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沖縄本島から南西に400km超。石垣島、小浜島、西表島、波照間島など擁する八重山諸島エリアは、リゾート地としても人気が高い。なかでも竹富島は、4年前まで住民がわずか340人程度の小さな島だったが、最近移住者も増え、内外から注目されている。ここに13年前に開業した宿泊施設『星のや竹富島』は、すっかり地元に馴染んで評価も高いが、島との共生をより強固なものにすべく新たな取り組みを始めている。
2012年、周囲約9kmの離島・竹富島に「星のや」が開業すると聞いたときは驚いた。あの小さな南海の孤島に、ラグジュアリーホテルが成立するのだろうかと。開業年の秋、実際に『星のや竹富島』に赴いたところ、ほとほと感心した。部屋は全棟離れのスタイルで地元の民家を模した美しい平屋建て。宿泊施設がひとつの集落となっていて、島の景観に調和していたからだ。スタイリッシュなレストランや広々としたプールも備えられ、非日常を味わえるリゾートとして最上。しかも、現地の習慣や食材も取り入れていて、「ウツグミ」(一致協力)の精神にのっとった、地元と一体になる施設の新しい在り方だった。
あれから約13年。久しぶりに訪ねた『星のや竹富島』は、一軒家スタイルの客室を取り囲む低い塀が「グック」がいい塩梅に経年風化しており、ますます島に馴染んでいた。
ここ竹富島では夜、晴れていれば最高の星空を満喫でき、観察できる星座はなんと84。ティンガーラ(天の川)の降る島と言われるだけある。そんな夜のもうひとつの楽しみ、ディナーは「島テロワール」を料理コンセプトとしている。竹富島の気候や風土、食文化を尊重しながら考え出されたフランス料理だ。
6月11日から、この「島テロワール」のディナーコースが新しくなった。厳選した食材による4品の構成だ。
まず、前菜は「ヤギとキャビアのタルタル フーチバの香り」。地元で祝いの席などで使われるヤギは、なんとタルタルに。フーチバは苦みの少ないヨモギの一種でヤギ汁にも使われる。まさに島の食文化をフレンチの技法で生まれ変わらせた料理。
魚料理は「イセエビのパイ包み焼き 2色のソース」。肉厚のイセエビをフレンチらしいパイ包み焼きに。パイの中では、車エビと豚肉を使用したムースがイセエビを包み込んでおり、濃厚な海老のソースとともに複層的な旨みと香りが現れる。
肉料理は「熟成牛サーロインとマグロの炭火焼き 島醤油と黒糖のアクセント」。牛肉と鮪という王道ダブル食材を、竹富島で醸造されている泡盛や鰹節を使用した島醤油とパイナップルを使用した甘辛いソースで食す。これはワインや泡盛が進みそう。
最後は、デザート「ジーマミのマルジョレーヌ パイナップルのコンフィチュールを添えて」。ジーマミは落花生のこと。フランスの伝統的なケーキをアレンジしている。
総料理長の中州達郎さんにより考え抜かれ、4品に絞り込まれたコース料理は深い印象を残す。
こうした料理を生み出す厨房や客室などで使用されている水の大半は、じつは海水を淡水化したものだ。
「2021年に海水から飲料水を作る海水淡水化装置を導入しました」と話すのは、星野リゾート・アセットマネジメントの足立淳さん。
離島の竹富島では、ペットボトルなどの廃棄により発生するプラスチックごみが問題になっていた。また、サンゴ礁の隆起によってできた竹富島は、生活用水を隣の石垣島から送水してもらわねばならない厳しい環境だった。
「以前、石垣島からの配水が止まってしまったことがあり、本当に大変でした。そうした経験もあり、水と電気を自給することを考えました。地元・竹富島の3つの集落に説明してまわり、淡水化のプラント施設と太陽光パネルの導入について了承を得るまで3か月以上かかりました」
そして海水淡水化熱源給湯ヒートポンプユニットは、星のや竹富島の敷地内に建設された。海岸から数百メートル内陸にある井戸から汲み上げられた水は、ほぼ海水。それをこのユニットの特殊なフィルターでろ過し、淡水化する。1日に60トンもの淡水をつくることができるという。
「星のや竹富島では、1日に平均66トンの水が必要ですが、客室の稼働により、多い日はその約9割をまかなっています。できあがる水の硬度は低く、超軟水。石垣島から送られてくる水は硬度があり、両方を飲み比べると小学生でも味の違いがわかります」
実際に試飲してみると、その滑らかな舌あたりに驚かされた。
このシステムを導入することで、客室内の冷蔵庫に備えられていたペットボトル入りの水は廃止され、淡水化された水の入ったウォータージャグに置き換えられた。
さらにユニットの水冷式ヒートポンプにより淡水化した水を冷却することができ、その際に発生する排熱を利用して給湯も可能となった。これで年間、約35tのCO2を削減している。
こうした取り組みは、ひとつのモデルケースとして、他の地域や海外からも注目されるに違いない。『星のや竹富島』に来れば、単にラグジュアリーな滞在ができるだけでなく、持続可能なエネルギーのあり方や離島という制限のある島での暮らしから自分自身を見つめ直す機会にもなろう。
STAFF
Writer: Indy Fujita
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