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女優、ミュージシャン、そしてテレビ番組のMCと幅広い活躍を見せる松下奈緒さん。19歳のデビュー以来、長く仕事を続けてきたからこそ見えてきたものがあるのだとか。
ドレッシーな衣装に着替え、カメラ前に立った瞬間、スタッフから感嘆の声が。表紙撮影時、黒いブラウスにピンクゴールドの“オーデマ ピゲ”の時計を身につけた松下奈緒さんは、それほどに華やかなオーラに満ちあふれていた。 「重厚感があって、かっこいい時計ですね。メンズライクな時計を、シンプルな洋服に合わせる女性って、とても素敵です」
音楽大学在学中に女優デビュー。これまでいくつもの役を演じてきたが「時計は、役づくりにおいてとても重要です」と、松下さん。 「今もドラマの撮影中なのですが、役のキャラクターや性格を表現するうえで、時計はひとつのヒントになるんです。映像上では映らないことも多いですけれど、この役は、こういう時計をするのかというところから、じゃあ性格は繊細なのか大胆なのかとか、キャラクターを肉づけして、考えていくんです。ひとつの性格をつくり上げるなかの指針として、時計は大事にしていますね」
女優としてだけでなく、ミュージシャンとしても活躍。そしてこの春からは、人気旅番組のMCにも就任。ドキュメンタリー番組の海外取材など、旅にまつわる活動も多い。旅はお好きなのでしょうか?
「はい! 以前はロケの延長で、さまざまな場所を訪れる機会が多かったですね。周囲からいろいろな刺激を受けることで感じたものを、演技や音楽としてアウトプットしているので、旅は私の人生において、とても大切です。普段の生活もそうですけれど、毎日をなんとなく過ごしていたら、いい芝居はできないでしょうし、いい曲も書けない。その刺激の最たるものが旅だと思うんです。もちろん東京にいても、刺激的なことはあると思いますが、やはり飛行機で十何時間もかけて行った地で、新しい風に吹かれる感動は、特別なものが。見たことのない景色があって、会ったことのない人に出会って、言葉が全然通じなくて、というなかで、自分がどうもがいていくかというのは、すごい経験になっています」
20代は、迷ったり悩んだりよりも、前しか向けなかったと語る松下さん。与えられたことを自分なりに解釈し、きちんと発信することを、ずっと続ける。それが表現者であると毎日を精一杯駆け抜け、自分自身を見つめられるようになったのは、30代に入ってからだそう。
「10年、20年続けてきて、やっとこういうことなのかな…という手応えが。この仕事は、今日明日にできるものではなくて、時間が経ち、キャリアを積んでいくうちに得られるものが、絶対にあると思うんです。1日24時間をどう生きるかを重ねて、長い目で見たときに何が生み出せるかが、この世界の面白いところで、難しいところ。昔は大人っぽく見られて、実年齢よりも上の役に違和感を感じたときもありましたけど、今、人の上に立つ役も増えてきたことが、自分もイヤではないですし、説得力が出てくるのかなって思います。先輩の役者さん方も、みなさんとてもチャーミングなんです! 若いときには出せないであろうかわいらしさを拝見していると、体力的な難しさはあるかもしれませんが、年齢を重ねることが怖いとは、全然思わないんです」
1986年生まれ、兵庫県出身。2004年の女優デビュー以降、数多くのドラマ、映画で主役を演じる。2010年NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」ではヒロインを演じ、同年NHK紅白歌合戦で、紅組の司会を務めた。また、ミュージシャンとしての一面ももち、オリジナルアルバムのリリース、コンサートツアーなど積極的に活動。テレビ東京「ガイアの夜明け」、朝日放送「朝だ!生です旅サラダ」ではメインMCも務める。2023年7月2日スタートの読売テレビ・日本テレビ系「CORD」に出演。
http://www.matsushita-nao.com
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初出:2023年7月1日発行『AdvancedTime』17号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Model: Nao Matsushita
Photo: Manabu Mizuta(NOSTY)
Stylist: Kozue Onuma(eleven.)
Hair & Make-up: Kan Satoh(KOHL)
Text: Kaori Yuguchi
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