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2019年のデビュー以来、わずか4年半で、映画やドラマの主演を務めるまでになった。一作ごとすべてに異なる表情を見せ、変化と成長を刻む。まだ足りないものを埋めるべく駆け抜ける今、少し立ち止まって自分を見つめ返す。そこには未来を見据えた、23歳の素顔があった。
駆け抜けてきた4年半と、自身の変化を、眞栄田郷敦さんはこう振り返る。
「自分はものづくりが好きなんだということを、改めて、実感するようになりました。以前は台詞を言うことで精一杯。役を掘り下げて考える余力も、楽しむ余裕もありませんでした。それから時間を経て、今は“掘り下げる”ことを何より大事にしています。演じる人物が、なぜこんな台詞を発し、こんな行動をとるのか。台本のすみずみまで疑問をもち、監督やスタッフと話し合います。そこで納得すれば、素直に受け入れるし、そうでなければ、自分なりのロジックを考えて主張する。それよりも難しいのは、台本に描かれない、過去や背景に想像を巡らすことです」
スクリーンから“見える”ものだけでなく、その奥の奥を想像し、手繰り寄せ、醸成させてアウトプットする。そんな高度な作品づくりに挑んだのが、初主演映画『彼方の閃光』だった。眞栄田さんは、色彩を失った青年・光(ひかり)を演じる。
「映画には描かれていない、生まれたころの背景や育った環境、心情を想像し、それを声や演技に乗せました。後半では、戦争の爪あとが残る場所を実際に訪れ、感じたものを、そのまま表現しました。長崎や沖縄など、その場所で耳をすまし、身をゆだねると、かつて起きた歴史、それに対する自分の感情が、自然にわき上がってくる。話を聞いたり、本で読むより、気づくことはたくさんありました。あとは、それを素直に演技に乗せるだけ。ドキュメントのようにも見えるのは、そのせいかもしれません」
“感じること”は今の眞栄田さんをつくる大事な作業だ。それは役づくりだけでなく、人生設計においても。
「たくさんの経験をして、感じたことを、自分の体と記憶に刻みたい。染み込ませたい。そうして、深みが生まれてくると思うから。だから自分では、写真で何かを残すことは、ほとんどありません。スマホの中に保存している写真も、ほんの数枚だけ。写真を見返したところで、経験に勝るものはないし、その場で感じたことまでは形に残せません」
映画『彼方の閃光』では「声」が記録の媒体となり、2009年から近未来の2070年までの、主人公・光の記憶を手助けする。そこで描かれる未来は、観る者にもさまざまな課題を突きつけてくる。それでは、2070年の眞栄田さん自身はというと――。
「未来はあえて想像せずに、流れに身を任せようと思っています。50年後、僕は70代。役者をやっているかもしれないし、まったく違う何かになっているかもしれません。世界もどんなふうに変化しているか、想像もつきません。ニュースでは悪いことばかりが注目されがちだけれど、その一方でよくなっていることだって、たくさんあるはず。未来がどちらに転ぶのかはわからないけれど、僕は僕なりの幸せを感じていられたら、それでいい。寿命が終わるとき、それが何歳であっても、後悔のない生き方だったと言える人生でありたい。そのために今、たくさんの経験と感情を積み重ねているのかもしれません」
2000年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。2019年、映画『小さな恋のうた』で俳優デビュー。続いて、映画『午前0時、キスしに来てよ』『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』『東京リベンジャーズ』シリーズなど、テレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』『私の家政夫ナギサさん』『プロミス・シンデレラ』(すべてTBS系)、『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ系)などに出演。12月8日公開の映画『彼方の閃光』(TOHO シネマズ日比谷ほか、全国順次公開中)で映画初主演。
映画『ゴールデンカムイ』(2024年1月19日、全国ロードショー公開)も控えている。
初出:2023年12月9日発行『AdvancedTime』20号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Model: Gordon Maeda
Photo: YUJI TAKEUCHI(BALLPARK)
Styling: MASAYA
Hair&Make-up: MISU
Text: Yukari Minami
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