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オークションハウスのフィリップスが時計製造の中心地ジュネーブでオークションを開催。多くの希少性の高い時計が出品された中で、パテック フィリップのレアモデルが、時計オークション史上3番目の高額で落札された。新たな伝説を作った時計とは?
英国発祥のオークションハウスのフィリップスは、11月8日、9日の2日間に渡って「Decade One(2015年~2025年)」と題したオークションをジュネーブで開催した。時計部門の10周年を記念したもので、オークションでもなかなかお目にかかれないレアモデルが出品され、次々と高額で落札されていった。
その中でも目玉といえるのが、パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518だ。実はそのステンレススティールモデルは2016年に出品され、当時フィリップス史上最高額の1100万スイスフラン(当時のレートで約12億2000万円)で落札されている。今回の出品ではさらなる上振れを期待した予想落札額が設定され、この時計が当時の記録を上回るか、開催前から大きな話題を呼んでいた。
では、パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー搭載クロノグラフ Ref.1518とは、何かすごいのか。
それは希少性もさることながら、パテック フィリップによって世界で初めて量産化されたパーペチュアルカレンダー・クロノグラフであったことだ。元来このようなコンプリケーションウォッチはオーダーメイドの一点ものとして製造されてきたが、この1518モデルから複雑時計の量産化という発想が生まれた。これまで281本が製造され、そのほとんどがイエローゴールド製で、ごく一部にピンクゴールド製と4本のスティール製が確認されている。

今回のオークションのハイライトは、1518モデルから現存するスティール製の4本のうち1本であるロット23。前述した、2016年に1100万スイスフランで落札されたのはこの個体だ。一見すると、ステンレス製のほうがゴールド製より高いの?と思う人がいるかもしれない。一般的にはゴールドケースのほうが素材としての価値は高いが、高級ブランドであるパテック フィリップにとってゴールド製は当たり前で、むしろ製造数の少ないステンレス製のほうが希少性の観点から価値が高くなることがある。これがオークションの面白いところである。また今回のオークションでは、兄弟モデルといえるイエローゴールド製、ピンクゴールド製も同時に出品された。

文字盤デザインは、3時と9位位置に備わるサブダイヤルと連動するクロノグラフ機構、12時位置の下に曜日・月表示の小窓と6時位置にポインターデイトとムーフェイズのカレンダー機構を備える。以降、この文字盤レイアウトが王道のデザインとなった。35mmのサイズのケースには、バルジュー社製のベースムーブメントを使用したCal.1 13”’130が搭載される。シャポーと呼ばれるコラムホイールのカバーやスワンネック型緩急針などほぼ原形をとどめていないほど改良されている。

ロット23の競売は、最終的に5人の入札者が手を挙げ続けた。9分28秒後、ハンマーが振り下ろされた時、ロット23の腕時計は、1419万スイスフラン(手数料込み、日本円で約27億円。手数料を乗せる前は1150万スイスフラン)という値が付き、フィリップス オークションではパテック フィリップの最高額のヴィンテージウォッチとなった。2016年に記録した1100万2000スイスフランを大幅に更新したが、俳優ポール・ニューマンの私物であったロレックスのデイトナ “ポール・ニューマン” Ref.6239の持つ記録にはわずかに届かなかった。

今回のオークションで207点が出品され、12本が100万スイスフラン(日本円で約1億9000万)を上回る高値で落札された。その中から落札予想価格を大きく上回った注目すべきロットも挙げていこう。まずはロット70のロレックスのデイトナ “ポール・ニューマン” Ref.6263。こちらはクラウンマークの下のロゴが通常の“ROLEX/OYSTER/COSMOGRAPH”ではなく、“ROLEX/COSMOGRAPH/OYSTER”となった通称“オイスターソット”と呼ばれるレアモデル。ねじ込み式プッシャーが導入されはじめた時代のもので、20本ほどしか現存を確認されていない。またロット39はJ.プレイヤー&サン社製の超複雑懐中時計で、グランドソヌリとプチソヌリ、カリヨン・ミニッツリピーター、スプリットセコンド・クロノグラフ、閏年表示付きパーペチュアルカレンダー、月齢表示付きムーフェイズ、均時差表示、アラーム、バイメタル温度計、パワーリザーブ、トゥールビヨンといった多くの機構が搭載される。いずれも一生に一度、見ることができるかできないかの“ユニコーン”ともいえるモデルだ。


驚異的な落札額ばかりが並んだが、まだ見ぬレアモデルが自宅の箪笥の奥でひっそりと眠っているかもしれない。ぜひこれを機会に一度確かめて欲しい。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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