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先日ミラノ・メンズファッションウィークで発表された、“ダンヒル”の2025年春夏コレクション。新チーフ・クリエイティブ・オフィサーが就任して2シーズン目のコレクションは、アーカイブから導かれたクラシックなスタイルをベースにしながらも、いかにメンズウエアを楽しむのか、というアイデアに満ちている。
先シーズンより、サイモン・ホロウェイをチーフ・クリエイティブ・オフィサーに迎えて、英国的なクラシックなスタイルに、現代的なリラックス感を巧みに配剤したメンズコレクションを展開している“ダンヒル”。6月のミラノ・メンズファッションウィークにて、ホロウェイの2シーズン目にあたる2025年春夏コレクションが屋外でのショー形式で発表された。クラシックな装いのエレメンツを前回以上にフィーチャーしながらも、型苦しさを感じさせない、どこか解放感すら漂うポジティブな雰囲気が、見る者を魅了していた。
ミラノ中心部にある美術館内の庭園、ジャルディーニ・ポルディ・ペッツォーリにて披露されたダンヒル2025年春夏コレクション。芝の緑も鮮やかな庭園には、クロスがかけられたテーブルやパラソルが配され、その間をウェイターが冷えたピムスをサーブするなど、英国的なガーデンパーティーが演出されていた。
1853年に馬具製造卸売業として創業した“ダンヒル”は、モータリゼーションに呼応して、1920年代に「Motorieties(モートリティーズ)」と称したドライビングウエアやクルマ関連のアイテムを手がけるメーカーに転身した。今回のコレクションでは、そうした同ブランドの歴史とアーカイブから着想されたアウターウエアが目を惹いた。ライトブラウンスエードのドライビングジャケットや、撥水加工を施したダブルフェースリネンのカーコートはその一例。タイドアップの着こなしに、ドライビンググローブやドライビングシューズを組み合わせて、往年のエレガントなスタイルを表現する一方で、ブラウン&ホワイトの色数を抑えたスタイリングなど、色や素材感の繊細なバランスで、洗練された印象を生み出していた。
スーツやジャケットのテーラードウエアは、グレー、ネイビー、ラスト(錆色)、アイボリーといった紳士の装いの基本的なカラーパレットに、今季はバーリーブルー、コーラルレッド、ブリティッシュタン、クラシックカーキといった遊び感覚やカジュアル感のある色が加わっている。上着はダブルブレストとシングルブレスト双方が展開され、よりクラシックなスリーピースやウエストコート(ベスト)も多く見られた。
例えば、世界でも屈指のプライベートメンバーズクラブとして知られるザ・ハーリンガム・クラブで開催される「アルフレッド・ダンヒル・パデル・クラシック」のユニフォームスタイルや、そうしたスポーツを観戦する際の装い。または夜の祝賀会におけるイブニングウエア。ホロウェイは英国社交界のカレンダーを参考に、フォーマルとインフォーマルのドレスコードをコレクションにふんだんに盛り込んでいる。それらは守るべき決まりごとというよりは、クラシックな装いを楽しむためのさまざまなアイデアを提案している、といえるかもしれない。そしてストライプのシャツにレジメンタル柄のネクタイ、ポルカドット柄のボウタイと同柄のジャケットなど、柄と柄との組み合わせは先シーズンのコレクションに引き続き提案されていて、ホロウェイの個性が強く感じられた。
また、バッグやアクセサリーの提案も多彩。モートリティーズのラゲージのアーカイブから特別に選ばれたセンチュリーズ レザーグッズ コレクションが、多くのルックで見られた。しっかりとなめされた上質なカーフレザーに、手作業で色づけと仕上げがなされたレザーアイテムは、時間の経過とともにより豊かな表情が生まれそうだ。さらにコレクションのキーアクセサリーのひとつである傘にはピューター製のドッグ・ヘッド・ハンドルがあしらわれていて、英国紳士のウィットに富んだエレガンスが表現されていた。
クラシックに回帰するようなアプローチがさまざま盛り込まれた“ダンヒル”2025年春夏コレクション。もっともそれは単に懐古的ということではなく、むしろ現代そして未来に向けてどのように男性のスタイルを発展させるか、いかに装いを楽しむかという姿勢を反映している。今回のコレクションに関する、ホロウェイの次のような言葉からも、そのことは窺える。
「これはオフィスに行くためのベーシックな服ではありません。人生を楽しむための服なのです」
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
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