驚愕の高値で落札!時計界の新たなる聖杯

PHILLIPS/オークションハウス

オークションハウスのフィリップスが時計製造の中心地ジュネーブでオークションを開催。多くの希少性の高い時計が出品された中で、パテック フィリップのレアモデルが、時計オークション史上3番目の高額で落札された。新たな伝説を作った時計とは?

FASHION Dec 9,2025
驚愕の高値で落札!時計界の新たなる聖杯

英国発祥のオークションハウスのフィリップスは、11月8日、9日の2日間に渡って「Decade One(2015年~2025年)」と題したオークションをジュネーブで開催した。時計部門の10周年を記念したもので、オークションでもなかなかお目にかかれないレアモデルが出品され、次々と高額で落札されていった。

その中でも目玉といえるのが、パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518だ。実はそのステンレススティールモデルは2016年に出品され、当時フィリップス史上最高額の1100万スイスフラン(当時のレートで約12億2000万円)で落札されている。今回の出品ではさらなる上振れを期待した予想落札額が設定され、この時計が当時の記録を上回るか、開催前から大きな話題を呼んでいた。

パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref.1518とは?

では、パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518とは、何かすごいのか。

それは希少性もさることながら、パテック フィリップによって世界で初めて量産化されたパーペチュアルカレンダー・クロノグラフであったことだ。元来このようなコンプリケーションウォッチはオーダーメイドの一点ものとして製造されてきたが、この1518モデルから複雑時計の量産化という発想が生まれた。これまで281本が製造され、そのほとんどがイエローゴールド製で、ごく一部にピンクゴールド製と4本のスティール製が確認されている。

ロット23 パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref.1518のステンレススティールモデルの画像
ロット23 パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref.1518のステンレススティールモデル。1941年から製造を開始され、このモデルは1943年製。複雑時計の量産化の嚆矢となった。落札予想価格800万スイスフランからスタートし、1419万スイススラン(日本円で約27億円)で落札された。

今回のオークションのハイライトは、1518モデルから現存するスティール製の4本のうち1本であるロット23。前述した、2016年に1100万スイスフランで落札されたのはこの個体だ。一見すると、ステンレス製のほうがゴールド製より高いの?と思う人がいるかもしれない。一般的にはゴールドケースのほうが素材としての価値は高いが、高級ブランドであるパテック フィリップにとってゴールド製は当たり前で、むしろ製造数の少ないステンレス製のほうが希少性の観点から価値が高くなることがある。これがオークションの面白いところである。また今回のオークションでは、兄弟モデルといえるイエローゴールド製、ピンクゴールド製も同時に出品された。

1518モデルのイエローゴールド製、ピンクゴールド製、スタンレス製の画像
量産化が始まったことで、素材違いのケースによるバリエーションも広がった。1518モデルのイエローゴールド製、ピンクゴールド製、スタンレス製の3種類が、同時にひとつのオークションに揃って出品されるのは、史上初だった。ピンクゴールド製は356万9000スイスフラン、イエローゴールド製は88万9000スイスフランで落札された。

文字盤デザインは、3時と9位位置に備わるサブダイヤルと連動するクロノグラフ機構、12時位置の下に曜日・月表示の小窓と6時位置にポインターデイトとムーフェイズのカレンダー機構を備える。以降、この文字盤レイアウトが王道のデザインとなった。35mmのサイズのケースには、バルジュー社製のベースムーブメントを使用したCal.1 13”’130が搭載される。シャポーと呼ばれるコラムホイールのカバーやスワンネック型緩急針などほぼ原形をとどめていないほど改良されている。

ケースバックを開けた画像
ケースバックを開けると、徹底的にカスタマイズされたムーブメントが現れる。ケースバックに刻まれたケース番号の下には「1」が刻まれており、最初に製造されたスティール製Ref.1518であることを示している。

27億円という驚異的な落札額

ロット23の競売は、最終的に5人の入札者が手を挙げ続けた。9分28秒後、ハンマーが振り下ろされた時、ロット23の腕時計は、1419万スイスフラン(手数料込み、日本円で約27億円。手数料を乗せる前は1150万スイスフラン)という値が付き、フィリップス オークションではパテック フィリップの最高額のヴィンテージウォッチとなった。2016年に記録した1100万2000スイスフランを大幅に更新したが、俳優ポール・ニューマンの私物であったロレックスのデイトナ “ポール・ニューマン” Ref.6239の持つ記録にはわずかに届かなかった。

オークション風景の画像
オークション風景。ハイライトとなるロット23の競売では、億越えの入札が相次いだ。

今回のオークションで207点が出品され、12本が100万スイスフラン(日本円で約1億9000万)を上回る高値で落札された。その中から落札予想価格を大きく上回った注目すべきロットも挙げていこう。まずはロット70のロレックスのデイトナ “ポール・ニューマン” Ref.6263。こちらはクラウンマークの下のロゴが通常の“ROLEX/OYSTER/COSMOGRAPH”ではなく、“ROLEX/COSMOGRAPH/OYSTER”となった通称“オイスターソット”と呼ばれるレアモデル。ねじ込み式プッシャーが導入されはじめた時代のもので、20本ほどしか現存を確認されていない。またロット39はJ.プレイヤー&サン社製の超複雑懐中時計で、グランドソヌリとプチソヌリ、カリヨン・ミニッツリピーター、スプリットセコンド・クロノグラフ、閏年表示付きパーペチュアルカレンダー、月齢表示付きムーフェイズ、均時差表示、アラーム、バイメタル温度計、パワーリザーブ、トゥールビヨンといった多くの機構が搭載される。いずれも一生に一度、見ることができるかできないかの“ユニコーン”ともいえるモデルだ。

ロット70 ロレックス コスモグラフ デイロナ “ポール・ニューマン” Ref.6263、「オイスターソット」の画像
ロット70 ロレックス コスモグラフ デイロナ “ポール・ニューマン” Ref.6263、「オイスターソット」。億越え常連の「オイスターソット」は、推定落札価格40万スイスフランが139万1000万スイスフラン(日本円で、約2億6400万円)で落札された。
ロット39 J.プレイヤー&サン社製の超複雑懐中時計の画像
ロット39 J.プレイヤー&サン社製の超複雑懐中時計。223万8000スイスフランで落札され、アンティークの英国製懐中時計としては世界最高額となった。

驚異的な落札額ばかりが並んだが、まだ見ぬレアモデルが自宅の箪笥の奥でひっそりと眠っているかもしれない。ぜひこれを機会に一度確かめて欲しい。

お問い合わせ先
PHILLIPS 東京
03-6273-4818

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