしまうのは常人の考え。戦陣で武将は味方を鼓舞し、敵に畏怖感を与える存在でなければならなかったという。

その奥には14代まで歴代当主の甲冑と陣羽織がずらり。内政が安定していた3代目以降は、鎧兜も実用より装飾に重点が置かれ、斬新さが際立っていく。
会場は五つに章立てされており、続く2章目は豊富な財力で文化大名へと舵を切った三代目藩主・前田利常が蒐集した書画や舶来の文物を中心に展示している。菅原道真を祖先とし、梅鉢紋を使用した前田家。道真関連の宝も多い。前田家の収集品は海外から集められたものも世界で例を見ないほど、状態が良い。というのも大事な宝の数々を収納する箱を特別に作らせていたから。
同時に武具や調度の工房「御細工所」が発展していった。紀貫之の「土佐日記」を藤原定家が書き写した国宝。屏風蒔絵箱には表蓋に屏風の絵柄が施されている。重要文化財「アエネアス物語図毛綴壁掛」は16~17世紀ベルギー製。欧米でもこれだけの大きさのものが残っているのは珍しく、且つ前田家で保管されたことで、世界的にも貴重なものとなった。


第3章「加賀前田家の武と茶の湯」では秀吉と利家の特別な関係が伺える。秀吉の養女になった利家の四女・豪姫が原因不明の病に冒されるも、秀吉所有の霊剣「大典太光世」を枕元に置くと治癒。ところが、秀吉に刀を返却した途端、豪姫はまた病に。利家がまた借りて、豪姫は完治。結局、前田家の家宝となったという謂れの「国宝 太刀 銘 光世作(名物 大典太)」。このほか、「刀剣乱舞ONLINE」に登場する「重要文化財 短刀 銘 吉光(名物 前田藤四郎)」、「国宝 刀 無銘 義弘(名物 富田江)」の展示、コラボも話題。
足利将軍家から信長を経て秀吉へ伝わり、利家へと下賜。徳川秀忠・家光の藩邸御成の場に飾られた茶入「大名物 唐物茄子茶入 銘 富士」は重要文化財。「内赤盆」に乗る様子は「天下の名物」らしい神々しさ。前田利宜氏も今回、初めて目にしたそう。


圧巻は第4章「天下の書府」。新井白石が礼賛した「加賀は天下の書府」からだが、5代・綱紀が集めた典籍の豊富さは圧倒的で、隣家の徳川光圀が蔵書を借りに来るほどだったとか。学者肌というか、オタク気質というか、その幅広さ、奥深さ、境界のなさ。それも値段を気にせず、買える富があってこそ。綱紀が自ら整理分類した工芸標本「百工比照」は一見の価値あり。


そんな5代・綱紀を尊敬し、世界中から美術工芸品を取り寄せたのが16代・利為。この頃、前田家は本拠を金沢から東京に移し、侯爵家へと転身。最後の第5章は駒場公園にある旧前田家本邸洋館の品々を配置。「白熊」で知られるフランソワ・ボンボンの彫刻は利為が日本大使館付武官としてヨーロッパに滞在中、ポンポンの彫刻を気に入り、アトリエを訪れて直接注文したもの。その他、バッバの楽譜やナイチンゲール、コナン・ドイルの直筆書簡など、いずれも美品。利為は伝来品を後世へ存続させるために保存・管理する育徳財団(現在の前田育徳会)を創立。今回は公益財団法人・前田育徳会創立百周年記念の特別展であり、育徳会収蔵品の大規模な展覧会は東京では半世紀以上ぶり。

「豊臣兄弟!」には下剋上を成し遂げていく豊臣秀吉・秀長を支える前田利家の姿がある。倹約家で知られた利家。大東俊介は今回、算盤を気に入り、「前田利家は戦いにも長けていたけど、ちゃんと自分でお金勘定をしていたそう。どこかで作品に出したい」と話していた。利家所用の算盤は1章「加賀前田家歴代」で公開されている。
「金銀は城を守る兵よりも頼りになることがある」(前田利家)。
金や百万石の印象が強い加賀前田家だが、この展示会で、そのイメージがガラリと変わるのか、「やっぱり」と思うのか。百万石は伊達じゃない。何より、「さすが!」と思うはずである。
会期:2026年4月14日(火)~6月7日(日)
※前期展示:4月14日(火)~5月10日(日) 後期展示:5月12日(火)~6月7日(日)
AM9:30~PM5:00
※入館は閉館の30分前まで。
※毎週金・土曜日および5月3日(日)~5日(火)はPM8:00まで開館
月曜休(4月27日、5月4日は開館)
会場:東京国立博物館 平成館
東京都台東区上野公園13-9
MOVIE WRITER
髙山亜紀
フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。
STAFF
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Editor: Kyoko Seko
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