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機械式時計でまず注目したいのが、精緻なメカニズムだ。今回はパーペチュアルカレンダーにフォーカス。モダンなカラーリングや装着感にこだわった新作に目が留まった。
日・曜日・月・年・閏年にムーンフェイズも加わることもあるパーペチュアルカレンダーは3大複雑機構の一角。これらのカレンダー表示はすべて歯車で表現するメカニズムのため、機械式の醍醐味が味わえる機構だ。一度針が止まってしまうと、時刻合わせが面倒なため、自動巻きでロングパワーリザーブがトレンドとなっている。今年はカレンダー機構の深化と暦の多様化に注目。400年間の閏年のサイクルを組み込んだIWCの超絶モデルを頂点として、ヒジュラ暦や中国暦のモデルまで登場し、見応えのあるモデルが揃った。
IWCは6つのピラーコレクションを揃えるが、毎年そのひとつにフォーカスして新作を発表するのが恒例となっている。
今年はIWCのコレクションの中で最も歴史が長く、懐中時計サイズのデッキウォッチからインスピレーションを得て生まれた「ポルトギーゼ」コレクションにフォーカス。3針モデル、クロノグラフモデルなどが発表されたが、注目は3900年までの暦を機械式でプログラミングしたエターナルカレンダー(別コーナーでご紹介)をはじめとした、パーペチュアルカレンダーモデルだ。
まずリニューアルにあたって、ケースデザインを見直し、サイドから見るとほっそりとした見た目に変更。その分、文字盤とケースバックにはボックス型のサファイアクリスタル風防にボリュームを持たせて、文字盤の視認性を高めている。文字盤の新色としてホライゾンブル、オブシディアン、デューンの3色が登場。これらは昼と夜の永遠のサイクルにインスピレーションを得たもので、昼間の青空と光をイメージしている。これらの文字盤は真鍮のベースに、サンバースト仕上げやブラスト仕上げを施したのち、15層のラッカーを繰り返し塗布して着色、その後研磨してハイグロス仕上げた。
ポルトギーゼのパーペチュアルカレンダーにはムーンフェイズのバリエーションがある。月表示と同じインダイアルにまとまったムーンフェイズ表示、独立したムーンフェイズ表示があるが、今作は北半球と南半球から見たムーンフェイズを示すダブルムーン表示を採用。1周期につき、わずか12秒ほどの誤差で、調整を必要となるのは577年に1日分という高精度を誇る。
7時と8時の間には4桁の西暦表示が配置され、2499年までの日付を表示することができる。ただし、世紀の始まる閏年のない2100年、2200年、2300年には調整が必要だ。IWCが誇る巻き上げ効率に優れたペラトン自動巻きを備える自社製ムーブメントに、二つの香箱を備える約7日のパワーリザーブを有しているので、時計の針が止まってカレンダーの修正する心配も少なくて極めて実用的なパーペチュアルカレンダーだ。
次は、カレンダー表示の窓を一直線したパテック フィリップの新作だ。
パテック フィリップは2021年に曜日、日付、月の表示窓を1列に並べた永久カレンダーモデルを発表。この時はブルーグラデーション文字盤であったが、今年はローズゴールド・オパーリン文字盤のニューバージョンが登場した。
いわゆるこのサーモンピンクの文字盤カラーは1940年代に流行したカラーリングでヴィンテージテイストを表現する際によく採用される。光沢を抑えたマットな質感の文字盤に加え、ホワイトゴールド製の時分の針や砲弾型のアプライドインデックスもブラックに近いダークグレーのアントラサイトカラーをコーティングさせて印象を一新させた。
一列に統合されたインライン表示のカレンダーは、針ではなく、4枚の回転ディスクで表現される。この機構を実現するために、通常の永久カレンダーよりも118個のパーツが追加されている。すっきりとしたシンプルなデザインなのに、実は内部がより複雑になっているところに、機械式時計のロマンを感じさせる。
6時位置のムーンフェイズ表示を配したスモールセコンドの両サイドにも小さな表示窓を備える。左が昼夜表示で、右が閏年表示となっている。マイクロローターを採用した自動巻きムーブメントには巻き上げ効率を高めるために、パテック フィリップが通常使用する22金ゴールドよりも比重の大きいプラチナ製のマイクロローターが採用されている。
マニュファクチュールブランドとして、高い技術力と薄型ケースが同義であるジャガー・ルクルト。今年はマスター・ウルトラスリム・コレクションからパーペチュアルカレンダーモデルがアップデートを果たした。
先代機のケース径39mm、厚さ9.2mmのエレガントさはそのままに、ラグをよりスリムにやや細長くことで、装着性を高めるプロポーションに変更。文字盤デザインは、ムーンフェイズに大小の星を増やし、ステンレススティールモデルにはシルバーの月を、アワーマーカーを細長く、ドーフィン針はポリッシュ仕上げとサテン仕上げの異なる仕上げを施すなど、細かい仕様変更が行われた。また文字盤中央の開口部は、時刻やカレンダー調整をしてならない時間帯を判別するためのものであるが、ブルーからレッドに変更されている。
大きく変わったのがムーブメントだ。2013年に発表した永久カレンダームーブメントのキャリバー868をベースに、新型の脱進機とアンクルを採用した改良版を搭載することで、摩擦を軽減させ、38時間から約70時間へとパワーリザーブ時間を大幅にアップさせた。
一般的にパーペチュアルカレンダーといえば、西洋のグレゴリオ暦をベースにしている。しかし、パルミジャーニ・フルリエはイスラムのヒジュラ暦をベースにしたパーペチュアルカレンダーを発表。2011年発表のヒジュラ暦の置き時計から始まり、2020年には腕時計でヒジュラパーペチュアルカレンダーを完成させ、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリでイノベーション賞まで受賞している。最新作は「トンダ PF」から初で、ダイヤルデザインを一新したヒジュラパーペチュアルだ。
ヒジュラ暦は太陰暦のため、月の周期に基づいている。29日の月と30日の月が交互に巡り、一年は354日が平年、周期の誤差を修正する年は355日となり閏年となる。ヒジュラ暦では30年がひとつの周期となっており、19年の平年、11の閏年ならなっている。
12時位置のサブダイヤルでは30周年周期を表し、閏年をベージュのアラビア語で平年をバーで表示。3時位置のサブダイヤルでは月を表示し、9番目のラマダン月を赤で強調。9時位置のサブダイヤルでは日付を表示し、小窓の色で30日の月か29日の月かを読み取れるようになっている。6時位置には北半球と南半球から見えるダブルムーンフェイズを備える。文字盤カラーはイスラム教国家の国旗で多く使用され、神聖な色とされるグリーンを採用した。
ちなみに、パルミジャーニ・フルリエでは、西洋のグレゴリオ暦のパーペチュアルカレンダーはもちろんのこと、今作のヒジュラ暦に、中国暦のパーペチュアルカレンダーも発表している。
12角形ベゼルがアイコニックなデザインとなっているリビエラ・コレクションのパーペチュアルカレンダーにニューカラーが追加。昨年モデルはゴールドカラーだったが、今年はダークグレー文字盤にゴールドの針やインデックスでアクセントを効かせた、落ち着いた組み合わせだ。
日・曜日・月・閏年にムーンフェイズを備えたフルカレンダー表示を備えながら、ケースはわずか11.8mmに抑えたフィット感に優れる。ムーブメントはデュボア・デプラ社の永久カレンダー・モジュールを備えた「ボーマティック」を搭載し、5日間のパワーリザーブを誇る。現代的なパーペチュアルカレンダーに欠かせない、自動巻きでロングパワーリザーブを備え、実用性の高いモデルだ。また高い耐磁性能や最長8年という長いメンテナンスサービス期間も持つので、パーペチュアルカレンダー機構と相性が良いといえるだろう。
ステンレススティール製の3連ブレスレットは中央リンクのエッジを面取りして立体感を演出。取り外しが簡単にできるインターチェンジャブル仕様となって、気分によってストラップを変更できるようになっている。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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