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今年も多くのブランドから発表されたラグジュアリースポーツウォッチ。素材にアレンジを加えたり、新規参入するブランドなど今なお注目を集める見逃せないジャンルだ。押さえておきたいラグスポウォッチ7本をご紹介。
ラグジュアリースポーツウォッチ(ラグスポウォッチ)はここ数年で一気に定着した人気ジャンル。ざっくりといえば、ケースとメタルブレスレットが一体型となったデザインで、薄型ケースにも関わらず防水性能が備わったスポーティな時計のことだ。一時のブームは落ち着いてきたものの、新作の数をみればわかるように依然として注目すべき存在だ。
今年はブレスレット素材のバリア―ションが目立った。ケースとブレスレット一体型デザインでは、ステンレススティール素材が定番であるが、それよりも軽いチタンや、より重厚なフルゴールドのモデルが多く登場。メタルのブレスレットは重量がそれなりにあるので腕が疲れてしまうという欠点があった。ステンレススティールの約60%の重量であるチタンであれば長時間でも疲れにくく、よりスポーティで装着感を進化させたといえるだろう。また、ゴールドはスポーティさがやや欠けるものの、ラグジュアリーさという点では特別な存在感を示してくれる。
一方、エルメスのような今年からラグスポウォッチに参入ブランドも見逃せない。今やラグスポウォッチカテゴリーはコレクションに欠かせない存在となっている。後発だけに、ひと捻りあるデザイン性で個性を発揮し、野心を感じさせる。
まずはラグスポウォッチで快進撃を続けるショパールからチタン製の「アルパイン イーグル」からだ。
ブレスレット一体型ウォッチブームに乗って、「アルパイン イーグル」を定着させたショパール。新規参入組なので、ラグスポウォッチの様式も柔軟があるのが特徴だ。例えば、ステンレススティールのケース&ブレスレットにチタンを採用した新作だ。ステンレススティールよりも軽量化できて装着性も向上させた。チタンは仕上げが難しい素材であるが、グレード5チタンにすることで、ステンレススティールと同じようにサテン&ポリッシュ仕上げでシャープにまとめ、美しい質感を実現した。
モデル名にある「XP」とはケース、ムーブメントの薄さを示すもの。オフセンターのマイクロローター式自動巻きを備える薄型ムーブメントを搭載し、ケースの厚みを8mmとスリムに仕上げた。それを鑑賞できるように文字盤は設けず、ムーブメントにもオープンワークが施されている。地板とブリッジにはサンドブラスト仕上げを施し、その上にグレードX1の夜光を塗布したロジウム仕上げの時分針やインデックスを配置。コンスラストがついているので、オープンワーク文字盤にありがちな時刻の読み取りにくさもない。
機械式腕時計としては最上位クラスとなる3900mの防水性能を備えるダイバーズウォッチ「オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシー」に、コレクション初となる18Kイエローゴールドモデルが登場。ケースとブレスレットを合わせた総重量は約322gとなる。
海中3900mの環境にゴールドウォッチを着けるダイバーズはなかなかいないと思うが、ヘリウムエスケープバルブと直接肌にあたる裏蓋にはアレルギーが起こりにくいRLXチタン、文字盤外周の耐圧リングにはセラミックを採用して実用性は高い。この耐圧リングは文字盤やセラクロム製ベゼルインサートと合わせてブルーで統一感を高めた。
ロレックス グライドロック エクステンション システムを備えるブレスレットは、中コマだけポリッシュ仕上げに。仕上げの違いで奥行きが生まれ、ラグジュアリー感を高めている。
ケース&ブレスレット一体型ウォッチのジャンルに、新たに参入したのがエルメスの新コレクション「エルメス カット」。スポーティさを備えながら、ケース径36mmという男女兼用という新しいスタイルを提案。デザインは平面の“円”と立体の“丸”を組み合わせたようなフォルムで、上下左右の側面がカットされる独特なプロポーションが特徴だ。そこにサテン仕上げやポリッシュ仕上げを巧みに使い分けて強い個性を打ち出している。
リューズは1時と2時位置の間に配置。文字盤のインデックスはエルメスらしいフォントを採用してシンプルなデザインを際立たせた。ブレスレットはインターチェンジャブルシステムで簡単にケースから外すことができ、全8色のラバーストラップも別売りで用意される。ケースのバリエーションは、ステンレススティール、18Kローズゴールド×ステンレススティールのコンビに、それぞれベゼルに56個のダイヤモンドがセッティングされるバージョンも展開。これらの組み合わせで多彩なアレンジができるのも、「エルメス カット」の魅力だ。
1969年に誕生した最初期のデファイに着想を得て蘇らせたダイバーズウォッチはケース&ブレスレット一体型スタイル。素材はオリジナルのステンレススティール製ではなく、チタン製にして現代的に仕上げている。
デファイの特徴である12角形のベゼルの外側に回転ベゼル、内側にオレンジのアクセントカラーを配してアイコンデザインをキープ。9時位置のケースサイドには飽和潜水に対応したヘリウムエスケープバルブを備えて、600m防水という実用性も満たしている。
星型にエンボス加工された文字盤は12時位置のゼニススターからサンバースト仕上げで放射状に広がる光を表現し、凝ったデザインに。回転ベゼルのアワーマーカー、文字盤のアワーマーカー、時分針にはスーパールミノバ3種類が塗布され、オレンジ、グリーン、ブルーで発光し、暗闇でも視認性を高めた。デイト表示の横のアワーマーカーにも夜光塗料が塗布されていて、最新のダイバーズ規格にも対応しているのがわかる。
GMT機能が備わったケース径41mmの「ブラックベイ GMT」とケース径39mmで統一されている「ブラックベイ 58」が融合して登場した「ブラックベイ 58 GMT」。小振りサイズがトレンドとなっている近年では見逃せない新作だ。
搭載されるムーブメントのCal.MT5450-Uは、ベースムーブメントにGMT機能のモジュールを追加したものではなく、新開発したもの。その核心はムーブメントが時計の品質規準であるCOSCに加え、高耐磁性能(1万5000ガウス)にこだわるスイス連邦計量・認定局(METAS)が認定したマスタークロノメーターも取得していること。マスタークロノメーターはオメガの時計でお馴染みだが、チューダーとしては2作目だ。
24時間表示の回転ベゼルは、通称“コーク”で知られる黒×赤(正確にはバーガンディ)の2色を採用したクラシックなデザインに仕上げた。GMT機能は、第2時間帯を表示するために時針を動かすタイプと、GMT針を動かすタイプに分けられるが、このモデルは渡航先で時刻を簡単に設定できる海外旅行に適した前者のタイプだ。操作禁止時間のない日付表示はジャンピングアワー式の時針と連動していて、実用性にも優れている。
創業者ジョン・アーノルドは船舶用高精度クロック「マリンクロノメーター」の普及に努めた人物。マリンクロノメーターは海上で経度(ロンジチュード)計算に役立ち、安全な航海の役割を果たしたアイテムだ。
こうした歴史からインスパイアされたのが、「ロンジチュード チタン」。ケース&ブレスレット一体型のスタイルにはチタンを採用し、サテンとポリッシュに仕上げを使い分けてスポーティに仕上げた。12時位置のパワーリザーブは天体の位置を観測して現在地を知ることができる六分儀がモチーフになるなど、マリンクロノメーターの意匠が随所に感じられる。文字盤のカラーバリエションは、創業者のジョン・アーノルドの故郷であるコーンウォール集に着想を得た、キングサンド、オーシャンブルー、ファーングリーンの3色を展開。インタチャンジャブル仕様のチタン製のブレスレットは、工具なしで付属のラバーストラップと交換できる。
2022年に誕生した「リップルズ」コレクションは、「ラ・シティ」と呼ばれるラウンドとスクエアを組み合わせたロンドンの金融街の建築から着想を得たケースと、ブレスレットが一体化したスポーティウォッチ。1時30分の位置にスモールセコンドを配置し、コレクション名のリップルズが意味する“さざなみ”を水平ラインで表現する文字盤に、ニューカラーが追加された。この12個の水平ラインはロジウムメッキとサテン仕上げを施して、絶妙な質感を生み出す。スモールセコンドはサンレイ仕上げが施され、水平線や地平線に下る太陽のようなデザインに仕上げた。
搭載されるムーブメントは、マイクロローター採用により9.2mmというスリムケースを実現。全体をメタリックシルバーで統一し、都会的で洗練された雰囲気は、ありそうでなかったラグスポスタイルだ。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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