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ここ数年、京都では外資系のホテルが次々とオープンしているが、昨年9月、京都駅からほど近いエリアに『デュシタニ京都』が開業。タイのホテルチェーン、デュシット・インターナショナルの日本初進出ということで大きな話題になったが、同ホテルの象徴的存在でもあるレストラン「Ayatana」が、この夏、より洗練されてリスタートした。京都で味わえるガストロノミックなタイ料理の内容とは。
フランス語で“美食術”を意味する“gastronomie(ガストロノミー)”という言葉は、日本でも一般的になってきた。観光庁は地方の気候風土が育んだ食文化を求めるガストロノミーツーリズムを打ち出し、全国各地で洗練された料理を提供するレストランが注目を集めている。日本最大の観光都市といえる京都でも、世界的なグルメガイドで扱われるレストランは多く、東京や海外から美食を求める客がやってくる。デュシタニ京都のメインダイニング「Ayatana」も、そんなグルマンの間ですでに話題となっている。8月末日、「Ayatana」のディナーへ出向いた。
デュシタニ京都は、西本願寺のそばに佇む。周辺の町の景観に溶け込む落ち着いた外観だが、エントランスから中に入ると、華やかなロビー空間に息をのむ。この地階フロアに、バンコクにある有名レストラン 「Bo.lan(ボー・ラン)」 のシェフ、ドゥアンポーン・ソンヴィサヴァ氏とディラン・ジョーンズ氏が監修した「Ayatana」がある。
店内に案内されると、テーブルはわずか3つ。パーテーションを挟んでもう一つ大きなテーブルがあるが、一般的なホテルのメインダイニングのイメージとは異なり、特別なプライベート空間のよう。席に着く前から高揚感を覚えてしまう。
着座すると手拭きが渡されるが、テーブルに置かれているのは単なる飾り皿ではなかった。くぼみのある皿にタイのオーガニックハーブで香りをつけたお湯が注がれ、それで手を清めてから料理がスタートする。
まずは、タイ人の料理人が野菜など食材を擁して登場。英語で解説しながら、目の前で紫蘇の葉で野菜のペーストなどを包み、最初の「ファースト・バイト」を手渡してくれる。旬の食材を最初の一口の料理として提供するのは、タイ本国の「Bo.lan(ボー・ラン)」のスタイルでもあるという。口にすると野菜の風味が紫蘇の香りとともに広がり、その余韻は実に長い。プレゼンテーションも味わいも、ファーストアタックはしっかりとゲストに刺さる。
このあとは前菜が次々と供されるのだが、それぞれの皿に合わせて料理を構成する五色、五味、五法の要素を示す“コンパス”が添えられるのが面白い。
例えば、「Bo.lan ナンプラーでマリネしたスイカとトマトレリッシュ」には、調理=RAW、味=UMAMI、色=REDと示されたコンパスが添えられる。
「鮎とゴーヤのグリル フライドエシャレット」のコンパスは、調理=GRILL、味=BITTER、色=GREEN、「雲丹 ココナッツウエハースと共に」のコンパスは、調理=FRY、味=SWEET、色=YELLOWとなる。要素を明確に示されることで、より味わいの方向性が印象に残るように思う。この楽しいスタイルで前菜は5皿。
タイ料理ということで、ドリンクはタイのビールを選んだが、有名なシンハーのほか像が描かれたエチケットのチャーン、そしてこの日はタイクラフトビールの王様と称されるチャラワンペールエールがあり、料理と共に飲み進む。もちろん、ワインもグラスで注文でき、コース料理に合わせて日本酒を含むペアリングも用意されている。
さあ、いよいよメイン。
この日は、ファーストメインディッシュとして「和牛のグリルサラダ 自家製シラチャーソースと共に」「プーケット風 マナガツオとイカのドライカレー炒め」「バイナップルと鮮魚のココナッツクリームレリッシュ添え ハートヤイフライドチキンと卵」、セカンドメインディッシュとして「チキングリーンカレーとポークハンレーカレー」「豚ミンチと鮮魚のスープ 梅の香り」「あわびのスマッシュフライ」が、タイジャスミンライスと国産有機米のご飯とともに供された。
それぞれ人数分一緒盛りになっていて、自分の皿に取り分けるスタイルで、ご飯と共に食す。
このメイン料理は、いずれもスパイスとハーブを自在に操り、食材を生かしているが、箸休めになる穏やかな味わいのものもあれば、かなり辛みが効いている料理もあり、変化に富む。これをどのような順序で、どのように組み合わせて食してもいいわけで、十人十色の自由なメイン料理となるのだ。
デザートは「ブドウと桃のタイ風かき氷 ゆずのシロップ ガヤッサーと共に」、そしてプティフールとアヤタナティーブレンドのお茶。
最初のファースト・バイトから最後のプティフールまで、玉虫色のコースと呼んでもよさそうなほど、視覚的にも味わい的にも趣向に富んだ料理の数々だった。
デュシタニ京都は、ホテルとしてサスティナブルな取り組みに力を入れており、和束町に有機栽培茶畑のほか、左京区大原には有機野菜を栽培する自社農園も所有。「Ayatana」で使用される野菜は、端切れなども何かしら料理の一部として活用しているという。
そうした精神と丁寧な調理で生み出される独自のセンスを有する料理は、一般的なタイ料理とは一線を画している。
京都に来たら、和食だけでなく斬新なタイ料理もぜひ体験してみてほしい。「Ayatana」でコース料理を食せば、もしかするとちょっとものの見方が変わるかもしれない。
※写真はいずれも8月末時点での料理。秋以降、内容は変わります。
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Writer:Indy Fujita
Photo:Indy Fujita(by iPhone15)
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